カオナビHRテクノロジー総研調査レポートREPORT

2019.07.31
調査

納得感のある人事異動を実現する3つのポイント
~人事異動サーベイより~

サーベイの背景

人事異動は会社にとっても従業員にとっても一大イベントです。人事異動の内容がその後の生産性やエンゲージメントに大きな影響を与えることは、多くの人が感じていることでしょう。今回はそんな人事異動について従業員がどう思っているか、どうして欲しいかなどを調査しました。

サーベイの内容

今回は以下の要領にてインターネットを用いたサーベイを実施致しました

  • サーベイ対象:20代から60代の社会人、600名から回収 (部下がいるサンプル数は300)
  • サーベイ内容:Web上で職場についての質問項目に、選択・記述式で回答
  • 結果の集計・分析:回答結果を集計し、差異や傾向を抽出
    (レポート中にとりあげている2群の差異はt検定で有意を検出したものです)

調査結果①: 人事異動に納得している従業員はたったの22.6%しかいない

※会社の人事異動(配置配属、昇格)についてどの程度納得感がありますか。

※会社の人事異動(配置配属、昇格)についてどの程度納得感がありますか。

人事異動に納得している従業員は4人に一人もいないということが分かりました。人事異動の納得感向上が改善の余地が大きいテーマであることが分ります。
 

年代別でみると、年代が上がるほど納得感が下がるという結果でした。業務経験を積み重ねる中で、キャリアの連続性、新しいことへのチャレンジなどの拘りがでてきて、現実とのギャップが生じるのかもしれません。また、「若い世代の方が自身のキャリア構築に敏感」とのイメージがありますが、この結果を見る限り、若年層は与えられたポジションに納得する傾向があるようです。
 

一方で、部下の有無で、「納得感ある」と回答した人の割合を比較すると、部下がいる回答者は28.1%、部下のいない回答者は17.0%となっており、部下がいる人の方が納得感が高いようです。管理職になると、会社側の都合にも考えが及びやすくなり、多少の理不尽にも寛容になれるのかもしれません。

調査結果②: 人事異動に納得している従業員は職場満足度が高い

※会社の人事異動(配置配属、昇格)についてどの程度納得感がありますか。
※現在の職場への満足度はどの程度ですか。

人事異動に納得感を持っている従業員は、約80%が職場に満足していることが分かりました。反対に、異動に納得していない回答者では約18%しか職場に満足していません。人事異動の納得感を醸成することは、職場満足度につながる重要なポイントである可能性が示唆されます(「上司との人間関係」など、異動の納得感、職場満足の双方に強い影響を与える第三、第四の項目も存在しそうですが)。

調査結果③: 納得できない理由は「不公平感」「人事評価との関連が不透明」「社員の個性を理解していない」

※会社の人事異動(配置配属、昇格)について「あまり納得感がない、全く納得感がない」と答えた方にお伺いします。納得できない理由は何ですか。あてはまるものにチェックしてください。(3つまで)

※会社の人事異動(配置配属、昇格)について「あまり納得感がない、全く納得感がない」と答えた方にお伺いします。納得できない理由は何ですか。あてはまるものにチェックしてください。(3つまで)


 
人事異動に納得できない理由を尋ねたところ「不公平感がある」55.9%、「人事評価との関連が不透明」52.5%「社員の個性を理解していない」43.8%との回答が多く見られました。ポストが有限であることを考えると、ある程度の不公平感や不透明性などは仕方の無い側面もあります。しかし、「なぜこの人事異動なのか」について「説明が足りない」もしくは「そもそも説明できるような論理が無い」といった背景がありそうです。

調査結果④: 従業員が人事異動で最も考慮されたいのは「業務内容」

※異動などにおいて考慮して欲しい希望はどれですか。あてはまるものを最大3つ選んでください。(3つまで)

※異動などにおいて考慮して欲しい希望はどれですか。あてはまるものを最大3つ選んでください。(3つまで)

具体的には、従業員が異動で考慮して欲しいのはどんな事柄なのでしょうか。「業務内容」66.1%がトップで突出しており、次に「勤務地」44.7%と続いています。調査結果③と併せて考えると「自分の強み・弱みを踏まえた業務内容にして欲しい」という思いが強いようです。適材適所を目指す会社側とこの点については思いがほぼ一致していると言えます。
 
また、「勤務地」が二番目に多く、就業時間よりも重視されている点も注目したいポイントです。従来は遠方(海外も含む)への転勤を本人の希望を無視して命じることが、多くの企業で行われていましたが、社会の変化などからそうした異動への反発が大きくなっているようです。人事異動の考え方を少し変える必要性があるかもしれません。
 
働き方改革として注目度が高い「就業時間」は、三番目(36.1%)に留まりました。ただし、20代では60%と選択割合が高く、年代が上がるに伴って下がる傾向にありました。世代による価値観の違いがあるようです。

調査結果⑤:「会社が業務内容や働き方への希望を把握してくれている」と感じる従業員は約30%に留まる

※業務内容、働き方などについてあなたの希望を会社は把握していますか。

※業務内容、働き方などについてあなたの希望を会社は把握していますか。

そもそも、業務内容および働き方などの希望を、会社は把握できているのでしょうか。「業務内容・働き方への希望を把握してくれている」と考えている従業員は30%未満に留まりました。性別では、女性の方が40.7%で、男性の32.1%より把握してもらえていないと感じている割合が高くなっています。多くの企業が従業員の希望を把握できていないようです。希望を把握しなければ、希望を叶えることも困難なので、これは大きな課題と言えるでしょう。

人事異動の納得感を高める3つのポイント

本調査の結果を踏まえると以下の3つのポイントが有りそうです。

  1. 従業員の希望を把握する
    従業員の希望は千差万別です。同じ20代営業だとしても、経理に異動して喜ぶ人も悲しむ人もいます。そうした個々人の希望を推測することは困難なので、直接聞いて希望を把握することが必要となります。当たり前のことのように思えますが、調査結果⑤を見る限り多くの企業は十分にできていないようです。
  2.  

  3. 個性を活かした適材適所を追求する
    調査結果③、調査結果④を見る限り、従業員は「自分の強み・弱みを踏まえた業務内容にして欲しい」という思いが有るようです。個性を活かした適材適所と言い換えることができ、これは企業の目指す方向性とも一致します。しかし、現実には「キーマン10名の異動だけ真剣に考えて、後は適当な玉突き人事」なんて決め方になっているケースも多いのではないでしょうか。異動を検討する人員も時間も限界があるので仕方のない側面もありますが、従業員にとっても企業にとっても勿体ないことです。タレントマネジメントツールなどを活用し、多様な人材情報を簡単に活用できるようにすることで、異動検討の効率が向上し、細部に至るまでの適材適所を実現し易くなります。
  4.  

  5. 人事異動の意味を説明する
    どんなに筋の通った適材適所を実現していても、従業員にその意味が伝わらなければ、納得感は高まりません。人事や上長が、人事異動の意味合いについて説明することが求められます。意識的にそうした機会を持つことが重要です。また、その際に、タレントマネジメントツールなどに人材情報が集約されていると、当該従業員の個性・希望などを網羅的に把握した上で、面談に臨むことができるため、説明力を増すことができるでしょう。

 
 

【インターネットサーベイ調査概要】

<実施詳細>

  • 配信:2018/12/17
  • サンプル回収数:600サンプル
  • 配信・回収条件
    年齢:20歳~69歳
    性別:男女
    配信地域:全国
    対象条件:取締役クラス~ 一般社員(正社員)の方

 
<設問と回答選択肢>

:現在の職場への満足度はどの程度ですか。
選択肢:非常に満足している/満足している/どちらでもない/あまり満足していない/全く満足していない
 
:会社の人事異動(配置配属、昇格)についてどの程度納得感がありますか。

選択肢:非常に満足している/満足している/どちらでもない/あまり満足していない/全く満足していない
 
:前問で「あまり納得感がない、全く納得感がない」と答えた方にお伺いします。納得できない理由は何ですか。あてはまるものにチェックしてください。(3つまで)

選択肢:社員の個性(強み、弱み)を理解していない/社員の事情(家庭環境、志望)などを理解していない/不公平感がある/頻度が多すぎる/頻度が少なすぎる/会社の意図が伝わらない/その他
 
:業務内容、働き方などについてあなたの希望を会社は把握していますか。

選択肢:よく把握している/把握している/どちらでもない/あまり把握していない/全く把握していない
 
:異動などにおいて考慮して欲しい希望はどれですか。あてはまるものを最大3つ選んでください。(3つまで)

選択肢:業務内容/就業時間/勤務地/人間関係/キャリアパス/その他
 
<結果の集計における備考>
上記のうち5スケールで回答する設問については、「どちらでもない」を除いた4つの選択肢を肯定的と否定的な回答に2項目ずつまとめたうえで差異を比較している。
 

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