HRテクノロジー総研調査レポートREPORT

2018.08.16
調査

海外クラウド型HRサービスの動向と日本における発展

グローバルにおけるクラウド型HRサービスのリーダー企業

世界的に有名な調査会社である、Gartnerの調査によると、クラウド型HRサービスのリーダー企業として名前が挙げられているのは「Workday」「SAP」「Oracle」「Ultimate Software」といった企業です。また、レポートによっては「Cornerstone OnDemand」や「KRONOS」もリーダー企業として挙げられることがあります。今回は、海外(主に北米)におけるこれらのリーダー企業の動向や最新機能について一部をご紹介すると共に、日本における発展の方向性についても検討してみます。

海外クラウド型HRサービスの業績とそこから見えること

海外クラウド型HRサービスの企業の多くは多様な分野のサービスを展開する総合IT企業であり、彼らの業績を分析してもクラウド型HRサービス市場に関する洞察を得ることは困難です。そこで、今回はHRサービスの比重が高いWorkdayとCornerstone OnDemandに限定して、業績動向を分析しました。

 

<Workdayの業績>

 

<Cornerstone OnDemandの業績>

WorkdayとCornerstone OnDemandの2017年度業績を図示したのが上記のグラフです。双方ともに大きく売上を伸ばしていることと、赤字であることが特徴と言えます。ここから、クラウド型HRサービスの市場が非常に伸びているという事※1と、各社が赤字を厭わず投資を行っていることが予想できます。おそらく各社は、クラウド型HRサービスがまだまだ伸びる市場であり、目先の利益より将来に向けた投資を優先しているのだと思われます。

 

またBtoBのクラウドサービスは、顧客が何年も継続して利用する可能性が高いため、単年度でプロモーションコストを回収しなくても良いという事情もあります。
例えば、2,000ドルかけて、年間1,000ドル、予想利用期間5年の顧客を獲得すると、単年度では赤字ですが、長い目で見ると黒字になります。

 

加えて、資金調達が容易という背景もあるでしょう。HRテックへの投資額が2014年度以降大きく伸びており※2、HRテック企業は資金を集めやすい状況です。実際、HRテック界隈での(クラウド型HRサービスでは無いですが)有名な大型買収だけでも、マイクロソフトによるLinkedin買収、リクルートによるIndeed、glassdoor買収などを容易に挙げることができます。

 

一方で日本においてもクラウド型HRサービスは大きく市場が拡大しており、そのペースは年率40%以上※3と実は海外をはるかに上回るペースで急拡大しています。

※1:MERKET RESERCH FUTUREの調査よると年成長率は9%程度と推計されています
※2:CB insightの調査より
※3:ミック経済研究所 HR Techクラウド市場の実態と展望2017年度版の2016年度~2018年度(予測)の市場規模より

各社の特徴的機能

海外のクラウド型HRサービス各社は上記のような積極的な投資で新しい機能をどんどん開発しています。その中の一部をご紹介致します。

 

Workday

 

Workdayが新しく開発した機能の一つが“Workdayベンチマーキング”という他社比較機能です。この機能を使ってユーザー企業は自社の離職率、男女比などの現状をWorkdayが持つ業界平均データなどと比較することができます。シンプルな機能ですが、反響が大きく、リリースと同時に全顧客の5%が利用を表明したとのことです。
また、Workdayは自社サービスの仕様・機能の一部をオープンにすることで、パートナー企業やユーザー企業がオプション機能を自由に開発できるようにしています。ユーザーが開発するアプリの具体的な例として、在席確認アプリ、異動申請アプリなどが挙げられています。

 

Ultimate Software

 
日本への進出が無いため、日本における知名度は低いですが、Ultimate Softwareはクラウド型HRサービスのグローバルリーダー企業の一つです。
彼らは日報データの自動解析によるコンディション予測機能、というユニークな機能を開発しています。
Ultimate Softwareのサービスは、日報に記載された文章を自動解析し、その文章のテーマや社員の感情を読み取ります。読み取った感情から、各社員のエンゲージメントスコアを算出し、各従業員や部署のコンディション状況を自動で判定してくれます。

 

<日報データの自動解析によるコンディション予測機能の画面>

日本のクラウド型HRサービスの今後

市場規模は小さいのですが、前述した通り、日本のHRテクノロジーの市場はアメリカ以上に急成長しています。そのため、日本でも投資が進み様々な機能、サービスが生まれることが予想されます。

 

しかし、上記で紹介した最新機能が日本でも普及するかどうかは予測が困難です。上記で紹介した機能はアメリカですら新しい機能であり、普及するかどうか分からない状態です。ただし、敢えて言えば、Workdayが開発した他社比較機能は、使いたい人事、経営者が多いのではないでしょうか。営業、製造などの部門は売上、コストなど比較的わかりやすい指標がありますが、人事は「自社のどこが悪いのか?」「どれくらい改善すると世間並みになれるのか?」を定量的に把握する指標が得にくい状況があります。他社比較機能はこうした悩みの解決の一助になる可能性があります。

HR分野におけるAI活用の可能性

また、昨今、テクノロジー活用というとAI※4の可能性がよく取り上げられていますが、AIが人事の意思決定をどの程度代替可能でしょうか。
結論としては、AIが人事の意思決定を代替するのはかなり難しそうです。

 

AIが活きるのは、「デジタルな形で情報が十分にあり、明確なゴール設定がある」ケースであると考えられます。しかし、人事情報はまだ十分にデジタル化されていません。

 

例えば、配置配属の意思決定において、「性格」「キャリアの希望」「就業上の留意事項」といった項目は意思決定において重要な情報のはずですが、十分にデジタル化されているとは言い難いですし、意思決定に必要な情報を全てをデジタル化することは非現実的でしょう。
加えて、組織作りは、常に未来に対する打ち手ですが、未来に関する情報は当然不十分です。
また、人事の業務は営業等と異なり明確なゴール設定が困難です。
例えば、人事異動が目指しているのが「来年の売上最大化」なのか「10年後の幹部育成」か、多くの場合不明瞭であり、総合判断というのが実情でしょう。

 

こうしたことを考えると、人事の意思決定をAIが代替するのははまだまだ遠い未来となりそうです。
ただし「限定的な情報から特定の観点での参考意見を提出する」ことは、近い将来可能になるかもしれません。例えば、過去の「性格データと配属部署データ」から「この性格の人はこの部署に置くと離職する」というパターンを明らかにし、このパターンに当たる配属をしようとするとアラートが出る、といった機能です。

※4:「AIというからにはせめて機械学習程度は使ってないと…」というような話は置いといて、ここでは「IT」程度の意味で使っています

まず必要なことは「人事情報の正しいデジタル化」

より現実的で今求められている、発展の方向性としては、まず「人事情報をデジタル化することで、人間の意思決定の精度・効率を向上させる」というものがあります。例えば、「性格」「キャリアの希望」「就業上の留意事項」など人事の意思決定で重要な情報をキチンとデジタル化することで、人事情報を「リストアップ」「分析」「共有」などの形で自由自在に活用できるようになります。
こうした取り組みによって、例えば「Aさんのキャリア希望を考慮し忘れて、〇〇部に配属してしまった・・・」といったミス(社員にとっては悲劇)を減らすことが期待できるでしょう。

 

人事情報をデジタル化する際は、「入力規則を整える」ことが意外と重要です。
例えば、営業経験者を一覧したい時に、経験職種が「営業」「セールス」「sales」「MR」とバラバラの書き方で入力されていては、リストアップが困難ですし、リスト化できても見難いです。こうした場合、入力規則を整えて、全て「営業」とデータを統一することで、「営業」のキーワード一つで、社内の営業経験者を全員リストアップすることが可能になります。

 

また、分析担当者の多くが「分析前のデータ整理」の作業に一番時間がかかるという問題に直面しています。事前に、データを一元化する、入力規則を整える、といった対応をしておくことで、迅速な分析が可能となります。
「データは宝の山です」という言説は、近年よく言われている(人事分野だけではなく)のですが、適当に作られたデータは宝とは程遠い(磨けば光るケースも多い)のです。


こうした話は、ハイテクを活用していないため、地味ではありますが、それゆえに、現実的な方向性と言えます。クラウド型HRサービスも「従業員データのデジタル化」「入力規則の整理」を支援する機能が求められるでしょう。前述したようなAI活用は、こうしたデータ整備の先にある話となるでしょう。

 

<HR分野におけるデータ活用の発展イメージ>

本Webページを運営するカオナビでは、こうした最新機能動向や人事・経営者の声を参考に、より使いやすい・役に立つ機能を実現することで、HRテクノロジー業界を盛り上げ、「世の中をちょっと前へ」進めるお手伝いをできればと思っております。

 

出典一覧

・GartnerによるMagic Quadrant for Cloud HCM Suites for Midmarket and Large Enterprises

・HfS Researchによる “HfS Blueprint Guide: Predictive Capabilities in HCM Systems”

・Forrester Researchによる “SaaS Human Resource Management Systems, Q3 2017”

・Cornerstone OnDemand  https://www.cornerstoneondemand.com/

・Kronos Incorporated.  https://www.kronos.com/

・Ultimate Software  https://www.ultimatesoftware.com/

・Workday, Inc. https://www.workday.com/

・MERKET RESERCH FUTURE https://www.marketresearchfuture.com/

・CB insight https://www.cbinsights.com/research/

・ミック経済研究所 HR Techクラウド市場の実態と展望 2017年度版

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