カオナビHRテクノロジー総研調査レポートREPORT

2021.07.29
調査

コロナ禍がもたらした変化 ~働く人の実感はどう変わったか~

新型コロナウイルス感染症拡大により、東京都では4度目の緊急事態宣言が発令されるなど、昨年度から引き続き慌ただしい社会情勢となっています。働く人にとっても、リモートワークやジョブ型雇用、またコロナ禍における働く人の心身の健康、一部の業種や雇用形態における失業などにも注目が集まり、大きなあるいは数多くの変化があったのではないでしょうか。
今回はコロナ禍の前後で働く人に起こっている変化に注目しました。働く人の生産性実感、業務上の満足度、学習意欲、ストレスがどのように変化したのかをまずは見ていきます。

サーベイの概要

今回は以下の要領にてインターネットを用いたサーベイを実施致しました

  • サーベイ対象:20代~60代の自由業・社長職を除く有業者 8,716名(一部の調査結果は、左記からスクリーニングを経た300名が対象)
  • サーベイ期間:2021年1月26日(火)~2021年1月28日(木)
  • サーベイ内容:Web上でリモートワークについての質問項目に、選択・記述式で回答
  • 結果の集計・分析:回答結果を集計し、差異や傾向を抽出(回答の構成比は小数第2位を四捨五入しているため、合計は必ずしも100%にはなりません。そのため、グラフ上に表示される構成比での計算結果は、実際の計算結果とずれが生じる場合があります)

働く人の生産性実感の変化は?

まずは働く人の生産性実感はどのように変化したのか、全体の傾向です。2021年1月に「昨年度(2019年4月~2020年3月)と比較して、自身の業務上の生産性は今年度(2020年4月~現時点)どのように変化しましたか。」という質問をし、回答を得ています。

  • Q.昨年度(2019年4月~2020年3月)と比較して、自身の業務上の生産性は今年度(2020年4月~現時点)どのように変化しましたか
    ※回答者数8,716名


「特に変化はない」が71.4%で多数派となりましたが、生産性向上派は8.7%、生産性低下派は19.9%となり、低下派が上回ります。働く人の5人に1人は「コロナ禍の中での生産性の低下」を感じているようです。

働く人の満足度の変化は?

生産性と同様に、「業務上の満足度」についても変化を聞きました。

  • Q.昨年度(2019年4月~2020年3月)と比較して、自身の業務上の満足度は今年度(2020年4月~現時点)どのように変化しましたか
    ※回答者数8,716名


こちらも「特に変化はない」が68.7%となり、多数派です。満足度向上派は10.2%、満足度低下派は21.1%となり、生産性実感の変化と近い数値となっています。
コロナ禍において、生産性実感も業務上の満足度も7割程度の人たちは特に変化はなく、1割程度の人たちは向上、2割程度の人たちは低下をした、ということができるでしょう。

働く人の学習意欲の変化は?

ここから20代~60代の自由業・社長職を除く有業者300名を対象として、学習意欲とストレスの変化を聞いた結果をご紹介します。まずは学習意欲の変化です。

  • Q.昨年度(2019年4月~2020年3月)と比較して、仕事・業務につながる学びの意欲は今年度(2020年4月~現時点)どのように変化しましたか
    ※回答者数300名


仕事・業務につながる学習意欲についても「特に変化はない」が69.0%と7割程度となりました。学習意欲向上派は14.0%、学習意欲低下派は17.0%となっており、低下派が若干上回っていますが、生産性実感や業務満足度と比較すると、若干ポジティブな傾向と言えるでしょう。

働く人のストレスの変化は?

業務上のストレスについてはどのように変化したでしょうか。

  • Q.昨年度(2019年4月~2020年3月)と比較して、業務上のストレスは今年度(2020年4月~現時点)どのように変化しましたか
    ※回答者数300名


「特に変化はない」が49.3%と5割弱となっています。またストレス上昇派は42.7%となっており、明らかにストレスについてはネガティブな変化が大きかったようです。この調査結果のみでは判断ができないところではありますが、コロナ禍の影響があったと考えることが自然ではないでしょうか。

コロナ禍は働く人にとって「負」ばかりか?

ここまではコロナ禍前後における働く人の業務上の生産性実感、満足度、学習意欲、ストレスの変化を見てきました。ストレスについては顕著に、生産性実感や満足度についてはどちらかと言えば、ネガティブな変化が目についたかと思います。
新型コロナウイルス感染症拡大は、働く人に「負」の影響だけを強く与えたのでしょうか。コロナ禍において起こった変化としてもう一つ外せないものに「リモートワーク」があるでしょう。弊総研でも、昨年度に複数回に渡り「リモートワーク実態調査」を実施しています。

※2020年5月は選択肢が異なったため、「週に2~3出社し、その他はリモートワーク」を「出社とリモートワークを併用」、「休業している」を「完全休業」とみなして作成

 
全国の出勤形態の比率の推移を表したのが図5です。全国的に初めて緊急事態宣言が出た5月には、「毎日リモートワーク」と「出社とリモートワークを併用」を合わせて35.5%の人がリモートワークを経験したことになります。緊急事態宣言が解除されるとリモートワーク実施率は低下傾向を示すのですが、それでも2020年12月で20.4%の人が、一部の実施を含めリモートワークをしています。

リモートワークで生産性実感や満足度に差が出るか?

コロナ禍以前と比べれば、恐らく各段に実施率が高まったリモートワークですが、リモートワークの有無で生産性実感や満足度に差は出たのでしょうか。図5からは、2020年5月や2021年1月といった緊急事態宣言発令時にはリモートワーク実施率が上がっていることがお分かりいただけるかと思います。そのような緊急事態宣言下の非常に一時的なリモートワークではなく、コロナ禍においてある程度恒常的にリモートワークをしていたと思われる人と、それ以外の人との違いを見るべく、2020年12月時点の出勤形態のデータを使い、生産性実感や業務上の満足度を見てみます。また休業者については、休業の影響が大きいと判断し、部分休業者も含めて図6と図7からは除きました。さらに、出勤形態による差を見たいため、出勤形態で「その他」を回答した人も除いています。


Q.昨年度(2019年4月~2020年3月)と比較して、自身の業務上の生産性は今年度(2020年4月~現時点)どのように変化しましたか
※回答者数7,717(カッコ内の数値は回答者数の内訳)


生産性実感の向上に注目すると「毎日出社」で6.1%、「リモートワーク50%未満」で16.1%となっており、リモートワークの実施有無によって生産性実感が向上した割合に差が出ていることが分かります。また「毎日リモートワーク」時に向上派は最多の23.6%となり、リモートワーク実施者の中でもリモートワークの頻度が高い方が、向上派が多くなることが分かります。そうであれば「リモートワークは生産性実感にプラスに働く」と言いたくなるのですが、それほど単純ではないようです。生産性低下派に注目すると、「リモートワーク50%以上」で29.4%、「リモートワーク50%未満」で31.0%となり、「毎日リモートワーク」の18.6%と比べると高い数値が出ています。出勤のすべてではなく「一部がリモートワーク」の人については、約3割の人は生産性が低下したと感じているようです。
「毎日出社」の回答者は、恐らく大部分の人がコロナ禍以前も「毎日出社」していたはずなので、「変化なし」の割合が78.1%と多いことは自然な結果と言えるでしょう。「毎日リモートワーク」では、「向上派」は23.6%となり、かつ「変化なし」が57.9%です。社会環境や就労環境の大きな変化の中で、昨年度と比較して変化がないということは、基本的にはポジティブに受け取ってよいと思われます。「リモートワーク50%以上」および「リモートワーク50%未満」の「出勤の一部がリモートワーク」の人たちは、生産性実感の変化が大きく、3割程度は低下したという回答で向上派を上回っており、ネガティブな結果になったと言えるのではないでしょうか。
 
同様に、出勤形態別の業務上の満足度の変化もグラフにしています。

Q.昨年度(2019年4月~2020年3月)と比較して、自身の業務上の満足度は今年度(2020年4月~現時点)どのように変化しましたか
※回答者数7,717(カッコ内の数値は回答者数の内訳)


大まかな傾向としては生産性実感の変化と同様、満足度向上派はリモートワークの頻度が高いほど多くなっており、低下派は「一部リモートワーク」の人たちで高くなっています。また、生産性実感も業務上の満足度も「毎日出社」の場合に向上派の割合が最も低い6%台となっており、低下派も一定数見受けられます。新型コロナウイルス感染症拡大時において、リモートワークができないことに不満を感じた層もいたのかもしれません。概していうと、リモートワークは頻度が高い場合に、生産性実感や業務満足度において最大の恩恵を受けられるようです。

リモートワークの制度を「自由に利用できるか」もカギ?

リモートワークの制度を利用している人の中でも、他のメンバーとの調整不要で自己裁量で利用できるのか、メンバーとの調整や上司の許可などが必要なのかによって、生産性実感や業務上の満足度の変化は差が出るものでしょうか。リモートワークの頻度を「毎日リモートワーク」と「部分リモートワーク」に分け、制度利用に対しての自由度を「自己裁量(=他のメンバーとの調整も全くなく、自身の裁量で利用している)」と「要調整(=上長等の管理者あるいは所属組織内での調整を実施、もしくは許可を取った上で、利用している)」に分け、頻度と自由度を掛け合わせた4カテゴリごとの生産性実感や業務上の満足度の変化を見てみます。

Q.昨年度(2019年4月~2020年3月)と比較して、自身の業務上の生産性は今年度(2020年4月~現時点)どのように変化しましたか
※回答者数1,530(カッコ内の数値は回答者数の内訳)


生産性実感の変化について、まず低下派に注目すると、部分リモートワークよりも毎日リモートワークの方が、また制度利用にあたり要調整よりは自己裁量の方が、低下派の割合が少なくなることが分かります。低下派の割合が最も少ない「毎日リモートワーク×自己裁量(15.3%)」と最も多い「部分リモートワーク×要調整(32.1%)」とでは、16.8ポイントの開きがあり、リモートワークと一口に言っても頻度や利用形態により生産性実感には差が出ることが分かります。一方で向上派に注目すると「毎日リモートワーク×要調整」の場合に、26.1%と最多となります。また、部分リモートワークの場合に、自己裁量と要調整では向上派の数値がそれほど変動しないことも分かります。
 
これらの数値の背景には何があるのか。仮説かつ例示に留まりますが、部分的なリモートワークとなると、

  • 出社時とリモートワーク時の業務の進め方が異なり、切り替えが必要となる
  • 複数人で協働する場合、誰が出社で誰がリモートワークかを把握した上で、業務を進める必要がある
  • 出社者とリモートワーカーが混在することにより、配慮すべきポイントが各々で異なるため、手間がかかってしまう(例えば1人だけリモートワークの会議の場を想像すると、出社者のみであればその場で話すだけで済むようなことをオンライン会議の準備が必要になる/資料を紙で準備するとともに画面共有もしなくてはならない/ファシリテーションがしづらい等、開催者の細かな負荷が増加することが分かる)

上記のようなことが、生産性を妨げているのかもしれません。一見細かい負荷に見えますが、毎日リモートワークあるいは毎日出社であれば、このような負荷は当然一切ない訳で、負荷でしかないことは間違いありません。
リモートワークを利用する上での調整・許可については、生産性実感において多くの場合マイナスに働きますが、「毎日リモートワーク×要調整」の場合に向上派が26.1%と最多となっています。基本的には毎日リモートワークなので煩雑でない調整であり、例えばもともとの関係性やチームワークがよい場合などには、コミュニケーションの一機会くらいに捉えられ、ポジティブな影響もあるのかもしれません。


Q.昨年度(2019年4月~2020年3月)と比較して、自身の業務上の満足度は今年度(2020年4月~現時点)どのように変化しましたか
※回答者数1,530(カッコ内の数値は回答者数の内訳)


業務上の満足度については分かりやすく、毎日リモートワークの方が部分リモートワークよりも、また要調整よりも自己裁量の方が、ポジティブに変化すると言えそうです。部分リモートワークや調整・許可の煩雑さということも影響していると思われますが、自己裁量で毎日リモートワークができるということ自体が、その人の業務遂行における自律性を確保することにつながる、あるいは組織から自身が信頼されていると感じられるなど、満足度向上に資しているのかもしれません。

「負」が多いコロナ禍でも希望があった

今回の調査では、コロナ禍において働く人の生産性実感、業務上の満足度、学習意欲、ストレスに変化が、概して見るとネガティブな変化がありそうだということが分かりました。しかしながら一部で浸透したリモートワークは、実施のされ方によっては生産性実感や業務上の満足度の変化にポジティブに影響を与えています。一部例外はあるものの、概していうと「リモートワークと出社を併用」するよりは「毎日リモートワーク」の方が、また「上長等の管理者あるいは所属組織内での調整を実施、もしくは許可を取った上で、利用している」よりは「他のメンバーとの調整も全くなく、自身の裁量で利用している」方が、恩恵を受けられる可能性が上がるようです。
コロナ禍は制限も忍耐も多く強いられましたが、これまでの「働く」の常識や思い込みを、半ば強制的に見直す機会でもあったのではないかと考えます。今後、徐々に日常が戻る中で、どのように「働く」が変化するのか、楽しみな気持ちもあります。
 
 

【インターネットサーベイ調査概要】

<実施詳細>

  • 配信:2021/01/26
  • サンプル回収数:8,716サンプル(一部の調査結果は、左記からスクリーニングを経た300サンプル)
  • 配信・回収条件
    年齢:20歳~69歳
    性別:男女
    配信地域:全国
    対象条件:有業者(自由業・社長職を除く)

 
<設問と回答選択肢>
:昨年度(2019年4月~2020年3月)と比較して、自身の業務上の生産性は今年度(2020年4月~現時点)どのように変化しましたか。
選択肢:自身の業務上の生産性は上がった/自身の業務上の生産性はやや上がった/特に変化はない/自身の業務上の生産性はやや下がった/自身の業務上の生産性は下がった
 
:昨年度(2019年4月~2020年3月)と比較して、自身の業務上の満足度は今年度(2020年4月~現時点)どのように変化しましたか。
選択肢:自身の業務上の満足度は上がった/自身の業務上の満足度はやや上がった/特に変化はない/自身の業務上の満足度はやや下がった/自身の業務上の満足度は下がった
 
:昨年度(2019年4月~2020年3月)と比較して、仕事・業務につながる学びの意欲は今年度(2020年4月~現時点)どのように変化しましたか。
選択肢:仕事・業務につながる学びの意欲は高くなった/仕事・業務につながる学びの意欲はやや高くなった/特に変化はない/仕事・業務につながる学びの意欲はやや低くなった/仕事・業務につながる学びの意欲は低くなった
 
:昨年度(2019年4月~2020年3月)と比較して、業務上のストレスは今年度(2020年4月~現時点)どのように変化しましたか。
選択肢:ストレスは上がった/ストレスはやや上がった/特に変化はない/ストレスはやや下がった/ストレスは下がった
 
:先月2020年12月の就業場所への出社状況について教えてください。
選択肢:基本的に毎日、就業場所に出社して働いていた(勤務時間の90%以上が出社で、その他がリモートワーク)/勤務時間の半分以上は就業場所に出社し、それ以外は出社せずにリモートワークで働いていた(勤務時間の50~89%程度が出社で、その他がリモートワーク)/勤務時間の半分以上は出社せずにリモートワークで働き、それ以外は就業場所に出社していた(勤務時間の10~49%程度が出社で、その他がリモートワーク)/基本的に毎日、リモートワークで働いていた(勤務時間の10%未満が出社で、その他がリモートワーク)/部分的に休業もしくは休暇を取りながら、勤務の際は就業場所に出社していた/部分的に休業もしくは休暇を取りながら、それ以外はリモートワークで働いていた/部分的に休業もしくは休暇を取りながら、就業場所への出社とリモートワークを併用していた/完全に休業していた/その他(自由記述)
 
:あなたがお勤めの会社の、在宅勤務、テレワーク、リモートワーク等の「出社しない働き方」に関する制度の有無とご自身の利用状況を教えてください。
選択肢:リモートワークの制度はあり、他のメンバーとの調整も全くなく、自身の裁量で利用している/リモートワークの制度はあり、上長等の管理者あるいは所属組織内での調整を実施、もしくは許可を取った上で、利用している/リモートワークの制度はあるが、上長等の管理者あるいは所属組織の方針で利用不可のため、利用していない/リモートワークの制度はあるが、自身が望まないため利用していない/リモートワークの制度はない

 

<結果の集計における備考>
上記のうち5スケールで回答する設問については、「特に変化はない」を除いた4つの選択肢を肯定的と否定的な回答に2項目ずつまとめたうえで図表化、もしくは差異を比較している。

 

【関連記事】

<引用・転載ついて>
  • 本サイト記事の引用・転載の際は、必ず「出典:カオナビHRテクノロジー総研」と明記してください
  • Webページなど電子的な媒体への引用・転載の場合、該当記事のURLも加えて掲載ください。
  • 報道関係者様による引用・転載の場合、掲載動向の把握のため、こちらまでご連絡いただけますようお願い致します。

最近の投稿

カテゴリ別アーカイブ

年別アーカイブ

<引用・転載ついて>
  • 本サイト記事の引用・転載の際は、必ず「出典:カオナビHRテクノロジー総研」と明記してください
  • Webページなど電子的な媒体への引用・転載の場合、該当記事のURLも加えて掲載ください。
  • 報道関係者様による引用・転載の場合、掲載動向の把握のため、こちらまでご連絡いただけますようお願い致します。

トップへ

トップへ

クラウド人材管理ツール カオナビ
Copyright © カオナビHRテクノロジー総研
All Rights Reserved.