HRテクノロジー総研調査レポートREPORT

2019.01.16
インタビュー

HRデータ活用における人事担当者の役割とは?
サイバーエージェント 人材科学センター 向坂真弓氏に聞く

 

株式会社サイバーエージェントは人事領域におけるデータ活用を見据え、国内ではいち早く2015年1月に「人材科学センター」を設立。社員の適材適所実現やコンディション可視化のためのツール「GEPPO」を開発したほか、いち早くカオナビを導入するなど、様々なツールを駆使しHRデータの活用に取り組んでいます。設立から4年が経過した今、人事領域へのデータ導入を進めることで得られた成果、導入のコツ、さらに現在の取り組みなどについて、カオナビHRテクノロジー総研が同センターの向坂 真弓氏にお伺いしました。

 

毎月、入力率平均98%を維持するパルスサーベイ
運用の鍵は社内マーケティングを通じた信頼関係構築

〇向坂 真弓さん
株式会社サイバーエージェント 人材科学センター
2003年、新卒で株式会社サイバーエージェントに入社。インターネット広告事業本部で営業とマーケティング業務に従事。その後、海外にてフリーランスとしてマーケティングに携わり、2016年サイバーエージェントに戻り入社後、同社のHR Tech部署ともいえる人材科学センターで人材の適材適所を目的とした人事データの分析を行っている。

ー人材科学センターは2019年1月で5年目を迎えましたね。向坂さんは初期から関わっていらっしゃったのですよね。

 

「そうですね。私は2016年1月からですが、人材を科学するってなんだろう?と取り組み続けていて、最初は予測モデルや科学的データを採用選考に活用することもやろうとしていましたが、まずは”見える化”が大事だろうということになり、そこから色々な取り組みが生まれている状況です」

 

ーしばらくおひとりでセンターを切り盛りされていたようですが、現在は?

 

「3人になりました」

 

ー増員されたんですね。人材科学センターといえば「GEPPO」(※1)が有名ですが、増員もその強化ということなのでしょうか。

 

「いえ、現在はGEPPOを運用するチームは別になっています。そのチームにはキャリアエージェントという専門職種の社員が在籍し、GEPPOに集まったコメントを読んで返信したり、社員と面談したりと社内の適材適所を推進しています。人材科学センターは人材に関する様々なデータを収集・分析し、それぞれの事業経営に接続していくことを行っていて、GEPPOは扱うデータのひとつという位置付けなんです。とはいえ私はGEPPOチームとは引き続き関わりながら運用支援をしています」

 

ー最近は「パルスサーベイ(※2)」が注目されていますが、GEPPOはその先駆的な事例と言えますね。どのように運用されているのでしょうか。

 

「現在社内用のGEPPOでは3つの質問事項を設定しています。1問目と2問目が毎回固定の同じ質問、3問目は毎月変わります。回答結果の本人と周囲との差異、さらに経年比較での差異を見て、必要があればキャリアエージェントと面談を設定し、話を聞くようにしています」

ーその結果、異動などの対応が必要になった場合は、どのように現場と連携するのですか?

 

「運営メンバーに人事権はないのですが、必要と感じた場合は役員に提案して、決議されれば異動ということもありえます」

 

ー上司にアラートを出すのではなく、ダイレクトに役員に提案するのですね。

 

「はい、回答に対するバイアスをなるべくかけたくないので、GEPPOに書いた内容はキャリアエージェントと役員しか見ないということを約束しています。また、社員からの信頼を獲得し、入力モチベーションを維持することが大切だと考えていて。色々な努力によって毎月、入力率は98%前後をキープしています」

 

ー98%ですか!驚異的な数字ですね。なぜそこまで高い入力率を維持できているのでしょうか。

 

「GEPPOの入力画面にコメントを受け取るキャリアエージェントの担当者の顔写真を表示させて”我々が読んでいますよ“と安心感を与えているのも工夫のひとつですし、社内報にキャリアエージェントメンバーが登場して、運用の仕方などのアナウンスをしています。それによって”ここに書くとこういう使われ方をするんだね”と社内浸透していく一助になっています。また入力してもらったフリーコメントへの返信にも力を入れています。全員にという訳ではないですが、返信が必要なコメントには担当キャリアエージェントからすぐに返信するようにしています。人事担当役員の曽山も熱心に返信していて、役員から直接リアクションがあることに社員もびっくりしているみたいです」

 

ー役員みずから返信を。それはインパクトがありますね。社内マーケティングを通じて期待感を高めたり、こまめに返信をすることで社員の入力モチベーションを高めているのですね。ここでひとつ疑問なのですが、「調子が悪い人を見つける」あるいは「異動を希望する人を見つける」という狙いであれば「その人だけが入力すれば、ほかは回答しなくてもいい」という考え方もあると思います。便りがないのは元気な証拠といいますか。そこまで入力率にこだわる理由は何があるのでしょう。

 

「先ほどお話しした、経年での本人の状態の変化を知るには毎月入れてもらうことが必要ということもありますが、GEPPOを”データを回収する装置”というより、人事とコンタクトをとれる場として使っていきたいという理由もあるんです。何かあれば社員がここに素直に書ける関係にしておきたいのです」

 

(※1)従業員のコンディション変化発見ツール。

(※2)短期間に簡単な調査を繰り返し行う調査手法。

 

大切なのは、人事データに「血を通わせる」こと

ーGEPPOの他にも、様々なツールを活用されていますが、ちなみにカオナビはどのように使っていただいているのでしょうか。

「人事みんなが使っていますよ。特に、見たい条件にあわせて社員の顔写真をならべて表示する機能がすごく使われていますね。たとえば人事内の異動者検討会議は必ず候補者の顔写真をカオナビで見ながら行っていますし、3ヶ月に1回の経営合宿でも、ボードメンバーが見たい条件でソートした全社員の顔写真一覧が”いつものセット”として添えられています」

 

ー私が聞くのも変な話ですが、なぜ顔写真を見ることをそこまで重視されているのですか?

顔を見ることでいろんな情報がどんどん出てくるんです。リストの名前だけだと出てこないことも、顔写真があると『このひと昔こんな仕事してたよね』、とか『あのメンバーと仲良いよね』などと、いろんなインフォメーションが芋づる式に出てくるのです。顔写真があることで不思議と議論に深みやリアリティが出る感覚があります。その分写真のクオリティにもこだわっていて、現在の本人と印象が変わらないように写真をアップデートするようにしています」

 

<カオナビの SHUFFLE FACE 機能画面イメージ>

 

ーすごい、写真のアップデートまでケアされているのですね。ほかにはどんな人事データ活用に取り組んでいるのでしょう?いまホットなテーマはありますか。

 

「全社的にタブローというBIツールを人事で活用しています。それまでは人員数や社員の勤怠データなどは各事業部や子会社の人事担当者が、それぞれ取得し対応する現場にエクセルでカスタマイズして共有していたのですが、人の手で行うとカスタマイズの際に計算式を間違えてしまうこともありますし、そもそも加工に工数がかかっていました。そこでデータを集約して加工を自動化し、いつでも正しい数値がビジュアル化された形でひとめでわかるようになりました。その中でもいまホットなのは勤怠データです。4月の法改正で労働時間マネジメントは厳しくなりますし、働き方改革を推進していくということもありますし。このツールによって社員ひとりひとりの勤怠時間が一覧化され、チームや部門内の業務の負荷状況がすぐ見られるようになっています」

 

ー勤怠や人員数などのベーシックなデータの見える化を専門チームで行い、結果を用いたマネジメントは現場に任せる、という体制で効率化を図るケースは多いですよね。HRデータの分析について、工数削減以外にも見据えていることがありそうですがいかがですか。

 

「現場の感覚や事情を踏まえ、個別により踏み込んだデータ活用を支援することもしています。最近ですと広告代理部門の人事と連携して、組織の生産性に連動したフレキシブルな人員配置に取り組んでいます。広告代理部門はメンバーの大半が営業なので、売上や粗利といった形でひとりひとりの生産性の数字が出るのですが、そのデータと本人の勤怠データや人事面談をして回収したコンディション情報を組み合わせて分析することで、部内で適材適所に活用していく仕組みを作っています」

 

ー広告代理部門の営業だったこともある向坂さんの意見ですと説得力がありそうですね。現場感を持つというのは重要とはわかっていてもなかなか苦労されている方が多いと思うのでですが、何か工夫されていますか?

 

「はい。私は色々な部門の各事業部の人事担当者のところに通って部門の戦略を聞き、人事として意思決定に使えそうな情報を一緒に作っていく関係性を作っています。地味ですが、しっかりと対話し理解することですね」

 

ーデータ分析について、まだ心理的なハードルがある人事担当者も多いように感じます。3年間の取り組みから見えてきた運用のコツやポイントがあったら教えてください。

 

「データ分析をしましょうというと、『まずは統計の勉強をしなきゃ』などと構えてしまいますが、そんなに難しい知識がなくてもできますし、やっていることはシンプルなんです。これまで直感や経験で行っていたことを証明するためにデータを使うところから始めてみるといいと思います。あと私がセンターの初期から言っているのが『血の通った科学をしましょう』ということ。データだけで判断しない。なぜならデータは見る人の解釈によっていかようにも使い分けられてしまうから。たとえば3年以内に退職する可能性が70%と出たときに、残りの30%に期待するのか、70%で判断してしまうかは使う人の意志。だからこそ、そのデータの先にある人を見ましょうということを大事にしています。カオナビを使っているのも顔写真を添えることでデータに人の魂が宿るような感覚があるからです。これからもそこはぶらさずにやっていきたいです」

 

ー最後にカオナビにも触れてまとめていただいてありがとうございます(笑)

 

 

〇聞き手

内田 壮

カオナビHRテクノロジー総研 所長

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