カオナビHRテクノロジー総研調査レポートREPORT
緊急事態宣言発令の影響は?
~2021年1月 リモートワーク実態調査<前編>~
サーベイの背景
新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、テレワーク、在宅勤務、リモートワーク等の「出社をしない」働き方(以降、すべての働き方を含めて「リモートワーク」とします)を始めた方も多いのではないでしょうか。2021年1月8日には、1都3県(東京、神奈川、埼玉、千葉)に緊急事態宣言が発令され、1月14日には大阪、兵庫、京都、愛知、岐阜、福岡、栃木にも対象が拡大されました。2月8日に栃木は解除となりましたが、残りの10都府県では2021年3月7日までの実施が予定されています。
今回の緊急事態宣言をめぐって、政府は「出勤者の7割削減を目指す」という考えも表明していましたが、リモートワークの現状はどのようになっているのでしょうか。カオナビHRテクノロジー総研では2021年1月下旬に調査を実施しました。2020年5月および8月に実施したリモートワーク実態調査の結果とも比較しながら、リモートワークの今を考察します。今回は<前編>として、全国のリモートワーク実施状況と地域別の傾向を見ていきましょう。
サーベイの概要
今回は以下の要領にてインターネットを用いたサーベイを実施致しました
- サーベイ対象:20代~60代の自由業・社長職を除く有業者 8,716名
- サーベイ期間:2021年1月26日(火)~2021年1月28日(木)
- サーベイ内容:Web上でリモートワークについての質問項目に、選択・記述式で回答
- 結果の集計・分析:回答結果を集計し、差異や傾向を抽出(回答の構成比は小数第2位を四捨五入しているため、合計は必ずしも100%にはなりません。そのため、グラフ上に表示される構成比での計算結果は、実際の計算結果とずれが生じる場合があります)
比較対象となる前回までの調査
調査結果① 一都三県の緊急事態宣言発令後のリモートワーク実施率は、全体で24.6%
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Q.2021年1月8日の一都三県における緊急事態宣言発令後の、就業場所への出社状況について教えてください
本レポート内では「毎日リモートワーク(=勤務時間の90%以上がリモートワーク)」もしくは「出社とリモートワークを併用している」に該当する人、つまり一部でもリモートワークをしている人はすべて含めて「リモートワークを実施している」とみなし、「リモートワーク実施率」に含めます。全体では「毎日リモートワーク」が7.6%、「出社とリモートワークを併用」が17.0%となり、合わせて24.6%のリモートワーク実施率となりました。
調査結果② 一都三県の緊急事態宣言発令前(2020年12月)のリモートワーク実施率は、全体で20.4%
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Q.先月2020年12月の就業場所への出社状況について教えてください
今回の調査では、一都三県の緊急事態宣言発令前の2020年12月の出社状況についても、回答者に聞いています。2020年12月は「毎日リモートワーク」が6.5%、「出社とリモートワークを併用」が14.0%となり、合わせて20.4%のリモートワーク実施率となりました。
2021年1月8日の一都三県における緊急事態宣言発令後のリモートワーク実施率は、調査結果①の通り24.6%です。発令後、リモートワーク実施率は全体としては4.1ポイント高まり、微増したということになります。
調査結果③ 2020年5月以降リモートワーク実施率は減少傾向にあったが、一都三県の緊急事態宣言発令を機に微増
カオナビHRテクノロジー総研では、2020年5月および8月にもリモートワーク実施率の調査を実施しており、今回の2020年12月および2021年1月8日以降の数値と合わせて、時系列で傾向を追ってみたいと思います。
2020年5月調査は、全国的な緊急事態宣言下で実施しました。その際には35.5%あったリモートワーク実施率は、緊急事態宣言解除後の8月に23.2%となり、調査結果②にある通り12月には20.4%と、減少傾向を見せていました。これは、全体のうちの「毎日リモートワーク」「出社とリモートワークを併用」の比率も同様の傾向です。しかしながら、今回の一都三県の緊急事態宣言発令後、微増を示しています。今回の緊急事態宣言が、リモートワーク実施に影響を及ぼしたように見受けられます。
調査結果④ 勤務地域別では、引き続き首都圏のリモートワーク実施率が40.2%と顕著に高い
今回も様々な角度から、リモートワーク実施率の傾向を調査しました。まずは勤務地域別の傾向です。
リモートワーク実施率の全体平均24.6%を超えるのは首都圏(東京、埼玉、千葉、神奈川)のみで、40.2%となりました。前々回5月、前回8月調査時にも同様の傾向を見せており、他地域よりも突出して高い数値となっています。
緊急事態宣言の発令による影響は、地域別に見るとどうでしょうか。発令前の2020年12月時点のリモートワーク実施率も、見てみましょう。
2020年12月から2021年1月8日以降にかけて、リモートワーク実施率は全体平均では4.1ポイント増加しました。首都圏では6.3ポイントの増加で、地域別では最大の増加幅です。増加幅の次点は近畿の3.7ポイントなので、発令前後の増加幅も首都圏が比較的大きいといえます。
今回は一部地域に限定された緊急事態宣言発令であったことから、緊急事態宣言下の地域とそれ以外の地域でリモートワークの実施状況に差があるかを、次は見てみましょう。
調査結果⑤ 緊急事態宣言下の11都府県は、他地域と比較してリモートワーク実施率が高い
緊急事態宣言下の11都府県では、「毎日リモートワーク」が10.3%、「出社とリモートワークを併用」が22.1%となり、合わせて32.4%のリモートワーク実施率となっています。それ以外の地域のリモートワーク実施率は10.2%となるため、緊急事態宣言下の地域では、リモートワーク実施率が相対的に高いと言えます。
これは緊急事態宣言によって、宣言下の地域のリモートワークが促進されたといえるのでしょうか。それとも、そもそもリモートワーク実施率が高い地域に、緊急事態宣言が出されたのでしょうか。2020年12月および2021年1月8日以降の比較をしてみます。
調査結果⑥ 緊急事態宣言前後で、リモートワーク実施率は宣言下の地域で5.7ポイント、その他地域で1.3ポイントの上昇
緊急事態宣言が出された地域はそもそもリモートワーク実施率が高かったことが分かりますが、増加幅も5.7ポイントとなっています。それ以外の地域の増加幅は1.3ポイントなので、大きな影響があったとは言いづらいですが、緊急事態宣言下の地域のリモートワーク促進要因の一つに、緊急事態宣言があるとは言えそうです。
とはいえ、2021年1月8日以降の緊急事態宣言下の地域でも61.9%は「毎日出社」と回答しており、「出勤者の7割削減」という政府目標は、なかなかハードルが高いと言わざるを得ません。
調査結果⑦ 緊急事態宣言下の都市圏、その中でも東京都のリモートワーク実施率が50.4%と顕著に高い
調査結果⑤の通り、緊急事態宣言下の地域はリモートワーク実施率が高い傾向があります。都道府県別で見てみると、岐阜と京都を除くと、緊急事態宣言下の都府県がリモートワーク実施率トップ10に入りました。しかしながら緊急事態宣言下の都府県の間でも、差が見られます。リモートワーク実施率トップ5の都府県を抜粋し、2021年1月8日以降のリモートワーク実施率を見てみましょう。
図8はリモートワーク実施率トップ5の都道府県のグラフとなっています。東京都のリモートワーク実施率は50.4%で、次点の大阪府が29.6%であることから、突出して高いことが分かります。2位から5位は、大阪府、神奈川県、福岡県、愛知県と、人口の多い政令指定都市を含む府県が並んでいます。ただし5位の愛知県ではリモートワーク実施率が21.8%となり、全体平均の24.6%をすでに下回ります。ちなみにリモートワーク実施率6位は埼玉、7位は千葉となっており、一都三県の緊急事態宣言発令地域の中でも差があることがわかります。埼玉や千葉は、事業所数は多いものの、本社が少ない地域かと思われるので、本社機能の有無もリモートワーク実施率に影響があるのかもしれません。
前編の調査結果のまとめ ~緊急事態宣言発令の影響は?~
前編で明らかになった調査結果は、以下の通りです。
- 調査結果① 一都三県の緊急事態宣言発令後のリモートワーク実施率は、全体で24.6%
- 調査結果② 一都三県の緊急事態宣言発令前(2020年12月)のリモートワーク実施率は、全体で20.4%
- 調査結果③ 2020年5月以降リモートワーク実施率は減少傾向にあったが、一都三県の緊急事態宣言発令を機に微増
- 調査結果④ 勤務地域別では、引き続き首都圏のリモートワーク実施率が40.2%と顕著に高い
- 調査結果⑤ 緊急事態宣言下の11都府県は、他地域と比較してリモートワーク実施率が高い
- 調査結果⑥ 緊急事態宣言前後で、リモートワーク実施率は宣言下の地域で5.7ポイント、その他地域で1.3ポイントの上昇
- 調査結果⑦ 緊急事態宣言下の都市圏、その中でも東京都のリモートワーク実施率が50.4%と顕著に高い
2021年1月8日の緊急事態宣言発令後は、2020年5月から減少傾向にあったリモートワーク実施率が全国的には微増に転換しました。勤務地域別では、2020年5月から一貫して首都圏(東京、埼玉、千葉、神奈川)でのリモートワーク実施率が高く、中でも2021年1月8日以降、東京都は50.4%と過半数に達しています。
調査実施時に緊急事態宣言下にあった11都府県のリモートワーク実施率はやはり高めで、それらの地域はその他の地域と比較して緊急事態宣言前後の増加幅も大きくなりました。緊急事態宣言の発令は、顕著に、とは言えないものの、リモートワーク促進に一定の影響を与えたようです。
次回<後編>では、会社規模、職種、業種別に一都三県の緊急事態宣言発令前後のリモートワーク実施率を見ていきます。
【インターネットサーベイ調査概要】
<実施詳細>
- 配信:2021/01/26
- サンプル回収数:8,716サンプル
- 配信・回収条件
年齢:20歳~69歳
性別:男女
配信地域:全国
対象条件:有業者(自由業・社長職を除く)
<設問と回答選択肢(今回調査)>
問:2021年1月8日の一都三県における緊急事態宣言発令後の、就業場所への出社状況について教えてください。
選択肢:基本的に毎日、就業場所に出社して働いている(勤務時間の90%以上が出社で、その他がリモートワーク)/勤務時間の半分以上は就業場所に出社し、それ以外は出社せずにリモートワークで働いている(勤務時間の50~89%程度が出社で、その他がリモートワーク)/勤務時間の半分以上は出社せずにリモートワークで働き、それ以外は就業場所に出社している(勤務時間の10~49%程度が出社で、その他がリモートワーク)/基本的に毎日、リモートワークで働いている(勤務時間の10%未満が出社で、その他がリモートワーク)/部分的に休業もしくは休暇を取りながら、勤務の際は就業場所に出社している/部分的に休業もしくは休暇を取りながら、それ以外はリモートワークで働いている/部分的に休業もしくは休暇を取りながら、就業場所への出社とリモートワークを併用している/完全に休業している/その他(自由記述)
問:先月2020年12月の就業場所への出社状況について教えてください。
選択肢:基本的に毎日、就業場所に出社して働いていた(勤務時間の90%以上が出社で、その他がリモートワーク)/勤務時間の半分以上は就業場所に出社し、それ以外は出社せずにリモートワークで働いていた(勤務時間の50~89%程度が出社で、その他がリモートワーク)/勤務時間の半分以上は出社せずにリモートワークで働き、それ以外は就業場所に出社していた(勤務時間の10~49%程度が出社で、その他がリモートワーク)/基本的に毎日、リモートワークで働いていた(勤務時間の10%未満が出社で、その他がリモートワーク)/部分的に休業もしくは休暇を取りながら、勤務の際は就業場所に出社していた/部分的に休業もしくは休暇を取りながら、それ以外はリモートワークで働いていた/部分的に休業もしくは休暇を取りながら、就業場所への出社とリモートワークを併用していた/完全に休業していた/その他(自由記述)
<結果の集計における備考>
本レポート内の「出社とリモートワークを併用(している)」いう表現は、上記の選択肢のうち
勤務時間の半分以上は就業場所に出社し、それ以外は出社せずにリモートワークで働いている(勤務時間の50~89%程度が出社で、その他がリモートワーク)/勤務時間の半分以上は出社せずにリモートワークで働き、それ以外は就業場所に出社している(勤務時間の10~49%程度が出社で、その他がリモートワーク)/部分的に休業もしくは休暇を取りながら、それ以外はリモートワークで働いている/部分的に休業もしくは休暇を取りながら、就業場所への出社とリモートワークを併用している が含まれる。
また「毎日出社(している)」には、基本的に毎日、就業場所に出社して働いている(勤務時間の90%以上が出社で、その他がリモートワーク)/部分的に休業もしくは休暇を取りながら、それ以外はリモートワークで働いている が含まれ、「毎日リモートワーク」には、基本的に毎日、リモートワークで働いている(勤務時間の10%未満が出社で、その他がリモートワーク)/部分的に休業もしくは休暇を取りながら、それ以外はリモートワークで働いている が含まれている。
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