カオナビHRテクノロジー総研調査レポートREPORT

2023.01.06
調査

“自分”だけ週休3日は怖い? 柔軟な働き方に関する調査

サーベイの背景

2022年6月に内閣府が発表した「経済財政運営と改革の基本方針2022」(いわゆる「骨太の方針」)では、選択的週休3日制、テレワーク、副業・兼業、裁量労働制の見直しなどの「多様な働き方」の推進が掲げられました。こうした多様な働き方を推進する動きに対して、従業員はどのように捉えているのでしょうか。

今回、カオナビHRテクノロジー総研では、こうした多様な働き方の推進を検討するためのヒントを得るために調査を実施いたしました。

サーベイの概要

今回は以下の要領にてインターネットを用いたサーベイを実施致しました。

  • サーベイ対象:20歳以上60歳未満の正規雇用者1,364名(有業者から、自由業者およびアルバイト・パートタイム、派遣社員/社長相当者を除いている)
  • サーベイ期間:2022年2月8日(火)~2022年2月10日(木)
  • サーベイ内容:Web上で多様な働き方についての質問項目に、選択・記述式で回答
  • 結果の集計・分析:回答結果を集計し、差異や傾向を抽出(回答の構成比は小数第2位を四捨五入しているため、合計は必ずしも100%にはなりません。そのため、グラフ上に表示される構成比での計算結果は、実際の計算結果とずれが生じる場合があります)

 

調査結果① 政府が「選択的週休3日」を推進していることに関する認知率は53%。認知層の70%が「特に期待していない」

まず、多様な働き方を支える取り組みの一つとして週休3日に着目します。政府が「選択的週休3日」を推進していることに対する認知を尋ねてみると、52.2%の就労者が認知していることがわかりました。続いて、認知している就労者の「選択的週休3日」の広がりへの期待をみてみると、74.2%が「特に期待していない」という反応でした。他の多様な働き方に関する施策と比べても、「勤務日を減らす」ということには具体的なイメージが持てていないようです。



 

調査結果② すでに「週休3日」を選択できる企業は29.8%。「わからない」が26.5%

続いて、現在の勤務先で週休3日(週4日勤務)が可能かを尋ねました。その結果、回答者の29.8%の企業で週休3日という働き方を選択できることがわかりました。興味深い結果として、回答者の26.5%は「わからない」と回答しており、少なくない割合で、自社の柔軟な働き方に関する制度が十分に従業員に認識されていない可能性が示されました。



調査結果③ 「週休3日制度」の利用意向は、給与額の減少が無い場合で74.7%、給与2割減の場合で34.5%。利用を決意するには、周囲のメンバーの利用状況が鍵。

続いて、給与額の減少幅と選択的週休3日制度の活用に関する意向の関係を調べました。その結果、週5日勤務の場合と給与額が変わらない場合では74.7%、給与額が2割減の場合では34.5%の活用意向が示されました。しかし、たとえ週5日勤務の場合と給与額が変わらない場合でも、38.6%の回答者は「周りが活用すれば、活用する」と回答しており、「自分だけ」が制度を活用することに対する抵抗が伺えました。



調査結果④ 約45%が柔軟な働き方を支援する制度の活用に伴うネガティブな評価に不安

ここからは週休3日制度にかかわらず「柔軟な働き方」に関する制度の活用を阻害する要因について確認していきます。

会社で社員が勤務日や時間を柔軟に選べる制度が導入される状況を想定してもらい、その状況での制度利用のネガティブな影響の見立てについて尋ねました。その結果、「昇進・昇格」「仕事内容」「周りの印象」のいずれにおいても、40%を超える回答者がネガティブな影響が出ると予期していました。



Q.あなたの会社で社員が勤務日や時間を柔軟に選べる制度が導入されるとします。その場合、以下の項目について、どうなると思いますか。あなたの予想をお答えください。

調査結果⑤ 部下の柔軟な働き方の許容意図は、「育児・介護」で65.6%、「自己研鑽」で62.1%。「兼業・副業」は45.3%。

続いて、管理職に対して、自身の権限で自分の部下の勤務日数や時間を自由に設定できる状況をイメージしてもらった上で、柔軟な働き方を許容するかを尋ねました。その結果、部下の目的が「育児・介護」の場合は65.6%、「自己研鑽」の場合は62.1%、「社会活動」の場合は53.5%、「兼業・副業」の場合は45.3%の許容意向でした。最も許容意向の高い「育児・介護」でも34.4%が消極的な反応を示していることから、柔軟な制度を用意しても、現場の管理職の考え方次第ではストップがかかる可能性が示唆されました。



調査結果⑥ 部下のパフォーマンスが高いほどに、柔軟な働き方への許容意図が高い

最後に、部下の仕事のパフォーマンスの高さと柔軟な働き方の許容意向の関係を確認しました。その結果、部下のパフォーマンスが高いほどに許容されやすい傾向が示されました。



まとめ

 

  • 調査結果① 政府による「選択的週休3日」を推進に関する認知率は53%。認知層の70%が「特に期待していない」。
  • 調査結果② すでに「週休3日」を選択できる企業は29.8%。「わからない」が26.5%。
  • 調査結果③ 「週休3日制度」の利用意向は、給与額の減少が無い場合で74.7%、給与2割減の場合で34.5%。利用を決意するには、周囲のメンバーの利用状況が鍵。
  • 調査結果④ 約45%が柔軟な働き方を支援する制度の活用に伴うネガティブな評価に不安
  • 調査結果⑤ 部下の柔軟な働き方の許容意図は、「育児・介護」で65.6%、「自己研鑽」で62.1%。「兼業・副業」は45.3%。
  • 調査結果⑥ 部下のパフォーマンスが高いほどに、柔軟な働き方への許容意図が高い

 
これらの結果を踏まえて、多様な働き方の整備・推進をどのように考えていけばいいでしょうか。
まず、柔軟な働き方の支援に関する人事制度に関する情報は、十分に従業員に届いていない可能性を考慮することが必要そうです。そうした選択肢を「知らなかった」ことによって不本意な離職や、自社では提供できない従業員のキャリア開発機会が損なわれているかもしれません。とはいえ、「必要のない時」にこうした情報は頭に入ってきにくいものです。柔軟な働き方を推進するためには、研修や説明会の開催、わかりやすい社内ポータルの整備、社内報での事例の発信、管理職へのインプット等の複数の手段に継続的に取り組んでいくことが重要でしょう。
また、給与が週5日勤務の場合と比べて2割減となる場合でも週休3日の働き方を希望する従業員が34.5%いるという点にも注目する必要がありそうです。こうした柔軟な働き方を選択肢として用意し、社内外にアピールすることは、採用や定着の観点からも有効だと考えられます。
最後に、柔軟な働き方に関する制度の利用を阻害する「規範」にも注意が必要です。多くの従業員にとって、「自分だけ」恩恵を受けるのは心理的なハードルが高いようです。もし人事として利用促進したい施策がある場合は、こうした規範の影響を考慮した上で情報発信や管理職への理解促進のための施策を行う必要があるでしょう。もちろん、すぐに寛容な規範を作るのは難しいですが、まずは昇進昇格などで不利益が生じないことや、活用する権利がある点を強調するだけでも、制度を必要とする従業員が勇気づけられるかもしれません。

 
 

【インターネットサーベイ調査概要】

<実施詳細>

  • 配信:2022/2/8
  • サンプル回収数:1,364サンプル
  • 配信・回収条件
    年齢:20歳以上60歳未満
    性別:男女
    配信地域:全国
    対象条件:正規雇用者(有業者から、自由業者およびアルバイト・パートタイム、派遣社員/社長相当者を除いている)

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