タレントインテリジェンス総研調査レポートREPORT

2026.08.20
レポート

企業はなぜ、人材データはあるのに次の一手に活かせないのか?タレントインテリジェンスが現場マネジメントを変える理由


要約

本記事は、社内外のデータやAIを活用して組織の戦略的な意思決定を最適化する「タレントインテリジェンス」が、現場マネジメントにもたらす可能性を解説するものです。経験や直感に頼るマネジメントの限界を整理し、システム・データの分断や可視化に留まっている組織の課題を乗り越え、AIのサポートを得て現場での「最適な次の一手」を導き出すチーム運営の未来像を、具体的な活用シーンとともに紹介します。

読了目安時間

約4分

目次

タレントインテリジェンスとはー「なんとなく」で動く組織の限界

「あの部下、最近元気がない気がするけれど、どう声をかければいいのだろう」「このチーム、なぜかいつもギリギリまで結果が出ない」「優秀なはずなのに、なぜ急に離職してしまったのか」。現場を預かるマネージャーなら、部下やチームに関する問いを日常的に抱え、経験や勘を頼りに、なんとなく対処してきた人もいるのではないでしょうか。
 
経験や勘に頼る「なんとなく」の限界を越える鍵となるのが、タレントインテリジェンスという考え方です。組織内のデータだけでなく、労働市場のトレンドや他社事例といった「外部データ」までをAIが統合・分析し、経営・人事・現場のあらゆるレイヤーにおいて最適な意思決定へと導きます。
これまでは自身の経験や勘を頼りに、一つひとつ手探りで対処してきたかもしれません。しかし、チームの状況が複雑化し、多様な働き方が広がるなかで、「なんとなく」によるマネジメントは限界を迎えつつあります。
 
そもそも、マネジメントという役割自体が、望んで選んだ道ではなかったという方も少なくありません。私たちタレントインテリジェンス総研が2025年3月に行った調査では、管理職の45.9%、ほぼ2人に1人が「就任当時、管理職になりたくなかった」と回答しています。さらにそのうちの約6割は、今も「やらざるを得ないので続けている」と答えています。
 
出典:タレントインテリジェンス総研「管理職になりたくない人は多いのに、なぜ続くのか?―管理職意向サーベイから③ー」
ビジネスパーソン1,000名を対象、うち現在管理職の303名が就任時の意向を回答。「なりたくなかった」17.5%+「どちらかと言えばなりたくなかった」28.4%=45.9%

 
なりたくてなったわけではない役割を、経験と勘だけを頼りに担い続ける。現場マネージャーの負担は、想像以上に大きいのです。
 
タレントインテリジェンスが日々のチーム運営や意思決定の最前線にいる「現場マネージャー」に届いたとき、組織はどう変わるのか。まずは、現場に潜む課題から見ていきましょう。

現場での人材データ活用を阻む「2つの断絶」が存在する

チーム運営や人材活用が思うようにいかない背景には、現場を取り巻く構造的な断絶が存在します。その典型的な2つのパターンを、現場マネージャーの視点から紐解きます。
 
断絶①:システム・データの分断
メンバー個々の評価、研修履歴、本人が申告したスキル、日々の1on1のメモなど、組織内には本来、マネジメントに役立つはずの情報が数多く存在します。しかし、これらのデータは異なるシステムに散らばったままということはないでしょうか。メンバーの立体的な全体像が見えず、点在する情報だけで判断せざるを得ない。これが第一の断絶です。
例えば、あるメンバーの評価は人事システム、スキルの自己申告はExcel、1on1の記録はマネージャーの手元のメモ帳や個人のドキュメント。点在するデータを毎回自分の頭の中で組み合わせて判断しているマネージャーは、決して少なくないはずです。
 
断絶②:可視化とアクションの乖離
仮にデータがダッシュボードなどにまとまり、「このメンバーはモチベーションが低下している」「スキルバランスが偏っている」といった事実が見えるようになったとします。しかし、可視化されたデータは「過去の記録」を映したにすぎません。「では、明日からの1on1で具体的にどうアプローチすればいいのか?」という、次の行動に落とし込むための知恵や手がかりがない。見えているのに次の一手が打てない。これが第二の断絶です。

タレントインテリジェンスがあれば、マネージャーは迷わず動けるようになる

この断絶を乗り越え、現場マネジメントを強力に支援するのが、社内外のデータをAIが統合・分析するタレントインテリジェンスです。言葉だけではイメージしづらいので、具体的な活用シーンを3つ紹介します。
 
シーン①:1on1の前に「気づき」が届く
1on1の前に、「Aさんは先月に比べてエンゲージメントスコアが下がっています。前回の1on1メモでは業務量への言及がありました」といったアラートがマネージャーに届く。勘や記憶だけに頼らず、根拠を持って声をかけられるようになります。
 
シーン②:後任・アサインの判断に根拠が持てる
人事異動や新しいプロジェクトのメンバーを選ぶとき、スキルデータ・過去の評価・本人のキャリア志向をAIが組み合わせ、「この3名が候補として近い」と提示してくれる。これまで「なんとなく声をかけやすい人」や「パッと名前が浮かびやすい人 」に偏っていた判断に、データという後ろ盾が加わります。
 
シーン③:採用時の「その人らしさ」が、入社後に引き継がれる
採用選考時は、適性検査の結果や本人の希望、面接で見えたお人柄など、候補者を深く知るための情報が集められます。ところが入社した途端、せっかく集めた採用情報は採用担当のフォルダに眠ったまま。受け入れ先のマネージャーには詳細が引き継がれず、またゼロから手探りが始まる。これもデータの断絶が生むすれ違いに繋がります。一気通貫したデータ管理は採用時に把握した強み・価値観・本人の希望をオンボーディングや配置にそのまま引き継ぎ、「初日から、その人らしさを踏まえたマネジメント」を可能にします。
 
これまで「過去を記録するだけ」だった人事データが、現場にとって「未来への気づきとアクションを生み出す道具」へと進化するイメージです。しかも、この仕組みは一方通行ではありません。マネージャーの判断とその後の結果もまたデータとして蓄積されていくため、使えば使うほど、AIが導く示唆は「自社にとっての最適解」へと研ぎ澄まされていきます。
 
もちろん、AIがマネージャーの代わりに意思決定をしてしまうものではありません。AIの役割は、蓄積されたデータから「見落としがちな変化」を検知したり、過去の成功パターンから「次にとるべき選択肢」を絞り込んで提示したりすること。これにより、マネージャー自身の「勘と経験」の精度をさらに引き上げ、自信を持って最後の判断を下せる環境をつくり出します。
 
生成AIをはじめとする技術の進歩により、データから得られるインサイトを専門家でなくても直感的に引き出せる環境が整いつつあります。定性的な面談メモやスキル情報をAIが解釈し、あなたにそっとアドバイスをくれる。そんな未来のチーム運営が、少しずつ現実のものになろうとしています。

まとめ:「気づき」から「確信を持ったアクション」へ

人の数だけマネジメントに正解はなく、直感や経験だけで挑み続けるには、現場マネージャーの負担は大きすぎます。タレントインテリジェンスは、データとAIを「心強い参謀」としてチームに迎え入れるようなものです。
 
最後に、ひとつ問いを置かせてください。あなたのチームの”次の一手”は、データと勘、どちらから生まれていますか?
 
「データはあるのに次の一手に活かせていない」と感じる瞬間があるなら、その課題の裏にはすでにタレントインテリジェンスの可能性が眠っています。タレントインテリジェンス総研では、この新しい仕組みがもたらす気づきを、現場の確信あるアクションへつなげる知見をこれからも発信していきます。


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