カオナビHRテクノロジー総研調査レポートREPORT
オンライン会議での「カメラOFF」は同僚の協力を損なう? WEB会議時のカメラ使用が対人印象への影響に関する実験
調査・実験の背景
リモートワークの実施率が2割を切り(2022年12月調査)、全体的には「オフィス回帰」が進んでいますが、ZoomやTeams等を用いたオンライン会議が日常業務に定着した職場も多いのではないでしょうか。
オンライン会議に関係してしばしば議論にあがるのはwebカメラのオン・オフ問題です。特にオンライン会議の普及当初は、自宅からオンライン会議に参加している従業員に対して、カメラオンを強要することは「リモートハラスメント」に該当するのでという声も多く聞きました。一方で、カメラオフでは、表情や相槌といった非言語的な手がかりが見えず円滑なコミュニケーションが取りにくいという声もあります。
そこで、今回は、オンライン会議時のカメラのオン・オフがコミュニケーションや印象にあたえる影響を実験的に検討しました。
サーベイの概要
今回は以下の要領にてインターネットを用いたサーベイを実施致しました
- サーベイ対象:20歳以上60歳未満の自由業を除く有業者1,000名
- サーベイ期間:2022年12月22日(木)~2022年12月26日(月)
- 結果の集計・分析:回答結果を集計し、差異や傾向を抽出(回答の構成比は小数第2位を四捨五入しているため、合計は必ずしも100%にはなりません。そのため、グラフ上に表示される構成比での計算結果は、実際の計算結果とずれが生じる場合があります)
オンライン会議におけるWebカメラオン・オフの実態
図1 オンライン会議の実施実態
実験結果に入る前に、まず、オンライン会議の実施状況を確認していきましょう。図1で示した通り、取引先とのオンライン会議の実施率は44.8%、社内会議での実施率は54.1%といずれもオンライン会議が広く活用されていることがわかりました。
図2 オンライン会議を実施する際のwebカメラの使用実態
続いて、オンライン会議を実施する際のwebカメラの使用傾向について尋ねました。その結果、「カメラをオンにすることが多い」と回答した人の割合は、取引先との会議の際には49.3%、社内会議の際には45.1%でした(図2)。取引先との会議の場合には、カメラをオンにする割合が高く、社内会議ではオン・オフの割合は半々という結果でした。また、そもそもカメラを使用することが禁止されている企業も一定数あることが示されました。
オンライン会議におけるカメラオン・オフが印象に与える影響
オンライン会議におけるカメラオン・オフが相手の印象や職場でのコミュニケーションに与える影響を調べるために、サーベイの回答者に対して、インターネット上で実験を行いました。
実験では「日常的にはコミュニケーションをとっていない他部門のメンバーが急な仕事を依頼する状況」に関する3分程度の映像を視聴してもらいました。実験参加者は、自身を急な仕事を依頼される側の立場と思って映像を視聴し、その後に、依頼者に対する印象評価と、急な仕事の依頼をどの程度受けたいと思うかを評価しました。図3に示したように、映像(音声)の内容は同一ですが、カメラがONになっている条件(グループ)と、カメラがOFFになっている条件を設定して、条件による評価の差異を比較しました。
図3 実験概要
それでは実験結果を見ていきます。
図4 実験条件による依頼者への印象の違い
図4は、条件によって、急な仕事を依頼していた人物に対する印象が異なるかを確認したものです。まず、カメラのONとOFFによるネガティブな印象の程度の違いを比較したところ、ネガティブな印象の程度には統計的に有意な違いは見られないことがわかりました(図4 左)。続いて、ポジティブな印象に着目したところ、カメラONの方がポジティブな印象を抱きやすいことが示されました(図4 右)。
以上の結果から、カメラOFFによって、他者に対してネガティブな印象を持たせることはないものの、ポジティブな印象を得られにくいということがわかりました。
図5 実験条件による依頼の受諾意向
続いて、カメラのONとOFFによって、「急な仕事を依頼」を受けたいと思う程度に差異があるかを分析しました(図5)。その結果、カメラON条件では、OFF条件と比べて、「急な仕事を依頼」を受けたいと思う程度が高いことが示されました。
図6 依頼の受諾意向のメカニズム
最後に、「カメラONにすることで、ポジティブ印象が生じやすくなることで、依頼を受けたいと思いやすくなる」という心理メカニズムが生じているかを媒介分析という統計手法を用いて検討したところ、仮説通りのメカニズムが生じていることが確認されました(図6)。
まとめ
今回の実験から、オンライン会議時にカメラOFFにすることは、それ自体がネガティブな対人印象を生まないものの、ポジティブな対人印象が損なわれるリスクがあり、結果的に、職場の同僚への協力行動を損なってしまうリスクがあるということが明らかになりました。「顔」の見えるコミュニケーションというのは、円滑なコミュニケーションを生むために、じわじわと効く漢方薬のような期待ができるのかもしれません。
【インターネットサーベイ調査概要】
<実施詳細>
- 配信:2022/12/22
- サンプル回収数:1,000サンプル
- 配信・回収条件
年齢:20歳以上60歳未満
性別:男女
配信地域:全国
対象条件:有業者(自由業を除く) - 本サイト記事の引用・転載の際は、必ず「出典:カオナビHRテクノロジー総研」と明記してください
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