カオナビHRテクノロジー総研調査レポートREPORT

2020.09.17
調査

緊急事態解除後のリモートワークはどうなった?
~リモートワーク実態フォロー調査レポート1~

サーベイの背景

新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、テレワーク、在宅勤務、リモートワーク等の「出社をしない」働き方(以降、すべての働き方を含めて「リモートワーク」とします)を始めた方も多いのではないでしょうか。カオナビHRテクノロジー総研では、2020年5月にリモートワーク実態調査を実施しましたが、調査項目を一部変更し、8月にフォロー調査を実施しました。前回5月は全国的な緊急事態宣言下という状況でしたが、緊急事態が解除された今、リモートワークはどのように変化しているのでしょうか。

サーベイの概要

今回は以下の要領にてインターネットを用いたサーベイを実施致しました

  • サーベイ対象:20代~60代の自由業を除く有業者 9,816名
  • サーベイ期間:2020年8月21日(金)~2020年8月24日(月)
  • サーベイ内容:Web上でリモートワークについての質問項目に、選択・記述式で回答
  • 結果の集計・分析:回答結果を集計し、差異や傾向を抽出

比較対象となる前回調査のサーベイの概要

 

調査結果① リモートワーカーは5月と比較して、さらに少数に。実施率(全体)は23.2%

本レポート内では「毎日リモートワーク(=勤務時間の90%以上がリモートワーク)」もしくは「出社とリモートワークを併用している」に該当する人、つまり一部でもリモートワークをしている人はすべて含めて「リモートワークを実施している」とみなします。

  • Q.現在の就業場所への出社状況について教えてください。


前回5月の調査から、質問と選択肢に一部変更を加えているため、厳密には比較ができませんが、前回は「毎日リモートワーク」が17.4%、「週に2~3日出社し、その他はリモートワーク」が18.1%で、合わせてリモートワーク実施率は35.5%でした。リモートワーク実施率は、5月から8月の約3ヶ月で12.3ポイント減少をしています。
 

 

調査結果② 5月から「毎日リモートワーク」は9.9ポイント減少し、「毎日出社」が15.1ポイント増加

出勤形態の各項目は、前回5月調査から以下のように変化しています。

※前回(5月)は「週に2~3出社し、その他はリモートワーク」を「出社とリモートワークを併用」、「休業している・その他」を「完全休業・その他」とみなして作成


「毎日リモートワーク」の比率は17.4%から9.9ポイント減少し、7.5%となりました。また「毎日出社」の比率は58.5%から15.1ポイント増加し、73.6%となっています。現在リモートワーカーはさらに少数になり、新型コロナウイルス感染拡大前の「出社する働き方」に多くの人は戻ってきているようです。

 

調査結果③ リモートワーカーの中でも「リモートワーク度」に濃淡がある

今回は、リモートワーカーの「勤務時間全体の中でのリモートワークの割合」も調査しています。


今回のリモートワーク実施率は23.2%と紹介しましたが、この中にはフルリモートワーク(=勤務時間の90%以上がリモートワーク)も、部分的なリモートワークも含まれています。
リモートワークではない形態も含めた全体のうち、フルリモートワークの人が7.2%、勤務時間の半分以上がリモートワークの人が6.6%、半分未満が8.2%となっており、リモートワーカー内ではどの形態も3割弱~強を占めています。一口に「リモートワークをやっている」と言っても、その実情には濃淡がありそうです。

 

調査結果④ 地域/会社規模別の傾向は、5月と比較して大きく変化なし

今回も様々な角度から、リモートワーク実施率の傾向を前回と同様に調査しました。
まずは地域別の傾向です。今回調査(図5-a)と前回調査(図5-b)を掲載しています。

 ※勤務地域のカッコ内の数値は回答数(以降の図も同様)

リモートワーク実施率の全体平均23.2%を超えるのは首都圏(東京都、埼玉県、千葉県、神奈川県)のみで、38.8%です。前回5月調査でも全体平均を超えたのは首都圏のみで、その際のリモートワーク実施率は52.2%。他地域と比較し、突出して高い実施率となっており、今回もその傾向に変化は見受けられませんでした。
 
次に会社規模別の傾向です。今回調査(図6-a)と前回調査(図6-b)を掲載しています。


会社規模は大きいほど、リモートワーク実施率が高く、これも前回5月調査と同様の傾向です。

 

調査結果⑤ 職種では「ホワイトカラー3職種」が引き続き上位に。「公務員」の減少が顕著

次に職種別の傾向です。今回調査(図7-a)と前回調査(図7-b)を掲載しています。

 ※自営業は回答数が少ないため参考値

リモートワーク実施率上位の職種は、「営業職(35.0%)」「事務系管理職(32.9%)」「事務職・技術系事務職(32.3%)」となりました。前回5月調査時も上位の3職種ですが、前回から比較すると低下しています。特に「毎日リモートワーク」については、「営業職」と「事務系管理職」でともに17.3ポイント、「事務職・技術系事務職」で12.5ポイント減少しました。これらのホワイトカラー職種は、接客や現場業務を含む他職種と比較すればリモートワークに馴染むはずですが、それでも「毎日リモートワーク」が定着するのは、難しいようです。
また「公務員」は、前回5月調査のリモートワーク実施率は36.8%でしたが、今回は6.7%と、30.1ポイントもの大幅な減少となりました。減少幅の大きさでは「保安職(警察官、消防官、警備員など)」が次点で、前回調査から16.0ポイント減少ですが、現場中心の職種なので当然の結果と言えそうです。「保安職」の減少幅と比較しても、「公務員」の減少幅が、より一層際立ちます。

 

調査結果⑥ 業種では「IT・インターネット」が前回同様に高く、「公共」「金融」は大幅に低下

次に業種別の傾向です。今回調査(図8-a)と前回調査(図8-b)を掲載しています。


業種別でみると、リモートワーク実施率が最も高いのは「IT・インターネット」で61.0%となりました。前回5月の調査でも68.4%で他業種と比べ突出して高く、今回も同様の傾向といえます。ただし「毎日リモートワーク」の割合は今回31.4%ですが、前回は52.0%と5割を超えていたことに注目です。先進的に見えるIT・インターネット業界でも、緊急事態解除後は「出社回帰」の流れがあったようです。
また、顕著にリモートワーク実施率が下がった業種は「公共」「金融」です。「公共」については、前回5月調査で34.4%あったリモートワーク実施率が今回9.0%と、25.4ポイント減少しました。「金融」は前回5月調査で50.5%でしたが、今回は28.6%と、21.9ポイント減少しています。業種の性格上、緊急事態宣言下では出社制限をせざるを得ないものの、積極的にリモートワークを進める組織は少ない、ということでしょうか。対面での業務の必要性や未整備なIT環境に加え、独自の業界・組織文化の影響などもあるかもしれません。

 

調査結果⑦ 「IT・インターネット」業界には、フルリモートワーカーが多い

最も高いリモートワーク実施率を示す業界である「IT・インターネット」では、リモートワーカー全体に対してのフルリモートワーカーの割合は5割をこえており、業界全体の中でも3割程度がフルリモートワークをしていることになります。


次点で業界全体のフルリモートワーク率が高いのは「メーカー」で10.5%となっていますが、IT・インターネット業界と20ポイント近く差があります。「IT・インターネット」業界でも出社回帰の流れはありますが、フルリモートワークでも機能する環境の整備はしやすいのでしょう。

 

調査結果のまとめ リモートワークの実施状況は?

今回の調査レポートでは、

  • 調査結果① リモートワーカーは5月と比較して、さらに少数に。実施率(全体)は23.2%
  • 調査結果② 「毎日リモートワーク」は9.9ポイント減少し、「毎日出社」が15.1ポイント増加

から分かるように、緊急事態宣言下の5月と比較して、全体的にリモートワーク実施率は低下しました。
 
また

  • 調査結果④ 地域/会社規模別の傾向は、5月と比較して大きく変化なし
  • 調査結果⑤ 職種では「ホワイトカラー3職種」が引き続き上位に。「公務員」の減少が顕著
  • 調査結果⑥ 業種では「IT・インターネット」が前回同様高く、「公共」「金融」は大幅に低下

からは、大まかな傾向は5月から変化がないものの、一部の職種と業種で大幅なリモートワーク実施率の低下が見られることが分かります。
 
最後に

  • 調査結果③ リモートワーカーの中でも「リモートワーク度」に濃淡がある
  • からは、リモートワークが「ほとんど毎日か」「半分以上か」「半分未満か」といった濃淡があることが分かりました。さらに

  • 調査結果⑦ 「IT・インターネット」業界には、フルリモートワーカーが多い
  • から、リモートワーク実施率の高い「IT・インターネット」業界は、その中でもフルリモートワーカーの比率が高く、全体としてリモートワークは低調になりつつも、局地的には「濃い」リモートワークが採用されている様子が判明しました。
     
    前回5月の調査時のリモートワーク実施率は、緊急事態宣言下の一時的な、いわば最大瞬間風速の数値であったと捉えるべきしょう。どちらかといえば、今回8月調査のリモートワーク実施率が平常時により近く、実態を表しているはずです。とはいえ、新型コロナウイルス感染症の対策として、当座しのぎでリモートワーク体制を組んだ5月からの反動減があったのではないかとも考えられ、今後実施率はもう少し上振れするのではないかと筆者は予測しています。
    上振れの予測の根拠はもう1つ、リモートワーク実施率の高い「IT・インターネット」業界の、人材不足にあります。特にエンジニアの獲得競争は厳しい状況にありますが、各社が「リモートワーク可能」という採用条件を提示し出すと、現在はリモートワーク不可の会社もその条件を提示せざるを得なくなってくるはずです。逆に言えば、人材充足感のある業界ではリモートワークは進展しづらいだろうということがいえ、今回調査で「公共」「金融」業界のリモートワーク実施率が低下したことは、その仮説を補強する材料といえます。
     
    次回のリモートワーク実態フォロー調査レポートからは、「毎日リモートワーク」もしくは「勤務時間の半分以上がリモートワーク」という「リモートワーク中心の働き方」のリモートワーカーが、どのようなことを感じているかにフォーカスしていきます。
     
     

    【インターネットサーベイ調査概要】

    <実施詳細>

    • 配信:2020/08/21
    • サンプル回収数:9,816サンプル
    • 配信・回収条件
      年齢:20歳~69歳
      性別:男女
      配信地域:全国
      対象条件:有業者(自由業を除く)

     
    <設問と回答選択肢(今回調査)>

    :現在の就業場所への出社状況について教えてください。
    選択肢:基本的に毎日、就業場所に出社して働いている(勤務時間の90%以上が出社で、その他がリモートワーク)/勤務時間の半分以上は就業場所に出社し、それ以外は出社せずにリモートワークで働いている(勤務時間の50~89%程度が出社で、その他がリモートワーク)/勤務時間の半分以上は出社せずにリモートワークで働き、それ以外は就業場所に出社している(勤務時間の10~49%程度が出社で、その他がリモートワーク)/基本的に毎日、リモートワークで働いている(勤務時間の10%未満が出社で、その他がリモートワーク)/部分的に休業もしくは休暇を取りながら、勤務の際は就業場所に出社している/部分的に休業もしくは休暇を取りながら、それ以外はリモートワークで働いている/部分的に休業もしくは休暇を取りながら、就業場所への出社とリモートワークを併用している/完全に休業している/
    その他(自由記述)

     

    <結果の集計における備考>
    本レポート内の「出社とリモートワークを併用(している)」いう表現は、上記の選択肢のうち
    勤務時間の半分以上は就業場所に出社し、それ以外は出社せずにリモートワークで働いている(勤務時間の50~89%程度が出社で、その他がリモートワーク)/勤務時間の半分以上は出社せずにリモートワークで働き、それ以外は就業場所に出社している(勤務時間の10~49%程度が出社で、その他がリモートワーク)/部分的に休業もしくは休暇を取りながら、それ以外はリモートワークで働いている/部分的に休業もしくは休暇を取りながら、就業場所への出社とリモートワークを併用している
    が含まれる。

     

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