カオナビHRテクノロジー総研調査レポートREPORT

2024.07.18
調査

残業は終業後だけじゃない。~始業前の出社についての疑問~

サーベイの背景

終業後の残業に対し残業代を支払う義務があることは、誰もが当たり前に認識していることでしょう。
では、”始業前”についてはどうでしょうか。朝礼や掃除、業務を行っている方は少なくないはずですが、その時間は労働時間とみなされ、残業代は支払われているのでしょうか。
今回、カオナビHRテクノロジー総研ではこの疑問について調査することにしました。

サーベイの概要

今回は以下の要領にてインターネットを用いたサーベイを実施致しました

  • サーベイ対象:20歳以上60歳未満の自由業を除く有業者1,000名
  • サーベイ期間:2024年3月18日(月)~2024年3月25日(月)
  • サーベイ内容:Web上で年次有給休暇についての質問項目に、選択・記述式で回答
  • 結果の集計・分析:回答結果を集計し、差異や傾向を抽出(回答の構成比は小数第2位を四捨五入しているため、合計は必ずしも100%にはなりません。そのため、グラフ上に表示される構成比での計算結果は、実際の計算結果とずれが生じる場合があります)

■調査結果① 始業前の出社に「義務/ルールあり」が5%、「ルール無し」は95%

Q.あなたの職場には、始業前に出社しないといけない「ルール」や「雰囲気」はありますか。

    図1-1に始業前出社の義務やルールの有無を示しました。「義務/ルールあり」が5%、「ルール無し」は95%と、義務やルールがあることで始業前に出社している方は少ないようです。ただ、ルールは無くてもそういった雰囲気が職場にあるということは考えられます。図1-2に、雰囲気の有無についても示しました。「かなりある」「まあある」と回答した方は33%と、そういった雰囲気がある職場が一定数存在していることが分かります。周りの空気を読み、気を遣って早く出社している人もいるのかもしれません。続いて、始業前の出社について詳しくみていきます。

    ■調査結果② 30分以上前に出社している人が43.8%と、始業時間よりずっと早くから出社している

    • Q.始業時間のどのくらい前に出社することが多いですか。

      ※「始業前に出社しない」との回答者を除いて集計

    始業の「30分以上前」に出社していると回答した方が43.8%と半数近い結果となりました。次いで、「15~30分未満」が32.9%、「10~15分未満」が12%と、出社時間が遅くなるにつれ割合が小さくなっています。次に、始業前に行っていることについて聴取しました。

    ■調査結果③ 始業前は業務を行っている人が多い

    • Q. 始業前に何を行っていますか。(複数回答)

      ※「始業前に出社しない」との回答者を除いて集計

    始業前に行っていることとして「業務」が57.6%と半数以上の結果となりました。次いで「掃除」が24.1%、「朝礼」が20.7%、「その他」が3.4%です。上位3つと大差がない「特になにもしていない」は例えば「上司より早く出社したい」「電車の遅延を想定して余裕をもって出社している」等の自主的な理由が主に考えられそうです。一方で「始業の何分前には出社してください」といった指示を職場から受け、義務/ルール付けされている方もいるかもしれません。
    始業前に出社する理由は様々ですが、ここで気になるのが残業代の発生有無です。厚生労働省が提示するガイドラインでは「使用者の指揮命令下に置かれている時間であり、使用者の明示又は黙示の指示により労働者が業務に従事する時間は労働時間に当たること」との記載があります(*1)。これは、始業前の出社が職場からの指示や義務/ルール付けによるものであれば、少なくとも残業代が発生すると考えることができます。では、実際に残業代は支払われているのでしょうか。

    ■調査結果④ 残業代が「支払われていない」が70%超え

    Q.始業前の出社に残業代は支払われていますか。

    ※「始業前に出社しない」との回答者を除いて集計

    図4-1より、70%もの方に残業代が支払われていないことがわかりました。より詳細に見るため、始業前の出社の義務/ルールの有無別での結果も図4-2に示すこととしました。始業前の出社に「ルールなし」の場合、調査結果③で述べたような自主的な理由(上司より早く出社したい・電車の遅延を想定した早めの出社等)も考えられるため、残業代が支払われないケースもあるかもしれません。しかし「義務/ルールあり」の場合、残業代は支払われるはずです。それにもかかわらず、68%の方に残業代の支払いがないことが分かりました。納得しがたい結果ですが、働く側はどのように感じているのでしょうか。

    ■調査結果⑤ 残業代不払いへの不満や疑問の程度に、大きな偏りは見られず

    • Q. 始業前の出社に残業代が支払われていないことに不満や疑問を持ったことはありますか。

    始業前の出社において、残業代が不払いであることに対し、不満や疑問が「とてもある」「まあある」と回答した方は41%、「あまりない」「全くない」と回答した方は37%という結果です。その差はたったの4%しかありません。始業前の出社は残業代が支払われないものと認識している方が多いのでしょうか。もしこれが終業後の残業代についての問いであれば、「とてもある」「まあある」が圧倒的に多くなることは明白です。

    まとめ

    始業前の出社に「義務/ルールあり」と回答した方のうち、70%近くが残業代の支払いがないことが明らかになりました。終業後の残業であれば疑問を感じる結果であり、”始業前”が軽視されているように感じます。現に「終業後の残業は上司や職場から指摘があるが、始業前については特に指摘されない」ということは多いのではないでしょうか。
    労働基準法では、時間外労働と認められる場合、残業代を支払わなければ違法になりますが、これは朝でも夜でも時間帯による区別はありません。つまり、始業前であっても終業後と同様に残業代を支払わなければならないということです。企業は始業前の出社の実態を把握し適切に対応する必要がありますが、働く側もそれが正しく行われているか目を向けるべきかもしれません。

     

    【インターネットサーベイ調査概要】

    <実施詳細>

    • 配信:2024/3/18
    • サンプル回収数:1,000サンプル
    • 配信・回収条件
      年齢:20歳以上60歳未満
      性別:男女
      配信地域:全国
      対象条件:有業者(自由業を除く)

     

    <設問と回答選択肢(今回調査)>
    問1:あなたの職場には、始業前に出勤しないといけない「ルール」や「雰囲気」はありますか。
    選択肢:義務付けられている・「始業●●分前に出社」等のルールがある/ルールは無いが、そのような雰囲気がかなりある/ルールは無いが、そのような雰囲気がまあある/どちらともいえない/ルールも無いし、そのような雰囲気もあまりない/ルールも無いし、そのような雰囲気もまったくない
     
    問2:あなたは、始業前に出社することはありますか。
    選択肢:ある/ない
     
    ※問3~5は、問2で始業前に出社することが「ある」と回答した方のみ聴取
    問3:始業時間のどのくらい前に出社することが多いですか。
    選択肢:30分以上前/15~30分未満/10~15分未満/5~10分未満/5分未満
     
    問4:始業前に何を行っていますか。(複数回答)
    選択肢:朝礼/掃除/業務/その他/特になにもしていない
     
    問5:始業前の出社に残業代は支払われていますか。
    選択肢:支払われている/支払われていない/わからない
     
    ※問6は、問5で始業前の出社に残業代が「支払われていない」と回答した方のみ聴取
    問6:始業前の出社に残業代が支払われていないことに不満や疑問を持ったことはありますか。
    選択肢:とてもある/まあある/どちらともいえない/あまりない/全くない

    出 典
    *1 厚生労働省 労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン(平成29年1月20日策定)
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