タレントインテリジェンス総研調査レポートREPORT

2026.09.30
調査

【人事担当者500名調査①】7割が入社前データの活用不足を経験–活用不足をデータの記録・保存状況から紐解く


要約

本記事は、従業員100名以上の企業に所属する人事担当者500名を対象に実施した「入社前データの活用実態調査」の第1回【記録・保存編】です。
 
調査の結果、人事担当者の7割(70.0%)が入社前データの活用不足を実感していたことがわかりました。一方、活用の前提となる入社前データの「記録・保存」については、74.4%が、「体系的に記録・保存している(ある程度を含む)」と回答しました。
 
ただし、記録・保存の状況には企業規模による違いがみられ、大規模企業では81.6%だったのに対し、小規模企業では66.2%でした。また、保管場所をみると、小規模企業では「経歴・基本情報」のような基礎的な情報でも「個人管理(個人PCのファイル・紙・Excel等)」が最も多く、ATSの利用は28.8%に留まりました。
 
入社前データの記録・保存は一定程度行われているものの、その状況は企業規模や保管する情報によって異なる実態がみえました。

読了目安時間

4分程度

目次

概要

企業の採用活動においては、経歴や面接評価、適性検査の結果、本人の志向性など、候補者に関する多様な「入社前データ」が蓄積されます。こうしたデータは、入社後の配属・育成・オンボーディング等に活用できる一方、今回の調査では、人事担当者の7割が、入社前データの活用不足を実感したことがあると回答しました。
 
なぜ、入社前データの活用不足を感じているのでしょうか。入社後の活用に至るまでには、データが記録・保存され、配属先へ共有・引き継がれる過程があります。また、データが利用できる状態であっても、実際の活用を阻む要因が存在する可能性もあります。
 
そこで本調査では、活用不足の背景を考えるため、「記録・保存」「共有・引き継ぎ」「活用」の3つの段階に着目します。第1回となる本記事では、その出発点となる「記録・保存」状況を取り上げ、従業員規模による差や情報種別ごとの体系化・保管状況の実態を整理します。
 

  • サーベイ対象:従業員100名以上の企業に勤務する人事担当者500名
  • サーベイ期間:2026年7月10日(金)~2026年7月17日(金)
  • サーベイ内容:Web上で入社前データの記録・保存状況についての質問項目に選択・記述式で回答
  • 結果の集計・分析:回答結果を集計し、差異や傾向を抽出(回答の構成比は小数第2位を四捨五入しているため、合計は必ずしも100%にはなりません。そのため、グラフ上に表示される構成比での計算結果は、実際の計算結果とずれが生じる場合があります)

 

人事担当者の7割が、入社前データの「活用不足」を実感したことがある

採用時に得た入社者のデータを、入社後に活用できていますか?
 
経歴や面接評価、適性検査の結果、本人の志向性など、選考の過程では多くの情報が集まります。しかし、それが入社後の配属や育成にきちんと活かされているかというと、心当たりのある人事担当者も多いのではないでしょうか。
 
実際に人事担当者500名に尋ねたところ、以下の結果が得られました。

 

図1:入社前データの活用不足の実感

入社前データの記録・保存状況

Q. 入社前データ(経歴・面接評価・適性検査・志向等)が入社後に活用されていないと感じたことはありますか?

回答者数:全体(n=500)

 
全体の70%が、活用されていないと感じたことがあると回答しています。
 
この背景を考えるにあたって、入社前データが入社後の活用に至るまでの「記録・保存」「共有・引き継ぎ」といった過程を紐解く必要があると考えます。そこで、次章からは活用の土台となる「記録・保存」の実態から見ていきます。
 

入社前データを「体系的に記録・保存」と回答した人事担当者は74.4%

採用時に取得した入社前データ(経歴や面接評価、適性検査の結果、本人の志向性等)について、どの程度体系的に記録・保存されているかを人事担当者に尋ねたところ、以下の結果が得られました。
 

図2:入社前データの記録・保存状況

入社前データの記録・保存状況

Q. 採用過程で得た入社前データ(経歴・面接評価・適性検査・志向等)は、全社として体系的に記録・保存されていますか。

回答者数:全体(n=500)

 
「体系的に記録・保存されている(43%)」「ある程度体系的に記録・保存されている(31.4%)」となり、ある程度も含めると人事担当者の74.4%が「体系的に記録・保存されている」と回答していることがわかります。一方で、「担当レベルで記録・保存されている(16.4%)」「記録・保存はされていない(9.2%)」となりました。
 
次の従業員規模別の記録・保存状況では、規模による差が明らかになりました。従業員規模については以下のように区分しています。
 

  • 従業員数1,000名以上:大規模
  • 従業員数500~1,000名未満:中規模
  • 従業員数100~500名未満:小規模

※カッコ内の数値は回答者数(以降の図も同様)
 

図2_1:入社前データの記録・保存状況(従業員規模別)

入社前データの記録・保存状況(従業員規模別)

Q. 採用過程で得た入社前データ(経歴・面接評価・適性検査・志向等)は、全社として体系的に記録・保存されていますか。

回答者数:全体(n=500)

 
大規模企業では、体系的な記録・保存(「ある程度」を含む)が81.6%であるのに対し、小規模企業では66.2%となっています。さらに「担当レベルでの記録・保存(22.7%)」や「記録・保存なし(11.0%)」といった回答が約3割強を占めており、他の従業員規模と比較して多い傾向です。
 
従業員規模が大きいほど入社前データが体系化されている背景には、単に「データの管理意識が高い」という点だけでなく、ATS(採用管理システム)等の管理ツールを利用し、データ管理の土台が整備されていることが影響していると推測します。ATS等のツール利用については、次章にある保管場所に関する調査結果で詳しく見ていきます。

 

入社前データのうち、最も体系的に記録・保存されているのは「経歴・基本情報」

一口に入社前データといっても、経歴・スキル・価値観など、採用過程で取得する情報は多岐にわたります。そこで、入社前データを5つの情報に分類し、それぞれの体系的な記録・保存状況を尋ねました。
 

図3:入社前データの記録・保存状況(情報別)

入社前データの記録・保存状況(情報別)

Q. 採用過程で得た各情報は、どの程度体系的に記録・保存されていますか。

回答者数:全体(n=500)

 
最も体系的な記録・保存(「ある程度」も含む)がされているのは「経歴・基本情報(76.6%)」です。続いて、「面接・面談での評価・所見(68.2%)」「スキル・専門性・実務実績(66.6%)」「適性検査・アセスメント結果(65.4%)」「価値観・キャリア志向・志望動機(60.4%)」となっています。
 
「経歴・基本情報」は他の情報に比べて、体系的に記録・保存されている割合が高いことがわかります。一方、「担当レベルで記録・保存」と「記録・保存なし」を合わせた割合では、「価値観・キャリア志向・志望動機」が33.6%と最も高くなりました。採用時に得られる全ての情報が、同じ程度で体系的に記録・保存されているわけではなく、情報の種類によって記録・保存の程度には違いがみられます。
 
さらに、従業員規模別でみると以下の結果が得られました。「経歴・基本情報」が最も体系化されている点が、いずれの従業員規模でも共通しています。一方で、従業員規模が小さくなるほど、経歴・基本情報も含めた他の情報でも、体系化の割合が低くなる傾向が見られます。
 

図3_1:入社前データの記録・保存状況(大規模企業)

入社前データの記録・保存状況(大規模企業)

Q. 採用過程で得た各情報は、どの程度体系的に記録・保存されていますか。

回答者数:大規模企業(n=228)

 
具体的には、大規模企業では「経歴・基本情報(84.7%)」だけでなく、全ての情報で約7割が体系的に記録・保存されており、入社前データの管理が整っていることが伺えます。
 

図3_2:入社前データの記録・保存状況(中規模企業)

入社前データの記録・保存状況(中規模企業)

Q. 採用過程で得た各情報は、どの程度体系的に記録・保存されていますか。

回答者数:中規模企業(n=91)

 
中規模企業では、「経歴・基本情報(70.3%)」に加え「面接・面談での評価・所見(70.4%)」も7割程度体系化されている一方、「スキル・専門性・実務実績(60.5%)」「適性検査・アセスメント結果(62.7%)」「価値観・キャリア志向・志望動機(59.4%)」は6割前後に留まっており、大規模企業と小規模企業の中間的な水準となっています。

 

図3_3:入社前データの記録・保存状況(小規模企業)

入社前データの記録・保存状況(小規模企業)

Q. 採用過程で得た各情報は、どの程度体系的に記録・保存されていますか。

回答者数:小規模企業(n=181)

 
対照的に、小規模企業では「経歴・基本情報(69.6%)」以外の体系化の割合が5〜6割弱と低くなっています。さらに「面接・面談での評価・所見」や「価値観・キャリア志向・志望動機」といった情報においては、担当レベルでの記録・保存が約3割を占めており、属人的な管理がうかがえる結果となりました。
 
最後に、入社前データの保管場所について見ていきます。

 

入社前データの保管場所は「ATS(採用管理システム)」が最多

各入社前データがどこに保管されているかを複数回答で尋ねたところ、以下の結果が得られました。

 

図4:入社前データの保管場所

入社前データの保管場所

Q. 採用過程で得た情報は、どのように保管・保存していますか。

回答者数:各入社前データにおいて「記録・保存している」と回答した人のみが対象(項目ごとに記録有無が異なるため、回答者数も項目ごとに異なります)

 
情報種別を問わず「ATS(採用管理システム)」が35.4%〜43.1%の割合で利用されていることがわかりました。
次いで「TMS(タレントマネジメントシステム)などのその他HRシステム(29.2%〜33.0%)」「個人管理(25.2%〜29.7%)※1」、「汎用のクラウドサービス(19.9%〜22.1%)※2」と続いています。
※1 個人PCのファイル・紙・Excel等
※2 スプレッドシート・ストレージ等

 
いずれの情報においても、保管場所の割合に大きな偏りは見られません。
続いて、従業員規模別でみると以下の結果が得られました。

 

図4_1:入社前データの保管場所(大規模企業)

入社前データの保管場所(大規模企業)

Q. 採用過程で得た情報は、どのように保管・保存していますか。

回答者数:各入社前データにおいて「記録・保存している」と回答した大規模企業所属の人のみが対象(項目ごとに記録有無が異なるため、回答者数も項目ごとに異なります)

 
大規模企業では、全ての情報で「ATS」が約45〜55%と最多を占め、「TMS等のHRシステム」も約35〜40%利用されています。一方で「個人管理」は15%前後となっています。

 

図4_2:入社前データの保管場所(中規模企業)

入社前データの保管場所(中規模企業)

Q. 採用過程で得た情報は、どのように保管・保存していますか。

回答者数:各入社前データにおいて「記録・保存している」と回答した中規模企業所属の人のみが対象(項目ごとに記録有無が異なるため、回答者数も項目ごとに異なります)

 
中規模企業では「ATS」が約34〜40%、「TMSなどのその他HRシステム」が約35〜40%と、いずれも同程度の比率となっています。一方、「個人管理」の割合は約28〜31%で、大規模企業(約15%)と比べて高くなる傾向です。

 

図4_3:入社前データの保管場所(小規模企業)

入社前データの保管場所(小規模企業)

Q. 採用過程で得た情報は、どのように保管・保存していますか。

回答者数:各入社前データにおいて「記録・保存している」と回答した小規模企業所属の人のみが対象(項目ごとに記録有無が異なるため、回答者数も項目ごとに異なります)

 
小規模企業では大規模企業・中規模企業とは大きく異なる傾向が見られます。「面接・面談での評価・所見」の45.4%をはじめ、すべての情報で「個人管理」が約38〜45%で最多となっており、「経歴・基本情報」であってもATSの利用割合は28.8%に留まります。
 
小規模企業でデータの体系化が進みにくい背景には、保管場所の違いが一因として考えられます。個人管理(個人PCのファイル・紙・Excel等)は、ATSのような一元管理の仕組みと異なり、情報が特定の担当者に偏りやすいためです。その結果、データが分散・属人化したまま蓄積され、必要なときに検索・参照しにくい状態になっている可能性があります。

 

まとめ

入社前データの「記録・保存」状況から、以下が明らかになりました。

 

入社前データの体系的な記録・保存状況

  • 人事担当者の7割超(74.4%)が体系的に記録・保存していると回答
  • 従業員規模による差があり、大規模企業と小規模企業では約15ptの開きがある

情報種別による体系化の差

  • 「経歴・基本情報」は最も体系的に記録・保存されている(76.6%)一方、「価値観・キャリア志向・志望動機」は担当レベル・記録なしの合計が最も高い

入社前データの保管場所

  • 大規模企業ではATS(採用管理システム)が最多を占める
  • 小規模企業では個人管理(個人PCのファイル・紙・Excelなど)が最多となり、経歴・基本情報のような基礎的な情報でもATS利用は28.8%に留まった

 
冒頭で見た通り、人事担当者の7割が入社前データの「活用不足」を実感したことがあると回答しました。今回の調査では、特に小規模企業において、基礎的な情報であっても記録・保存の体系化が他の規模と比較して進みにくく、個人の手元に留まりやすい実態が明らかになりました。データが分散・属人化した状態では、必要なときに見返し、配属や育成に活かすことも難しくなると考えられます。
 
ただし、記録・保存が整っていても、その情報が配属先など必要な相手に共有されなければ、活用にはつながりません。第2回【共有・引き継ぎ編】では、記録・保存された入社前データが、実際にどの程度共有されているのかをみていきます。
 
 


 

【インターネットサーベイ調査概要】

<実施詳細>

  • 配信:2026/7/10
  • サンプル回収数:500サンプル
  • 配信・回収条件
    年齢:23歳以上70歳未満
    性別:男女
    配信地域:全国
    対象条件:従業員100名以上の企業に勤務する人事担当者

 

<設問と回答選択肢>
問:入社前データ(経歴・面接評価・適性検査・志向等)が入社後に活用されていないと感じたことはありますか?(SA)
選択肢:感じたことがある/やや感じたことがある/あまり感じたことはない/感じたことはない

 
問:採用過程で得た入社前データ(経歴・面接評価・適性検査・志向等)は、全社として体系的に記録・保存されていますか。(SA)
選択肢:体系的に記録・保存されている/ある程度体系的に記録・保存されている/担当レベルで記録・保存されている(体系化はされていない)/記録・保存はされていない

 
問:採用過程で得た以下の各情報は、どの程度体系的に記録・保存されていますか。(SA)
項目(表側):経歴・基本情報/スキル・専門性・実務実績/適性検査・アセスメント結果/面接・面談での評価・所見/価値観・キャリア志向・志望動機
選択肢(表頭):体系的に記録・保存されている/ある程度体系的に記録・保存されている/担当レベルで記録・保存されている(体系化はされていない)/記録・保存はされていない/この情報は収集・確認自体していない

 
問:採用過程で得た以下の情報は、どのように保管・保存していますか。(MA)
項目(表側):経歴・基本情報/スキル・専門性・実務実績/適性検査・アセスメント結果/面接・面談での評価・所見/価値観・キャリア志向・志望動機
選択肢(表頭):ATS(採用管理システム)/TMS(タレントマネジメントシステム)などのその他HRシステム/汎用のクラウドサービス(スプレッドシート・ストレージ等)/個人管理(個人PCのファイル・紙・Excelなど)/その他


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