カオナビHRテクノロジー総研調査レポートREPORT

2022.03.25
調査

「週休3日」をどう捉えるべきか? 海外の成功事例・失敗事例から考える

多様な働き方の実現のため「週休3日」に注目が集まっています。2021年6月に閣議決定された「経済財政運営と改革の基本方針2021」(いわゆる「骨太の方針」)でも「選択的週休3日制の導入促進」が掲げられ、対応方針を検討している企業も多いのではないでしょうか。

労働時間の短縮は、国外でも真剣に議論がなされています。例えば、アメリカでも昨年から所定労働時間を40時間から32時間(週4日勤務相当)に減らし、32時間を超えた労働に対しては追加の残業代を支払うようにする法案が審議されており、下院議員の約4分の1が支持を示しているそうです。

2020年の秋に実施された日本の調査では、就労者の54.5%が「週休3日制を導入して欲しい」と回答しているのに対して、87%の企業が「導入の予定はない」「わからない」と回答しており、企業側の消極性が伺えます(*1)。ごく限られた日本企業で、導入がなされていますが、まだその効果については明らかになっていない部分が多いです。

そこで、このコラムでは、週休3日を導入した海外の事例をご紹介します。

アイスランドでの大規模実験

まずは、アイスランドで2015年から2019年にかけて行われた大規模実験を紹介します。少し馴染みのない国かもしれませんが、アイスランドは、長時間労働と生産性の低さが問題視されていました。実験をスタートした2015年の労働生産性は、OECD加盟国34ヵ国中20位。同年、日本は21位ですから、ある意味では日本と近い労働課題がある国とも言えます。

この大規模実験には、政府主導のもとで約2500名の公務員が参加。給与は維持したままで週の労働時間を40時間から35〜36時間に削減しています。行政サービスセンターの職員や児童保護局、警察署、病院など100以上の幅広い職場が対象で、就労者の幸福感・健康状態・ストレス値などを幅広く測定されました。仕事の生産性は、それぞれの職場特性にあった指標(窓口の待ち時間・対応件数、クレームの発生件数、利用者の主観的な満足度など)が測定されました。

実証実験を計画したイギリスのシンクタンクAutonomy社の分析では、ほとんどの職場では幸福感・健康状態が改善し、生産性も維持(一部では向上)していたそうです。大規模な実証実験結果であり、各国の政策にも大きな影響を与えていますが、このレポートに対して、実際に労働時間を削減できた程度は、職場によりばらつきが大きいのでは?といった批判もなされています。

日本マイクロソフト社 Work-Life Choice Challenge Summer 2019

 
次に紹介するのは、日本マイクロソフト社の事例です。2019年に「Work-Life Choice Challenge Summer 2019」と名付けた施策の一環として、全社員を対象に、給与を減額することなく、同年8月の金曜日(計5日)を特別休暇とし、オフィスも閉鎖。その期間、業績目標や責任範囲は変わりません。

結果として、生産性(1ヶ月間の売上を社員数で割って算出)が39.9%向上。加えて、期間中の電力使用量が23%減少、印刷した紙のページ数が59%削減されました。従業員の反応も良好で、92%は週4日勤務に好意的な反応を示しました。同社は翌年の8月にも同様の取り組みを継続しています。

これらの目覚ましい成果は、大きく注目を集め、世界を代表する週4日勤務・週休3休日の好事例として扱われています。しかし、注意したいのは、単に「週休3日」にしたことでこのような結果が得られた訳ではない点です。

同社は、この施策に合わせて、非効率な業務の削減と生産性向上のために打ち手を打っています。例えば、これまで同社の会議は1時間が標準で、参加人数が多かったため、「会議のお作法」として、会議時間は30分、参加者は多くても5人まで、といった基準を設定し周知。あわせて、実態や効果を可視化し、社員に示し続けていたそうです。

今年の1月に、アメリカのデュービル大学が給与を変えずに恒常的に週休3日勤務を導入すると発表しましたが、その発表の中でも、生産性向上に関する研修の受講と、各部門でのKPIの設定・測定が義務づけられていました。業績を落とさずに週休3日を採用するには、トレーニングと根本的な業務改革が必須であることが伺えます。

「失敗」事例も・・・

次に紹介するのは、うまくいかなかった事例です。2019年1月、世界第2位の医学研究支援団体である公益信託団体The Wellcome Trust(イギリス)は、800人の職員を対象に、給与を下げることなく週4日勤務 のトライアルを検討することを発表。しかし、3ヶ月後には、実施を取りやめることを発表しました。

取りやめの判断に至った理由は、公正性の担保にあったそうです。具体的に運用を検討した結果、多くの職員には生産性に影響することなく業務量を減らす見通しがたったが、一部の職員ではそれができず、このままでは組織内に不公平感を生んでしまう と判断しました。「週休3日」の議論では、このように組織や社会レベルで、恩恵を享受しやすい層と、享受しにくい層が生まれてしまうリスクが指摘されています。

他にも、アメリカのプログラミング教育企業のTreehouseは2013年から週休3日を導入していましたが、市場競争に遅れを取り、経営状況が悪化。3年後には、従業員の解雇を行った上で、結果的に週休2日のスタイルに戻しました。週休3日は採用上有効な戦略となりうるかもしれませんが、変化がはやく競争が激しい業界では、経営上の大きなリスクとなる可能性もあります。

自社では「週休3日」をどう捉えるべきか?

企業業績を維持した上で、従業員の給与を減らさずに週休3日の実現を目指すなら、組織や職務ごとに、削減・効率化できる業務の洗い出しと、ソリューション導入やトレーニングといった攻めの介入が必須です。加えて、労働時間を削減しにくい業務があることを理解した上で、そうした業務を担当する従業員層への対応や、組織規範への配慮が求められるでしょう。

しかし、日本で「週休3日」を導入している企業の多くは、週あたりの勤務時間で調整して週40時間を維持するか、勤務が減った時間分の給与を減らすかのどちらかのパターンかと思います。

そうした手法で、柔軟な働き方の制度整備を行うのであれば、多くの企業で設定されている「時短勤務」の範囲を調整することで比較的容易に 対応することができます。企業によっては、現行の就労規則に記載されている時短勤務が「週3日勤務」「1日の労働時間が6時間」と限定されていて、従業員にとっては使い勝手が悪い場合もあります。そうした場合は柔軟な記載に改定を検討してもいいかもしれません。

もし、「経済財政運営と改革の基本方針2021」で掲げられているように従業員の自発的な学び直しを期待する場合には、当然ですが、単に柔軟な働き方の選択肢を整備するだけでは活用は期待できないでしょう。 塩野義製薬は選択的週休3日制度の導入に合わせて、既存の資格取得支援制度(年間最大25万円までの補助)の利用促進を行っているそうです。このように既存の教育施策とうまく連携させることが必要そうです。

柔軟な働き方の実現という目的に立ち返れば、「週休3日」というキャッチーな言葉に惑わされる必要もないかもしれません。たとえば、カオナビでは1日の最低就業時間4時間が確保されれば、何度でも中抜けを認めるスイッチワークという制度をコアタイムなしのフレックスと合わせて採用しており、育児・介護、資格取得・兼業などの時間確保に活用されています。

最後に、「週休3日」に関する議論に触れる上で注意が必要な点を述べます。それは、欧州・アメリカでは「ワークライフバランスの観点から、そもそも労働時間を短縮すべき」という動きなのに対して、日本では「育児・介護、学び直しの観点から、週休3日も“選択できる”ようにすべき」といった動きであり、そもそもの前提が異なっている点です。国内でも、この視点のずれを混合したままに、海外事例をベースにした週休3日の議論が散見される印象です。こうした視点の違いを踏まえた上で 、さまざまな事例やオピニオンをご参照いただければと思います。

出 典

*1 東京都 産業労働局 「令和2年度 働き方改革に関する実態調査」

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