HRテクノロジー総研調査レポートREPORT

2018.09.26
調査

顔と名前の一致で「生産性向上」と「ミス抑制」が実現できる!?
~ 慶應義塾大学大学院経営管理研究科 岩本研究室との共同研究結果~

カオナビHRテクノロジー総研は、「『顔と名前の一致』が社員のパフォーマンスに及ぼす影響」について慶應義塾大学大学院経営管理研究科 岩本研究室と共同研究を実施しました。本稿では本共同研究の結果について記載しております。

共同研究の背景

マネジメントにおいて「社員を理解する」ことは非常に重要なことと考えられます。「社員を理解する」ことで、相手に合わせた業務を割り振ることができますし、「理解されている」と感じることは、社員のやる気にも良い影響を与えることが期待できます。

 

当社ではクラウド人材管理ツール『カオナビ』の提供を通じて、人事、マネージャー、経営者、同僚などが「社員を理解する」ことのお手伝いをしております。

 

しかしながら、依然、多くの企業においては、社員の個別性を無視した画一的なマネジメントが行われ、多くの社員が埋もれ、潰れ、社会的な損失になっているという現状があります。

 

こうした課題意識の下、「社員を理解する」ことの重要性を示すため、この度、慶應義塾大学ビジネス・スクール 岩本研究室と共同で実験・研究を実施致しました。

 

今回は、「社員を理解する」ことの第一歩として、「顔と名前の一致」という最もシンプルなポイントに絞って実験・研究を行っています。

共同研究の内容

今回は以下の要領にて実験・研究を実施致しました。

  • 実験対象:社会人および大学院生 14名
  • 実験内容
    1. 図表1の紙面を配布
    2. 試験官より声がけを実施(Aグループは名前を呼び、Bグループは名前を呼ばない)
    3. 図表1の紙面を用いて1分間のテストを5回実施(図表2のように横に並んだ数字の一桁目の足し算を繰り返す)
    4. テスト終了後にアンケートを実施

 

<図表1:実験用紙面イメージ>

 

<図表2:作業イメージ>

 

  • 結果の集計・分析:回答結果を集計し、様々な角度からt検定による分析を実施

分析結果①:名前で呼ぶことで「生産性が向上する」可能性

図表3の通り、Aグループ(名前で呼ばれたグループ)の正答数はBグループの正答数*を常に、かつ大きく上回っていました。これは、名前で呼ばれることで、参加者のやる気が高まり、回答効率が向上したと考えられます。

 

この結果を職場に応用した場合、職場のマネージャーや経営者が社員に対し名前を使って声がけすることで、やる気のアップを通じて生産性が向上する可能性を示しています。

 

ただし、本データをt検定にかけたところ、有意差は検出されませんでした。平均値に明確な差があることから、これは、7人×2グループと、参加者数が少人数であったことが大きな要因であり、参加者数を増やして同じ実験をした場合、有意差が検出される可能性は高いと考えております。
(*正当数は時間内に正しく回答できた件数の集計であり、100が最高値の点数ではありません)

 

<図表3:正答数の集計結果>

分析結果②:名前で呼ぶことで「ミスを抑制」できる可能性

図表4の通り、Aグループ(名前で呼ばれたグループ)の誤答率はBグループの正答数を常に下回っていました。これは、名前で呼ばれることで、参加者のやる気・緊張感が高まり、注意力が向上した結果、誤答が減ったということが考えられます。

 

この結果を職場に応用した場合、職場のマネージャーや経営者が社員に対して名前を使って呼びかけを行うことで、やる気・緊張感のアップを通じてミスを抑制できる可能性を示しています。

 

ただし、本データをt検定というデータ分析手法で分析したところ、有意差は検出されませんでした。これは、7人×2グループと、参加者数が少人数であったことが大きく、参加者数を増やして同じ実験をした場合、有意差が検出される可能性は高いと思っております。

 

<図表4:誤答率の集計結果>

分析結果③:名前を呼ばれたことをみんな認識している

図表5の通り、参加者は名前で呼んでもらった(もらわなかった)を全員が認識していました。名前で呼ぶという工夫をしている(いない)ことは確実に伝わっているようです。その上でどのような成果に結びつくかは、実験結果①、②などの通りです。

 

<図表5:名前を呼ばれたことの認識状況>

今後の課題

  • 統計的に有意な結果は出ていない

分析結果①、②の点に関しては、t検定により統計的な有意差を検出することができませんでした。上述した通り、参加者数を増やして同様の実験を行った場合、有意差が検出される可能性は高いと思っております。

 

  • 持続力の違いを確認できなかった

今回の実験では、継続的(5セット)に渡りテストを行うことで、参加者の疲労を蓄積し、疲労時の持続力をグループ間で比較することを予定していました。しかし、想定より受検者の体力が高く、5セットでは疲労による正答数減少、誤答増といった傾向をみることができませんでした。より実験の負荷を上げることで、名前を呼ぶことによる、持続力向上効果をみることができるかもしれません。

 

  • 不正発生抑止効果を確認できなかった

社員の名前を呼ぶことで、「不正発生を抑止できるのではないか」という仮説を持っております。感覚的な話ですが、「ちょっと」とか「〇〇社さん(派遣元の会社名)」などと呼ぶよりも「山田さん」と言われた方が、親密感や見られている感が増し、不正が減るというストーリーには説得力を感じます。

 

今回の実験はシンプルなテスト形式であり、不正の発生する要素がなかったため、この仮説については確認できませんでした。実験内容を工夫することで、こうした仮説の可否が確認できるでしょう。

 

まとめ

本実験・分析の結果「社員を名前で呼ぶ」ことで「生産性向上」「ミス抑制」を実現できる可能性を確認できました。ただし、統計的な有意差は検出できておらず、今後の追加検証が待たれるところです。

 

「社員を名前で呼ぶ」というのは、「社員を理解する」ことの第一歩であり、第一歩だけでも効果がある可能性が見えたことには、一定の意義があると認識しております。

 

「顔と名前の一致」に加えて経歴、性格、スキル、希望など、より深く社員を理解することで、個別化(Personalize)されたマネジメントが実現し、より高い効果が得られるのではないでしょうか。

 

慶應義塾大学大学院経営管理研究科 岩本研究室のコメント

【プロフィール】
東京大学工学部金属工学科卒。カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)工学・応用科学研究科材料学・材料工学専攻Ph.D。日本モトローラ株式会社、日本ルーセント・テクノロジー株式会社、ノキア・ジャパン株式会社、株式会社ドリームインキュベータを経て、2012年より慶應義塾大学大学院経営管理研究科特任教授。その他、山形大学客員教授、株式会社ドリームインキュベータ特別顧問、一般社団法人ICT CONNECT 21理事、一般社団法人日本RPA協会名誉会員、HRテクノロジー大賞審査委員長、HR-Solution Contest審査員長など様々な役職に就く。

 

今回は初めての試みということで,小さいサンプル数での小実験を実施しました。サンプリングバイアス等の影響があり,統計的に有意な結果出ませんでしたが、今後の研究ならびにサービス実装につながる一定の示唆は得られたと考えています。また,ビジネス実務の文脈の中でこのような実験を行ったということ自体,大きな意義があるでしょう。今後はよりサンプル数を増やしての実験など,追加の検証が重要になってきます。これからの仮説検証を通して,管理職の人材マネジメントをサポートする有益なノウハウ・ツールの開発が実現することを期待しています。

トップへ

トップへ

クラウド人材管理ツール カオナビ
Copyright(C) カオナビHRテクノロジー総研
All Rights Reserved.