カオナビHRテクノロジー総研調査レポートREPORT
上司は私のことを分かってない!?
~「上司と部下の関係性」に関する調査結果1~
本調査の背景
マネジメントにおいて「メンバーを理解する」ことは非常に重要なことと考えられます。「理解する」ことで、相手に合わせた業務の割振りや言い回しの選択をすることができますし、「理解されている」と感じることは、社員のやる気にも良い影響を与えると予想されます。後者については、2000年以上前に書かれた史記において「士は己を知る者の為に死す」という言葉で表現されており、古来よりその重要性が知られています。
こうした仮説のもと、カオナビHRテクノロジー総研では、慶應義塾大学大学院経営管理研究科 岩本研究室との共同研究を実施し、「顔と名前の一致で『生産性向上』と『ミス抑制』が実現できる」可能性を確認しました。
参考URL:https://ri.kaonavi.jp/20180926/
この結果も踏まえ、今回は、アンケート調査によって「メンバーを理解する」ことの効果と現状について調査いたしました。
サーベイの内容
今回は以下の要領にてインターネットを用いたサーベイを実施致しました
- サーベイ対象:20代から60代の社会人、600名から回収
- サーベイ内容:Web上で職場についての質問項目に、選択・記述式で回答してもらう
- 結果の集計・分析:回答結果を集計し、t検定による分析を実施
(レポート中にとりあげている2群の差異はt検定で有意を検出したものです)
調査結果①:「上司から理解されている」と仕事のパフォーマンスは向上する
※部下へのアンケートから
上司からの理解(強みや弱みといった個性・事情)が仕事のパフォーマンスに良い影響があるかについては、約60%の回答者がその影響を認めています。そのなかでも特に20代では80%にのぼる回答者が影響を認めており、この世代の「自分を分かって欲しい」という強い気持ちが読み取れます。
調査結果②:「上司から理解されている」と満足度が高まる
「上司からの理解」と「現在の職場への満足度」の回答結果を組み合わせると、上司の理解が有るケースと無いケースで、職場への満足度に非常に大きな差が見られました。「上司から理解されている」と回答した従業員の68%が職場に満足しており、「理解されていない」従業員はわずかしか「職場に満足している」と回答していませんでした。「上司から理解されている」ということは、成果だけでなく従業員満足の観点からも重要であることが分ります。
調査結果③:約60%の社員が「上司からの理解が不十分」と感じている
前述した様に、仕事のパフォーマンス、従業員満足の双方に関連がある可能性が高い、「上司からの理解」ですが、実際、部下はどの程度「上司に理解してもらえている」のでしょうか?
「上司に個性(強み、弱み)や事情を理解してもらえているかどうか」について聞くと、約60%の回答者が、「上司が十分に理解していない」(「どちらでもない」を含む)と考えていることが分かりました。上述した通り、「理解する」ことの価値が広く周知されていることと比較すると、かなり課題のある結果と言えるでしょう。
年代別に見ると、60代のみにおいて60%超が「理解してもらえている」と回答しており、勤続年数が上手く作用している可能性や、期待レベルが他の年代と異なる可能性が読み取れます。
調査結果④:部下は「業務に関連すること」を上司に理解してほしい
上司から理解されたい項目を3つまで聞いたところ、「これまでの業務」46.1%、「業務への希望・不満」38.7 %、「性格」35.9%がトップ3となりました。日々の業務と関連のある事柄を理解して欲しいようです。一方で、「会社への希望・不満」も25%に留まっており、業務を越えた事業戦略、ビジョンなどに対して意見したいという気持ちはあまり強くないようです。また、プライベートや健康状態などは20%以下の留まっており、公私共に分かってもらいたい、という社員はあまり多くないようです。
年代別に見ると、20代と30代においては、「性格」が首位となります。また、年代が上がるほど「これまでの業務」を理解されたい傾向が強くなる傾向がみられました。業務経験が少ない間は、持ち前の性格しか材料がないものの、経験を積むにしたがって、蓄積してきた実績に誇りを持つようになり、実績を評価されたいと望むようになると考えられます。
本調査結果の実務における活用
- 「上司の部下理解」を促進することが企業業績に効果的
図1、図2に見る通り、「上司からの理解」はパフォーマンスや従業員満足度に関係が有りそうです。しかし、図3に見るように、「上司からの理解」が不十分という状況があり、まだまだ改善し甲斐のあるテーマであることが分ります。部下の立場の人へのWebアンケートという方法の限界はありますが、「上司の部下理解促進」は企業経営において、重要なテーマである可能性を確認できました。 - 「上司が部下を理解する」際のポイント
図4から、「上司が部下を理解する」際の示唆やポイントとして以下のものがあると考えられます- 聞くべきは「これまでの業務」「業務への希望・不満」「性格」
- 「これまでの業務」を理解する際のポイント
良くも悪くも、人間は過去の成功体験に縛られる傾向があります。そう考えると「これまでの業務」が部下を知るうえで極めて重要というのは頷ける話です。中途入社の社員であれば、まずは職務経歴書などをしっかり理解することなどが重要でしょう。一方で異動してきた新メンバーなどについては、意外と情報がそろっていなかったりします。タレントマネジメントシステムや1on1の機会を使って、しっかりと「過去の自慢話を聞く」ことなどから始めて、過去の業務経験を理解することが重要になると思われます。
「新しい職場なのだから、いつまでも過去の成功体験を引きずらないで欲しい」という思いを持つマネージャーもいると思いますが、成功体験の呪縛を回避・解消する方法を見出すためにも、過去の成功体験を聞くことには意味があります。また、上述した通り、「これまでの業務を理解する」ことで部下の成果・満足度の向上が期待できます。 - 「業務への希望・不満」を理解する際のポイント
部下の多くが「日々の業務への希望・不満」を聞いて欲しい、というのは、非常に自然なことで、違和感を持つ人は少ないでしょう。ただ、「業務への希望・不満」を上手く表現できる人と、できない人がいます。表現できない理由としては、論理性、遠慮などが考えられます。上司には、面談の場面などで、部下がなんとなく思っていることを上手く引き出す傾聴力、質問力が求められるでしょう。 - 「性格」を理解する際のポイント
同僚の「性格」というのは、分かるようで意外と分からないものです。例えば、同じようにストレスに弱い社員がいたとしても、感情を表に出しやすいかどうかで、表面上の態度は大きく異なります。
このように把握の難しい「性格」を何とか理解する一助として、「エニアグラム」や「SPI」といったパーソナリティ検査を用いることは非常に有効と言えます。
- 「これまでの業務」を理解する際のポイント
- タレントマネジメントシステム活用のヒント
「上司からの理解」が重要だとしても、マネージャーのヒアリング力・記憶力などを高めるというのは現実的には困難です。カオナビのようなタレントマネジメントシステムに社員データを登録し、いつでも閲覧できるようにすることで、マネージャー層の部下理解を補助する、などの方法が、効果的と考えられます。
その際、よく問題になるのが「タレントマネジメントシステムにどんなデータを入れたら良いのか」というテーマですが、今回の調査からは、「これまでの業務」「業務への希望・不満」「性格」などの情報の優先順位が高いと考えられます。
- 聞くべきは「これまでの業務」「業務への希望・不満」「性格」
【インターネットサーベイ調査概要】
<実施詳細>
- 配信:2018/12/17
- サンプル回収数:600サンプル
- 配信・回収条件
年齢:20歳~69歳
性別:男女
配信地域:全国
対象条件:取締役クラス~ 一般社員(正社員)の方
<設問と回答選択肢>
問:現在の職場への満足度はどの程度ですか。
選択肢:非常に満足している/満足している/どちらでもない/あまり満足していない/全く満足していない
問:上司は、あなたの個性(強み、弱み)や事情をどの程度理解していますか。
選択肢:よく理解している/理解している/どちらでもない/あまり理解していない/全く理解していない
問:上司があなたの個性(強み、弱み)や事情を理解することは、仕事のパフォーマンスに良い影響があると思いますか。
選択肢:非常に影響がある/影響がある/どちらでもない/あまり影響がない/全く影響がない
問:あなたが上司にぜひ理解して欲しい項目はどれですか。(3つまで)
選択肢:これまでの業務/資格・スキル/性格/プライベートの事情/健康状態/業務への希望・不満/会社への希望・不満/その他
<結果の集計における備考>
上記のうち5スケールで回答する設問については、「どちらでもない」を除いた4つの選択肢を肯定的と否定的な回答に2項目ずつまとめたうえで差異を比較している。
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