カオナビHRテクノロジー総研調査レポートREPORT

2026.02.26
調査

「管理職は罰ゲーム」か?一般社員の8割が昇進を望まない実態と背景 ―管理職意向サーベイから①ー

サーベイの背景

昨今、「管理職は罰ゲームだ」という言説を耳にする機会が増えています。業務量や責任の重さに対して報酬や裁量が見合っていない、部下対応や調整業務に追われるといったイメージが語られることも少なくありません。こうした言説は、管理職という役割に対する否定的な印象を端的に表している一方で、実際にどの程度の人が管理職を望んでいるのか、あるいは望んでいないのかについては、必ずしも十分に共有されているとは言えない状況にあります。管理職を取り巻く環境や役割が変化する中で、管理職という立場がどのように受け止められているのかを把握することは、今後の人材育成や組織運営を考える上で重要な視点となります。
 
本サーベイでは、管理職という役割に対する評価や是非を単純に問うのではなく、一般社員と管理職の双方を対象に、どのような人が、どのような状況のもとで管理職を志向するのか、あるいはしないのかを多角的に捉えることを目的としています。本記事ではその第一歩として、一般社員を対象に、管理職になることに対する意向の分布とその違いを確認します。

サーベイの概要

今回は以下の要領にてインターネットを用いたサーベイを実施致しました

  • サーベイ対象:20歳以上66歳未満の自由業を除く有業者1,000名
  • サーベイ期間:2025年3月24日(月)~2025年3月26日(水)
  • サーベイ内容:Web上で管理職についての質問項目に、選択・記述式で回答
  • 結果の集計・分析:回答結果を集計し、差異や傾向を抽出(回答の構成比は小数第2位を四捨五入しているため、合計は必ずしも100%にはなりません。そのため、グラフ上に表示される構成比での計算結果は、実際の計算結果とずれが生じる場合があります)

本記事の対象者

今回調査の回答者を「管理職か、一般社員(=非管理職)か」、管理職であれば「部下がいるか、いないか」、一般社員であれば「将来的に管理職になりうるコースにいるか、いないか」、あるいは「管理職という立場がない」職場にいるかという観点で分け、その割合を示したものが図1です。

 

  • Q. あなたは、所属する会社・組織において「管理職(※)」ですか。
    ※ここでいう管理職は、チームや部署などの組織に対して責任を持ち、組織の成果によって評価される部分がある立場の人を指します。労働基準法が定める「管理監督者」である必要はありません。

    (回答者数1,000人)(SA)

「管理職希望と実態に関するサーベイ」のシリーズは、管理職の回答者の回答結果も含んでいます(今後公開予定)ですが、ここでは「現在管理職ではないが、将来的に管理職になりうるコースにいる(=管理職コース内の一般社員)(11.1%)」「管理職ではなく、将来的に管理職になることはないコースにいる(=管理職コース外の一般社員)(22.1%)」を選択した一般社員の回答者332名の回答結果に焦点を当てます。今回は一般社員332名の「管理職希望の有無」について取り上げ、次回はその希望が何を持って形成されるか、あるいは削がれるのかを考察していきます。

一般社員の管理職希望状況

「管理職になりたいと思いますか」という質問に対する回答結果は、図2のように分布しています。

 

  • Q. 管理職になりたいと思いますか(将来的になることはない方も、なれるとしたらと仮定して回答してください)(回答者数332人)(SA)
    ※図5まで同様

「なりたい(4.5%)」「どちらかと言えばなりたい(13.6%)」となり、肯定的な回答は計18.1%と2割に満たない結果となっています。一方で「どちらかと言えばなりたくない(29.2%)」と「なりたくない(52.7%)」と、管理職志向が低い回答は計81.9%となっています。この結果を単純に解釈すれば、仮に管理職への昇進を無作為に打診した場合、5人に4人以上が本人の志向と合致しない可能性があることを意味します。これは個人・組織双方にとって無視できないミスマッチのリスクだと言えるでしょう。
 
もっとも、実際の昇進プロセスがこのように無作為に行われているわけではありません。
多くの企業では、年次や役割期待、これまでの業務パフォーマンスなど、一定の基準をもとに昇進対象者が絞り込まれています。管理職への意向は、年齢等の属性によって異なる可能性があります。以下では、実際に管理職希望の傾向に差が見られる属性について、それぞれの分布を確認します。

管理職になりたくない若手世代 -年代別分析から見える課題

前章では、一般社員全体として管理職意向が低い状況にあることを確認しました。本章では、その傾向を年代別に分解し、どの世代で特に管理職意向の低下が顕著に見られるのかを確認します。
管理職への昇進には一定の年次幅が存在し、その時期に候補とならなければ、その後に管理職へ就く可能性は高くないのが実情です。こうした昇進構造を踏まえると、若手世代における管理職志向の状況は、将来的な組織運営や人材配置を考えるうえで重要な意味を持ちます。年代別に管理職希望の分布を確認することで、管理職忌避が一過性のものなのか、それとも構造的な課題なのかを検討します。

 

年代別に見ると、管理職意向は全世代で高いわけではないものの、その中でも差が見られます。特に20・30代では、「なりたい」「どちらかと言えばなりたい」と回答した割合が他の年代に比べて著しく低く、管理職を志向しない層が大半を占めています。また40代では「なりたくない」が62.0%と最も高く、管理職に対する消極的な姿勢がより明確に表れています。
一方で、50代・60代では相対的に「なりたい」「どちらかと言えばなりたい」と回答した割合がやや高くなるものの、いずれの年代においても管理職志向が多数派となる状況には至っていません。
 
管理職への昇進が特定の年次・年代に集中する傾向があることを踏まえると、20・30代という若い段階ですでに管理職を志向しない層が多数を占めている点は、将来的な管理職人材の確保という観点から看過できない状況だと言えるでしょう。しかし若手世代における管理職忌避の背景を考える際には、年代以外の切り口から眺めてみることで、別の側面が見えてくる可能性があります。

企業規模によって異なる管理職意向

前章では、年代によって管理職になる意向に明確な差が見られることを確認しました。本章では、勤務先の従業員規模に着目し、企業規模の違いによって管理職志向の分布にどのような差が見られるのかを確認します。
管理職の役割や昇進機会は、企業規模によって大きく異なる可能性があります。例えば、小規模企業では管理職の役割が限定的である一方、大規模企業では役割の分業や階層構造が進んでいるなど、管理職を取り巻く環境には違いがあります。こうした違いが、管理職に対する意向にどのように表れているのかを見ていきます。

 

従業員規模別に見ると、いずれの規模においても管理職意向が高いとは言い難いものの、その分布には一定の差が見られます。小規模企業(〜99人)および中規模企業(100〜999人)では、「なりたくない」がそれぞれ58.3%、55.5%と過半数を占めており、管理職に対する消極的な姿勢が顕著です。一方で、大規模企業(1,000人以上)では「なりたくない」は45.4%と相対的に低く、「どちらかと言えばなりたい」「なりたい」を合わせた割合も他の規模より高い結果となっています。
 
こうした結果は、企業規模が大きいほど「管理職の役割やキャリアパスが可視化されやすく、管理職への見通しを持ちやすい」「管理職に対してのサポートが充実している」といった就業環境の要因、あるいはそうした環境を志向する人が集まりやすいことなどが影響している可能性を示唆しています。ただし、大規模企業においても管理職志向が多数派となっているわけではなく、企業規模にかかわらず管理職忌避が広く存在している点には留意が必要です。

「管理職になりうる立場」の認識と管理職意向

最後に、一般社員の中でも、将来的に管理職になりうる制度上のコースに属しているか否かという違いに着目し、管理職志向の分布を確認します。
本調査では、一般社員を「現在は管理職ではないが、将来的に管理職になりうるコースにいる者(以下、管理職コース内の一般社員)」と、「管理職ではなく、将来的に管理職になることはないコースにいる者(以下、管理職コース外の一般社員)」に区分しています。ここでいうコースの違いは、企業・組織における人事制度上の位置づけをもとに、回答者自身が認識している区分です。

 

「なりたくない/なりたい」を0/1で二値データとして扱い、t検定を行ったところ、二群の差は統計的に有意であった(p<0.01)

管理職コース内の一般社員では、「なりたい」「どちらかと言えばなりたい」と回答した割合が31.5%となっている一方、管理職コース外の一般社員では同割合は11.3%にとどまっています。特に、管理職コース外では「なりたくない」が63.3%と高く、管理職に対する明確な消極姿勢が見られます。この結果は一見すると自明にも思えますが、管理職意向が一様な一般社員の特性ではなく、そもそも本人が「将来的に管理職になりうる立場にある」と認識しているかどうかによって、大きく異なる可能性を示しています。
 
管理職意向を問う調査の多くでは、一般社員を一括りにして分析が行われることが少なくありません。しかし本結果を見る限り、管理職になりうるコースに属しているかどうかという前提条件を考慮せずに集計した場合、管理職志向の分布を実態よりも単純化して捉えてしまう可能性があります。もっとも、本調査においても、制度上は管理職になりうるコースに属していても、本人がその自覚を十分に持っていないケースや、将来的なキャリアを具体的に想定していないケースが含まれている可能性は否定できません。この点は、本調査の限界の一つと言えるでしょう。
 
とはいえ、管理職になりうる立場であるという前提を踏まえても、管理職意向が3割程度にとどまっている点は、管理職志向の低さが単なる認識の違いだけでは説明しきれない可能性を示しています。管理職意向を削いでいるものは何か、あるいは意向を押し上げるものは何か、次の記事で考察していきます。

本記事のまとめ

本記事では、一般社員における管理職意向の全体像を確認した上で、その分布がどのような属性によって異なるのかを整理してきました。

  • •一般社員における管理職意向は全体として低く、「なりたい」「どちらかと言えばなりたい」と回答した割合は2割に満たなかった
  • • 年代別に見ると、特に20・30代の若手世代において管理職意向が著しく低く、将来的な管理職人材の確保という観点から看過できない状況が示唆された
  • • 企業規模別では、大規模企業において相対的に管理職意向が高い傾向が見られたものの、いずれの規模においても管理職志向が多数派となる状況には至っていない
  • • 一般社員を「将来的に管理職になりうるコースにいるか否か」で分けて見ると、管理職になりうる立場であると認識している層の方が管理職意向は高かった
  • • ただし、管理職になりうる立場であるという前提を踏まえても、管理職意向があるのは3割程度にとどまっており、管理職忌避は単純な認識の問題だけでは説明しきれない可能性が示された

 
本記事の結果から、管理職になりうる立場であると認識していることが、管理職意向と一定の関係を持つことが示されました。この点は、管理職意向を考える上で重要な前提条件の一つと言えるでしょう。
一方で、実際の職場に目を向けると、総合職以外のコースであっても制度上は管理職になりうる場合や、途中で管理職になりうるコースへ移行できる仕組みが用意されているケースも少なくありません。それにもかかわらず、前例の少なさや周囲の思い込みによって、「自分は管理職にはなり得ない」と捉えられている状況があるとすれば、それは個人にとっても、組織にとっても、可能性が十分に活かされていない状態だと言えるでしょう。
もっとも、本記事が示しているのは、管理職になりうる立場であるという認識さえあれば、管理職意向が自動的に高まるという単純な構図ではありません。管理職意向がどのような経験や就業環境のもとで形成され、あるいは削がれていくのかを理解することが、今後の管理職人材の確保や育成を考える上で、より重要な論点となります。
次回の記事では、管理職意向を押し上げる要因、あるいは削ぐ要因について、さらに掘り下げて考察していきます。

 

【インターネットサーベイ調査概要】

<実施詳細>

  • 配信:2025/3/24
  • サンプル回収数:1,000サンプル
  • 配信・回収条件
    年齢:20歳以上66歳未満
    性別:男女
    配信地域:全国
    対象条件:有業者(自由業を除く)

 

<設問と回答選択肢(今回調査)>
:あなたは、所属する会社・組織において「管理職(※)」ですか ※ここでいう管理職は、チームや部署などの組織に対して責任を持ち、組織の成果によって評価される部分がある立場の人を指します。労働基準法が定める「管理監督者」である必要はありません。
選択肢:1管理職であり、部下がいる/2管理職であるが、部下はいない/3管理職ではなく、将来的に管理職になることはないコースにいる/4現在管理職ではないが、将来的に管理職になりうるコースにいる/5管理職という立場がない/6その他[FA]
 
:管理職になりたいと思いますか(将来的になることはない方も、なれるとしたらと仮定して回答してください)
選択肢:1なりたい/2どちらかと言えばなりたい/3どちらかと言えばなりたくない/4なりたくない

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