カオナビHRテクノロジー総研調査レポートREPORT

2018.03.14
イベント

「次世代人材マネジメントフォーラム〜HRテクノロジーが実現する生産性革命〜」 イベントレポート② パネルディスカッション

 

カオナビが主催する「次世代人材マネジメントフォーラム~HRテクノロジーが実現する生産性革命~」が2018年2月13日、パークハイアット東京で開かれました。最先端のIT技術を用いて、採用・育成・評価・配置などの人事関連業務を行う「HRテクノロジー」を軸に、人事関連データの連携や人材マネジメントの在り方についての基調講演やパネルディスカッションが行われ、参加した企業の経営者や人事担当者らが理解を深めました。

 

(第2部:パネルディスカッション「HRテクノロジーによって変革する人材マネジメントの今」概要)

パネルディスカッションが行われた第2部には、PwCコンサルティング合同会社ディレクターの北崎茂氏の司会進行のもと、サイバーエージェント取締役の曽山哲人氏、リクルートジョブズ執行役員の仲川薫氏、楽天技術研究所代表の森正弥氏、カオナビ代表取締役社長の柳橋仁機が登壇。「HRテクノロジーによって変革する人材マネジメントの今」をテーマに議論が交わされました。

 

 

(スピーカー)

株式会社サイバーエージェント 取締役 曽山哲人氏

株式会社リクルートジョブズ 執行役員 仲川薫氏

楽天株式会社 楽天技術研究所 代表 森正弥氏

株式会社カオナビ 代表取締役社長 柳橋仁機

 

(モデレーター)

PwCコンサルティング 合同会社ディレクター 北崎茂氏

労働環境の変化、キャリアの多様性に対応する

北崎:「HRテクノロジー」という言葉はここ数年、急にブームとして挙がってきたいわゆるバズワード。みなさんには人事、技術、サービスプロバイダーの視点から「実際のところHRテクノロジーは使えるのか?」というテーマでお話を伺います。まずは、昨今の労働環境の変化と「働き方改革への取り組み」について、マクロ的な視点から伺いましょう。柳橋さんいかがでしょうか?

 

(PwCコンサルティング 合同会社ディレクター 北崎茂氏)

 

柳橋:まず挙げられるのは、労働人口が減っているということですね。「減っていく社員をどうするか」と悩まれているお客様が多い。また、産業構造が変わってきている点も大きいです。僕らが生まれたころの日本は製造業が中心でしたが、近年はサービス業に労働人口がシフトしています。製造業とサービス業では、根本的に人材マネジメントのやり方が違うので、非常に重要なテーマだと捉えています。

 

曽山:マクロの話で、企業の人事が見なければならないものはキャリアの多様化です。最近は若者が転職しやすく、副業もOKになり、国からも「変わっていいよ」というメッセージが出ています。企業のルールではなく、彼らのルールに対応しなければならないんです。もう一つは、「才能開花競争」が行われる点。市場価値の高い人材になれる可能性があるというプレゼンができるかどうか。企業ができることの一つは、タイムリーにコンディションをチェックすることです。例えば、当社で行っているのが、毎月全社員にアンケートを取ることです。私が人事本部長時代には年1回の調査でしたが、当時は質問項目が多く、集計に2,3ヶ月かかり、打つ手が遅い自分に反省しました。もっと小さい単位で聞いて、すぐに手を打つほうが現代に合っているのではと思います。

 

森:研究所の人事に関しては特殊で、研究者は世界共通の価値観が存在しています。アカデミックにどう貢献していくかを重視し、企業の価値観より、研究者としての価値観を優先します。そうした文化のなかでは、ジョブディスクリプションやフィードバックは明文化しなければならない。日本語の「わかるよね」の部分を処理してデータ化しなければならないんです。そこは人材マネジメントやHRテクノロジーの活用、データ連携にも生きてくる習慣だと思っています。

 

仲川: 数十年前に比べると人事の業務は格段に難易度が上がっており、やるべきことも増えています。人事の方からは課題が多くどこからやればいいのかわからないという声も多く聞きます。この難易度と量を克服するためは、HRテクノロジーを使わないと無理なのではないかと考えます。いかに活用するかということに目を向けるフェーズに来ていると思います。また、リクルートではHR Intelligenceと呼びますが、HRテクノロジーを活用するだけでなく、そこから得られるデータを活用することが重要です。たとえば、内部の人材にどう活躍してもらうかはとても重要な課題ですが、意外とどこにどんなポテンシャル・経験の人材がいるかが把握できていないことも、現状の課題です。把握ができていないと、人材発掘も最適配置も難しくなります。

 

(株式会社リクルートジョブズ 執行役員 仲川薫氏)

せっかくの人事データを閉じていては意味がない

北崎:今までの人事のやり方では通用しない状況になってきていますね。では、具体的にどう変わっていけばいいでしょうか。人事のそのものの在り方はどうあるべきだと思いますか?

 

曽山:難しいですね。ただ、数年前から重視していたのはデータです。HRサイエンスなどの前に、社員数や部署ごとの退職率など、分析するデータはあるはずです。私の経験として、ここ10年程実施しているのは、人事に関連する経営の課題を可視化してA4用紙1枚にまとめること。個人の問題を1対1として解決しようとするだけでなく、全社的に俯瞰できるようなデータを提示すれば、役員と“対話”ができるようになります。ファクトは重要な切り口です。休職率、退職率といった人事の課題においては、社員との個別の面談に時間をかけがちですが、全体を見たうえで個を見るとバランスが取れるようになります。

 

(株式会社サイバーエージェント 取締役 曽山哲人氏)

 

森:おっしゃるとおりです。個別案件はわかりやすいし、経験と勘で対処しがちですよね。ただ、社員側、採用試験に応募する側は、インターネットで評判などを集めた情報、ファクトをあらかじめ持ってくる。会社側が個で対応してしまうと弱いですよね。

 

北崎:採用市場においても自分たちのポジションを俯瞰したうえで個性を考えられている。柳橋さん、いかがでしょう?

 

柳橋:僕の経験でいうと、人事情報が人事部だけで管理されていて、現場の管理職が部下の情報を活用できていないのを目の当たりにしたことが、創業のきっかけになっています。いちいち人事部に問い合わせして、数日かけて紙で報告をもらうのはどうなのかなと。家族や社会保険などの機微な情報は人事部で管理すべきですが、資格や職歴などの情報は閉じていても意味がない。マネジメントする人たちで共有できるツールがあればと考えていました。

 

仲川:リモートワーク等働き方やキャリアの多様性が進むと現場にマネジメントの権限を委譲しなければスピード感をもって応えられない。人事の仕事の多くを現場に委譲するという流れは加速すると思いますし、そうしないと経営のスピードが担保できなくなります。そのときに人事と現場の共通言語としてのデータが必要です。データがなければ、現場で何が起こっているのかを人事が把握することが難しくなります。

人事データを連携するための技術はすでに存在する

北崎:タイムリー性が重要といったお話もありましたが、今後、人材マネジメントをより効率的に行うにあたって、どういったデータが必要になるのでしょうか。

 

森:「社員育成にどうデータを使うか」というおもしろい事例がありまして、たとえばeラーニング化した社内研修を利用する方法です。グループディスカッションや資料の読み込みなどの課題をシステム上に置き、社員がどれから手を付けるか傾向を探るんです。

 

(楽天株式会社 楽天技術研究所 代表 森正弥氏)

 

北崎:社員に合わせた、いわゆるオーダーメイド化もできるようになるのでしょうか?

 

森:そういうこともできますし、技術的にはもっと先まで来ています。たとえば、社員のIDカードにセンサーを入れ、その人がどこにいて誰と話すかという行動のデータを取ることもできます。移動量、コミュニケーション量とパフォーマンスの関係性を探り、社員満足度と突き合わせて分析できてしまうんです。データを取るテクノロジーはすでに存在していますよ。

 

曽山:すごい技術ですが、いざ導入となると社員がドキドキしてしまいますね。当社でデータ収集のために実施している社内アンケートは3問しかありません。先月の成果、フリーコメント、あとは月によって質問を変えています。例えば、バリュー、ミッションはどれくらい浸透しているのかを天気図で表してもらっていますね。テクノロジーを活用することはもちろん、AI技術が進むと、感情のマネジメントができるかどうかがより一層経営面では重要になってきます。

 

柳橋:エモーショナルな視点からいうと、「“経営陣が顔と名前を一致させる”のが人事の役割」というのが僕らの出発点です。HRテクノロジーとデータの連携において、今は第1章の段階だと思っています。ローカルPCでやっていたことが、クラウドやインターネット上でやれるようになりましたね。このあとに続く第2章は「連携」です。給与計算、勤怠管理、人材管理のデータを合わせると、どういう人材なのかが一発でわかる。つなぎ合わせて使えるようになっていきます。そして第3章は、連携した結果、データが効率的に蓄積されるので、そのデータをどう分析し、どう活用するか、ということに進むのではないでしょうか。今はまだ第1章の入り口ですね。データを1つの箱に統合するのは時代にそぐわず、コストも高くて機動性がない。逆に、大きい箱になると身動きが取れなくなってしまいます。いろんなサービスをつなぎ合わせて連携させるほうが使い勝手がいい。

 

北崎:最適化された箱同士をつなぐと、人事の外に活用範囲が広がりそうですね。

 

仲川:人事だけではなくマーケティング、生産など企業内でのデータ連携が必要。生産性向上のためのデータと人事データ、売上データと評価データをどうつなげていくか。これがなかなか難しいことなのですが、この連携が実現できれば、よりそれぞれの企業の戦略目標の達成に近づけるのではないでしょうか。とはいえ、すべてをいきなり連携させるのはとても難しいので、まずは人事データの何を何の目的で見るのか、という仮説づくりからスタートさせていくなど、できるところからのスモールスタートでPDCAを回すことが重要ではないでしょうか。

HRテクノロジーを新しい時代の手段として活用する

北崎:今後、HRテクノロジーを使ってどう人事は変わっていくと思いますか?

 

森:人事データが蓄積して技術が進み、シミュレーションが容易にできるようになったとき、必要になるのはそれを活用に踏み切る勇気だと思います。新しい事業にチャレンジしたい人を、「HRテクノロジーがあるから何とかなる!」と後押しできるような存在でありたいですね。

 

仲川:HRテクノロジー・データの活用については、企業がどのような経営理念でどんな未来を描くのかが活用の判断軸にかかわってきます。たとえば、AIでエントリーシートを見るにしても企業の活躍人材を分析するにしても、“会社に必要な人材”であることを導くのは人間です。ヒトのヒトとの議論をベースに、テクノロジーとデータをうまく活用していっていただきたいです。

 

柳橋:現在は変化の激しい時代です。今日入社して明日には辞める新入社員もたくさん出てくるでしょう。一つの制度を考えるにしても、今週企画して来週スタートさせるくらいのスピード感が求められると思います。まずやってみて、ダメならやめる。日々のサイクルを小さいものにして高回転での実施が必要だと考えています。その手段としてHRテクノロジーを活用してほしいですね。

 

(株式会社カオナビ 代表取締役社長 柳橋仁機)

 

曽山:経営における人事課題の絞り込みが重要です。採用、中間マネジメントの強化…、課題はたくさんありますが、やはり一度には解決できません。課題を経営と共有して、どれだけ絞り込めるかが人事の役割だと思っています。

 

北崎:共通していえるのは、HRテクノロジーは“主語”ではなく“手段”。変わらなければならないのは“人事”自身です。私も20年近く人事領域に携わっていますが、ここまで人事が注目されることは今までありませんでした。人事にとっても良いチャンスです。HRテクノロジーを一つの手段として活用しつつ、人事の在り方を再考すべきだと実感しました。

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