カオナビHRテクノロジー総研調査レポートREPORT
上司と部下の間にある二つのすれ違い
~「上司と部下の関係性」に関する調査結果2~
サーベイの背景
マネジメントにおける「メンバーを理解する」ことの重要性について、前回の記事(上司は私のことを分かってない!? ~「上司と部下の関係性」に関する調査結果1~)では部下の立場の方々へのアンケート結果をまとめました。今回は上司の立場の方々へのアンケート結果を中心に分析しました。
サーベイの内容
今回は以下の要領にてインターネットを用いたサーベイを実施致しました
- サーベイ対象:20代から60代の社会人、600名から回収 (部下がいるサンプル数は300)
- サーベイ内容:Web上で職場についての質問項目に、選択・記述式で回答
- 結果の集計・分析:回答結果を集計し、差異や傾向を抽出
調査結果①:上司の約80%は、「部下への理解がパフォーマンスを向上させる」と考えている
部下を持つ回答者の79.3%が、「部下を理解することで仕事のパフォーマンスが向上する」と考えていました。この傾向は役職が高くなるほど上昇する傾向があるようです。もしかすると「部下理解の重要性を知っていると昇進し易い」などの傾向があるのかもしれません(「世代間の意識の違いが役職ごとの違いに表れている」などの可能性もあり断定は困難です)
調査結果②:上司の約60%は部下を理解できていると思っている
部下を持つ回答者のうち、部下を理解できていると認識している割合は61.7%でした。また、調査結果①と同様に、上司による部下理解の度合いも役職が高い上司程、高くなる傾向がみられました。結果①にあったように役職が高い人ほど「部下理解の重要性を分かっているから」、「『理解している』と回答するハードルが低い」、「理解している、と勘違いをしやすい」などの様々な背景が推測されますが、今回の調査からは、どれが正しい背景なのかは分かりません。
調査結果③:部下の約60%は「上司から十分に理解されていない」と感じている
一方で、部下の立場の方へのアンケート結果を見ると、約60%の回答者が「上司からの理解が不十分」と回答していました。分析結果②と合わせて見ると、部下は、上司が思うほどには自分が理解されていると感じていないようです。「部下を分かっているつもりの上司」と「分かってもらえていないと感じる部下」このすれ違いは、企業や働く人々にとって大きな課題と思われます(すれ違い①)。
調査結果④:「『過去』を知って欲しい部下」と「『今』を知りたい上司」
※上司の立場の人へ:あなたが、部下についてぜひ理解したい項目はどれですか(3つまで)。
部下を持つ回答者が部下について理解したい項目は、選択者が多いものから「業務への希望・不満」57.3%、「性格」51.3%、「これまでの業務」34.3%の順にとなっており、部下が上司に理解してもらいたい項目とTOP3の顔ぶれは一致していますが、順番が異なっています。
具体的には、「部下が理解して欲しい」項目の1位である「これまでの業務」が上司からは軽視されているようです(すれ違い②)。調査結果③の背景にはこうしたすれ違いが大いに関係が有る可能性があります。
本調査結果の実務における活用
- 「上司の部下理解」促進は重要な経営課題
部下側、上司側どちらへのアンケート結果からも「上司による部下理解」が業務のパフォーマンスと関係があるとの意見が得られました。それにも関わらず、部下は「上司による理解」が不十分との回答が60%を占めており、改善の余地は大きく、経営として改善しがいのあるテーマと言えそうです。 - 「上司の部下理解」実現のポイント
- 「部下理解」に取り組む環境を作る(すれ違い①への対策)
図2にあるように多くの上司は「自分は部下理解ができている」と思っています。そのため、「部下理解は重要ですよ」とアナウンスするだけでは「自分は分かっているし出来ている」となって、なかなか改善に繋がりません。今回の調査結果や社員の声などを使って「部下は分かってもらえてないと思っていますよ」という事を示す、タレントマネジメントシステムに多様なデータを登録することで、部下の情報を見たくなる・見やすくするなど、上司側が自然と「部下理解」に取り組む環境を作ることが必要でしょう。 - 「これまでの業務」を聞く仕組みを作る(すれ違い②への対策)
図4にある通り、部下は「これまでの業務」を知ってもらいたいのに、上司はあまり知ろうとしていない、という状況があります。これに関しても「これまでの業務」を知ることの重要性を周知する、タレントマネジメントシステムにこれまでの業務を登録し、上司が見たくなる・見やすくするなど、上司の行動を促進するような仕組みが必要です。
- 「部下理解」に取り組む環境を作る(すれ違い①への対策)
【インターネットサーベイ調査概要】
<実施詳細>
- 配信:2018/12/17
- サンプル回収数:600サンプル (部下がいる人300名を含む)
- 配信・回収条件
年齢:20歳~69歳
性別:男女
配信地域:全国
対象条件:取締役クラス~ 一般社員(正社員)の方
<設問と回答選択肢>
部下がいる人への設問は以下:
問:あなたが部下の個性(強み、弱み)や事情を理解することは、仕事のパフォーマンスに良い影響があると思いますか。
選択肢:非常に影響がある/影響がある/どちらでもない/あまり影響がない/全く影響がない
問:あなたは、部下の個性(強み、弱み)や事情を理解できていますか。
選択肢:よく理解している/理解している/どちらでもない/あまり理解していない/全く理解していない
問:あなたが部下についてぜひ理解したい項目はどれですか。(3つまで)
選択肢:これまでの業務/資格・スキル/性格/プライベートの事情/健康状態/業務への希望・不満/会社への希望・不満/その他
社長以外の全回答者への設問は以下:
問:上司は、あなたの個性(強み、弱み)や事情をどの程度理解していますか。
選択肢:よく理解している/理解している/どちらでもない/あまり理解していない/全く理解していない
問:あなたが上司にぜひ理解して欲しい項目はどれですか。(3つまで)
選択肢:これまでの業務/資格・スキル/性格/プライベートの事情/健康状態/業務への希望・不満/会社への希望・不満/その他
<結果の集計における備考>
上記のうち5スケールで回答する設問については、「どちらでもない」を除いた4つの選択肢を肯定的と否定的な回答に2項目ずつまとめたうえで差異を比較している。
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