カオナビHRテクノロジー総研調査レポートREPORT
育成・人材開発が最重要課題 – 課題多き中でも、人事担当者の前向きなキャリア意識 –
サーベイの背景
優秀な人材の獲得競争や人材育成、多様な働き方への対応など、人事部門に求められる役割は多岐にわたります。こうした背景から、人事部門には様々な課題への対応が求められています。そこで今回は、人事担当者が考える取り組むべき課題の重要度や、どういった施策に成果創出ができているのか。また、人事担当者のキャリア意識等もご紹介します。
サーベイの概要
今回は以下の要領にてインターネットを用いたサーベイを実施致しました
- サーベイ対象:20歳以上66歳未満の企業の人事・労務担当者1,000名
- サーベイ期間:2025年3月24日(月)~2025年3月26日(水)
- サーベイ内容:Web上で人事部の実態についての質問項目に、選択・記述式で回答
- 結果の集計・分析:回答結果を集計し、差異や傾向を抽出(回答の構成比は小数第2位を四捨五入しているため、合計は必ずしも100%にはなりません。そのため、グラフ上に表示される構成比での計算結果は、実際の計算結果とずれが生じる場合があります)
調査結果① 最重要課題は「人材育成・開発」、「離職防止や人材定着」も上位に
人事部門が取り組むべき課題の重要度を尋ねたところ、全ての項目で6割以上が「重要である」と回答しました。中でも「新人・若手社員の育成・人材開発」「中堅社員の育成・人材開発」「離職防止や人材定着」といった“人材育成・定着”に関わる項目を特に重要視していることがわかります。
また、従業員規模別での結果を図2に示しました。
各項目でのばらつきはあるものの、従業員規模が大きくなるにつれ全体として課題認識が高いことがわかりました。また、従業員規模1,000名以上においては、「理念やビジョンの浸透」が上位にきています。従業員数が多いことで理念やビジョンが現場には伝わりきれていないという課題感が、他の従業員規模の企業と比べ強いのかもしれません。
調査結果② 人事部の取り組み状況―意識的な取り組みはあるも成果創出には苦戦か
図3は人事部の取り組み状況についてまとめたものです。「意識的な取組みあり・期待する成果あり」の項目では、新卒採用が24.9%で最も高く、中途採用が24.8%と続いており、採用関連の施策で比較的成果を実感できていることがわかります。一方で、「意識的な取り組みはあるものの、期待する成果はまだ」という回答が、各施策で3~4割を占めています。特に調査結果①で重要課題の上位に挙げられた「離職防止や人材定着」では39%と最も高い割合となり、成果創出の難しさがうかがえます。人材育成や定着といった取り組みは、施策を打てばすぐに成果が出るものではないということの表れでしょうか。
また、従業員規模別での結果を図4に示しました。
調査結果①と同様に、各項目でのばらつきはあるものの、規模が大きくなるにつれ「意識的な取組みあり・期待する成果あり」は高くなる傾向であることがわかります。人事担当者が多くの課題に直面していることが分かりましたが、各人事担当者は自身のキャリアをどのように捉えているのでしょうか。
調査結果③ 6割が人事パーソンとしてのキャリアアップに前向き
調査結果④ 現在の業務を継続する意向がありつつも、人材育成領域への関心は高い
調査結果③で前向きなキャリアを示した604名に、今後最も担当してみたい業務領域を尋ねました。現在の担当領域別に以下のように3群に分け、その結果を図6に示しています。
• 採用・制度設計の担当者(n=244):採用/報酬や福利厚生/人事制度企画・設計/人事データ分析
• 労務管理の担当者(n=169):労務管理
• 人材育成・組織開発の担当者(n=191):人材育成・教育研修/評価/異動・配置やタレントマネジメント/組織開発・エンゲージメント
• 「採用・制度設計」担当者
採用への継続希望が24.2%と最も高く、続いて人材育成・教育研修(20.1%)、人事制度企画・設計(11.9%)の順となりました。採用領域の専門性を活かしつつも、採用した人材の成長支援への関心の高さがうかがえます。
• 「労務管理」担当者
労務管理の継続希望が最多の29.0%となり、人材育成・教育研修(8.3%)、採用(7.7%)が続きました。労務の専門性の継続を意向としながらも、人材育成領域も2位に位置しています。
• 「人材育成・組織開発」担当者
人材育成・教育研修が41.4%で最多となり、採用(8.9%)、異動・配置やタレントマネジメント(8.4%)が続きました。他領域の担当者と比較して、現在の担当領域の継続意向が強い傾向です。
このように、どの区分においても現在担当している領域への継続意向が最多である一方で、「人材育成・教育研修」や「採用」がすべての区分で上位に入っています。調査結果①で重要課題とされた領域への関心の高さを改めて確認できました。
まとめ
本調査により、人事担当者が高い問題意識と前向きな姿勢を持っていることが明らかになりました。特に人材育成・定着を重要課題と認識しており、自身のキャリアアップにも意欲的です。一方で、施策の成果創出に苦戦している現状も見えてきました。人材の育成や定着は時間を要するものであり、継続的な努力が必要であることの表れと感じます。今回の調査を踏まえ、より効果的な手法の模索や長期的な視点での施策推進により、人事部門のさらなる活躍に期待したいと思います。
【インターネットサーベイ調査概要】
<実施詳細>
- 配信:2025/3/24
- サンプル回収数:1,000サンプル
- 配信・回収条件
年齢:20歳以上66歳未満
性別:男女
配信地域:全国
対象条件:企業の人事・労務担当者
<設問と回答選択肢(今回調査)>
問:以下の課題は、人事部門が取り組むべき課題としてどの程度重要だと感じますか。
・経営幹部候補者の育成・人材開発
・新人・若手社員の育成・人材開発
・中堅社員の育成・人材開発
・シニアやベテラン社員の活性化
・イノベーションの創出
・生産性の向上
・一体感醸成や部門間の連携強化
・組織における信頼感や安心感の醸成
・挑戦するマインドの醸成
・理念やビジョンの浸透
・リスキリング
・従業員のエンゲージメント向上
・ミドルマネジメント層の負担軽減
・ミドルマネジメント層の育成・人材開発
・離職防止や人材定着
選択肢:まったく重要でない/あまり重要でない/ある程度重要である/非常に重要である/わからない
※本レポートでは「非常に重要である」と「ある程度重要である」を『重要である』とし、「あまり重要ではない」と「まったく重要ではない」を『重要でない』とした
問:あなたが所属する人事部の、以下の項目の取組み状況を教えてください。
・新卒採用における優秀な人材の獲得
・中途採用における優秀な人材の獲得
・従業員のキャリア形成のサポート
・経営層への教育・研修機会の提供
・ミドルマネジメント層への教育・研修機会の提供
・従業員の自律的学習のサポート
・女性活躍や性別に関わる不平等の是正
・グローバル人材の育成・人材開発
・障害を持つ人材の採用
・外国籍の人材の採用
・ジョブ型雇用あるいはジョブ型の人事制度の運用
・離職防止や人材定着
・HRテクノロジーの活用
選択肢:意識的に取組んでいることはなく、足元で必要な業務遂行も不十分である/意識的に取組んでいることはないが、足元で必要な業務遂行はできている/意識的に取組んでいることがあるが、期待する成果創出までには至っていない/意識的に取組んでいることがあり、期待する成果も出ている/自身の所属する人事部ではやっていない・わからない
※本レポートでは「意識的な取組みなし・業務遂行はできている」と「意識的な取組みなし・業務遂行も不十分」を『意識的な取組みなし』とした
問:以下の項目はあなたの状況にどの程度当てはまりますか。/今後も人事パーソンとしてキャリアアップしていきたい
選択肢:まったく当てはまらない/あまり当てはまらない/ある程度当てはまる/よく当てはまる
問:人事の領域で、今後最も担当してみたい領域を一つ選択してください。(SA)
選択肢:採用/人材育成・教育研修/評価/報酬や福利厚生/異動・配置やタレントマネジメント/組織開発やエンゲージメント/労務管理/人事制度企画・設計/人事データ分析/その他/特にない
問:人事・総務として現在主に担当している領域を1つだけ回答してください。(SA)
選択肢:採用/人材育成・教育研修/評価/報酬や福利厚生/異動・配置やタレントマネジメント/組織開発やエンゲージメント/労務管理/人事制度企画・設計/人事データ分析/
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