タレントインテリジェンス総研調査レポートREPORT
応募者を惹きつける採用面接②:面接官ができる行動とは?|神戸大学客員准教授 岩本氏に聞く

要約
採用面接で選ばれる面接官になるには、社会心理学の「3つの基本的心理欲求」を満たす行動を実践し、応募者を主体的な入社決定へ導くことが不可欠です。
具体的には、共通点の提示や相槌で「関係性の欲求」、強みのフィードバックで「有能性の欲求」、ロールモデルの提示や誠実な情報開示で「自律性の欲求」を満たす行動を実践することで、応募者に納得感を与え選ばれる面接官になることができます。
さらに、無意識の威圧的な姿勢や選択の強要といったNG行動を防ぎ、応募者の内定辞退を抑える実践的な面接ノウハウを学ぶことができます。
目次
- 概要
- プロフィール
- 類似点の強調や相槌の使い分けが、応募者の「関係性の欲求」を満たす
- 応募者の良さを言語化して伝えることが、応募者の「有能性の欲求」を満たす
- ロールモデルの提示と誠実な現実開示が、応募者の「自律性の欲求」を満たす
概要
第1回【気づき編】では、応募者が面接官の態度から企業全体の印象と受け取る「シグナリング理論」の存在、および応募者の意思決定を支える「3つの基本的心理欲求(関係性・有能性・自律性)」を紹介しました。
第2回である【行動編】では、その心理学的メカニズムを踏まえ、面接官は明日から具体的に何をすべきなのかという実践に焦点を当てます。岩本慧悟先生が数多くの実データ分析と心理学研究から導き出した、すぐに実践できる具体的アプローチの数々をご紹介します。
プロフィール
岩本 慧悟(いわもと けいご)氏
神戸大学大学院経営学研究科 エントリー・マネジメント研究教育センター
客員准教授/株式会社ZENKIGEN 主任研究員
略歴:
ディップ株式会社でデータアナリストを経て、パーソル総合研究所、カオナビHRテクノロジー総研の研究員を歴任。
現在は、採用DXサービス「harutaka」を提供するZENKIGENの主任研究員、採用・オンボーディングを研究する神戸大学大学院経営学研究科エントリー・マネジメント研究教育センターの客員准教授。
専門:
社会心理学、産業・組織心理学、組織行動論
主な著書:
『実践ピープルアナリティクス 人材と組織を理解するための道具箱』(共著)、『日本的ジョブ型雇用』(分担執筆)、『未来思考の心理学』(分担翻訳)ほか
※本インタビューの研究成果は、ZENKIGENと神戸大学との共同研究に基づくものです。
類似点の強調や相槌の使い分けが、応募者の「関係性の欲求」を満たす
ーー面接での「惹きつけ」において、面接官が理解したい考え方として「3つの基本的心理欲求」を教えていただきました。心理欲求を満たすための具体的なアプローチ方法をお伺いできますでしょうか。
まずは、「関係性の欲求」からお願いします。
簡単に実施できるのは、アイスブレイクにおける”類似点(共通点)の強調”です。コミュニケーション研究において、特に関係初期は、自分と似た特徴のある相手に惹かれるという類似性効果が実証されています。
面接場面なら例えば、事前に履歴書やエントリーシートを読み込み、学業・部活動・趣味といった自分との共通の類似点を1つだけ見つけておきます。そして、冒頭で『履歴書を拝見したのですが、学生時代にサッカーをされていたのですね。実は私もずっとサッカーをやっておりまして、共通点があって非常に嬉しくなりました』と一言伝えるだけで、だいぶ親しみやすさを感じてもらえます。特に面接の序盤は応募者も緊張してますから、早めに話しやすい空気を感じてもらう上でも有効かと思います。
また、相槌も関係性の欲求を満たす上で欠かせないですね。心理カウンセリングの実践知にも、相槌のパターンを複数持っておくという「7色の相槌」というテクニックがあるようです。実際に採用面接の動画を分析してみても、やはり、相槌のレパートリーが豊富な面接官ほど、応募者の内定承諾率が有意に高いというパターンが確認できました。
毎回『なるほど』『なるほど』と1パターンの同じ相槌を機械的に繰り返していると、応募者は『本当に話をきいているのかな?』と不信感を抱きます。これを『なるほど』『そうですね』『ああ、それは素晴らしい』『確かにその通りですね!』など、いくつかのレパートリーとして持っておくと良いのですが、相手に合わせてその場で反応を変えるのはなかなか難しいですよね。ただ、そこを意識しないでいると、つい『なるほど』『なるほど』とワンパターンな相槌になってしまい、相手を不安にさせてしまいます。なので、7色とまではいかなくても、まずは自分が普段使いがちな相槌に、2パターンくらい別の相槌を用意しておき、それも使うようにするのでも十分だと思います。
ーー相槌の多さそのものではなく、いくつかレパートリーを持っておくことが大切なんですね。
逆に、良かれと思って行っていることで、関係性を阻害してしまうNG行動はありますか。
距離を縮めようとして、面接の最初からタメ口やフランクすぎる言葉遣いで話しかけてしまうことですね。応募者からすると『社会人として、一人の人間として対等に扱われていない』と強烈に不快に感じられるためNGです。内定や選考辞退した面接を思い出してもらうインタビュー調査をしても、結構な頻度でこういった声は出てきます。また、相手をしっかり見ようとして目を凝視し続けることも威圧感を与えてしまいます。手元の資料に目を落とすなど、適度に視線を外してあげる配慮が大切です。

ーーここ数年はオンライン面接も多いと思いますが、オンライン面接ならではのテクニックや押さえておきたいポイントはありますか。
最も簡単ですぐ真似できるのはカメラの位置調整です。ノートパソコンをそのまま机に置くと目線が低くなり見下ろす画角になります。ノートパソコンの下に本を5冊ほど積み重ねて、目線とカメラの高さを水平に合わせるだけでも、見下されているような威圧感を与えにくいです。
他にも、ずば抜けて内定承諾率の高い面接官の方の工夫を調査してみると、
- 柔らかい暖色系の色の服を着用する
- できるだけ柔らかそうな素材のセーターを着用する
- 背景を会議室の白い壁ではなく、観葉植物の緑が見えるようにセットアップする
といったテクニックを伺うこともあります。
応募者の良さを言語化して伝えることが、応募者の「有能性の欲求」を満たす
ーーでは応募者の「有能性の欲求」を満たす、具体的なアプローチ方法を教えてください。
応募者がアピールされたことを素直に『それはすごい取り組みですね』と賞賛することが大切です。より効果的なのは、応募者が気づいていないアピールポイントや客観的な良さを、面接官のプロの視点から言語化してフィードバックしてあげることです。『今日の30分だけのお話ではありますが、あなたとこの話とこの話を掛け合わせると非常に客観的なロジックを大事にしながらも、現場の人の感情に寄り添う、思わずなんでも話しちゃうような素晴らしい雰囲気を持っていますね。』など、応募者が『自分のことを見てくれて、深く理解して評価してくれた』と感じられる言葉をそのまま伝えるアプローチが、有能性の欲求を強烈に満たします。
ーー逆に、有能性の欲求を阻害するNG行動は?
良かれと思って、アドバイスや指摘を面接中に一方的に行ってしまうことは有能性の欲求を傷つけるためNGです。伝えるタイミングや意図が不適切だと『自分は否定された』という最悪の印象だけが残ります。
ロールモデルの提示と誠実な現実開示が、応募者の「自律性の欲求」を満たす
ーー「自律性の欲求」を満たす、具体的なアプローチも教えてください。
大きく分けて3つのアプローチがあります。
1つ目は、キャリアのイメージや選択肢を”なんとなく一緒に見ていく”というフラットなスタンスをとることです。『この会社は自分を活かせそうだし、進む道を自分でその都度決めていける、納得して自分の価値観に沿って進んでいけるんだな。』と候補者に感じてもらえるような関わり方を指します。
2つ目は、単なる自社の制度の紹介にとどまらず、具体的なロールモデルを提示することです。あなたがそういう志向性を持っているなら、例えば『去年や3年前に入った新卒メンバーで似たような人がいて、その人は今こんな風に社内でキャリアを作っているよ。』と伝えます。自分がやりたいことや大事にしているものを、仕事の中でどうやって実現できるのか、イメージを具体化していきます。
3つ目は、選考の中盤から後半のタイミングにかけて、入社後に直面する厳しいハードルや泥臭い現実を誠実に開示することです。良い情報だけでなく『最初の1年間は地味なデータ処理や厳しい数値目標といったハードルに直面するが、私たちはそこをこうサポートする。この壁についてはどう思うか。』と投げかけます。本人が実際にそこで働いている姿が、頭の中でリアルに想像できるレベルまで情報を伝えることで、納得感のある意思決定(自律的な選択)を促すことができます。
ーー逆に、自律性の欲求を阻害するNG行動は?
最もNGなのは、内定時や面接の最後の場面などで非常によく見られる、『内定を出したら、他社の選考をすべて今すぐ断ってくれますか?』と迫り、相手の選択肢や自由を無理やり制約するアプローチです。人間は、自分の選択の自由を制限されることを非常に嫌います。相手の選択肢を強引に狭めようとした瞬間に、心理学で言う「心理的リアクタンス(反発)」が急激に起きるため、『この会社には絶対に入りたくない』と、辞退を決定づける壊滅的な逆効果をもたらしてしまいます。
また、対話の中で『こうやって仕事しなきゃいけないよね。』などと価値観を強く押し付けることも避けるべきです。相手の自由なところを、わざわざ制約しなくていい部分まで制約するような話し方になっていないか、面接官は常に注意を払う必要があります。
表1:応募者の心理欲求を満たす・阻害する言動例
| 基本的心理欲求 | 満たす言動 | 阻害する言動 |
|---|---|---|
| ①関係性の欲求 |
|
|
| ②有能性の欲求 |
|
|
| ③自律性の欲求 |
|
|
第3回【定着編】では、1日の後半に面接官の思考力を奪う「集中疲れへの対策」や、「構造化面接」についてお伺いしています。
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