タレントインテリジェンス総研調査レポートREPORT

2026.09.30
調査

【人事担当者500名調査②】入社前データの共有、経歴は6割・面接評価と価値観は4割止まり–活用不足を共有・引き継ぎ状況から紐解く


要約

本記事は、従業員100名以上の企業に所属する人事担当者500名を対象に実施した「入社前データの活用実態調査」の第2回【共有・引き継ぎ編】です。
 
調査の結果、採用過程で得た入社前データを、配属先へ「十分に共有・引き継ぎされている」と回答した人事担当者は3割台となり、従業員規模が小さくなるほど、その割合は低くなる傾向がみられました。また、入社前データのうち、「経歴・基本情報」は配属先へ十分な共有・引き継ぎされている割合が相対的に高かったものの、「面接評価」や「価値観」等は十分な共有・引き継ぎされている割合が相対的に低く、情報の種類によって差があることがわかりました。

読了目安時間

5分程度

目次

概要

企業の採用活動においては、経歴や面接評価、適性検査の結果、本人の志向性など、候補者に関する実に多様な「入社前データ」が蓄積されます。第1回【記録・保存編】では、入社前データの「記録・保存」状況について調査し、人事担当者の7割超が入社前データを体系的に記録・保存している実態が明らかになりました。一方で、蓄積された入社前データがその後どの程度、配属先へ共有・引き継がれているのかについては、第1回では明らかになっていません。
 
全3回シリーズの第2回となる本記事では、この「共有・引き継ぎ状況」に着目し、従業員規模や情報種別による違い、共有・引き継ぎがされていない理由、そして人事担当者自身の共有・引き継ぎすべきかどうかの認識を明らかにします。
 

  • サーベイ対象:従業員100名以上の企業に勤務する人事担当者500名
  • サーベイ期間:2026年7月10日(金)~2026年7月17日(金)
  • サーベイ内容:Web上で入社前データの共有・引き継ぎ状況についての質問項目に選択・記述式で回答
  • 結果の集計・分析:回答結果を集計し、差異や傾向を抽出(回答の構成比は小数第2位を四捨五入しているため、合計は必ずしも100%にはなりません。そのため、グラフ上に表示される構成比での計算結果は、実際の計算結果とずれが生じる場合があります)

 

入社前データの配属先への「十分」な共有は34.6%、従業員規模が小さいほど割合は低下

入社前データの配属先への共有・引き継ぎ状況を尋ねました。

 

図1:入社前データの配属先への共有・引き継ぎ状況

入社前データの配属先への共有・引き継ぎ状況

Q. 採用過程で得た入社前データ(経歴・面接評価・適性検査・志向等)は、入社後に配属先マネージャーやオンボーディング担当へ共有・引き継ぎされていますか。

回答者数:全体(n=500)

 
「十分に共有・引き継ぎされている」が34.6%、「部分的に共有・引き継ぎされている」が48.8%、「共有・引き継ぎされていない」が16.6%となりました。
 
部分的な共有・引き継ぎも含めると、人事担当者の8割超が入社前データを配属先へ共有・引き継ぎされているものの、十分な共有・引き継ぎにいたっている割合は3割超となりました。
 
従業員規模別での結果は以下です。規模については以下のように区分しています。
 

  • 従業員数1,000名以上:大規模
  • 従業員数500~1,000名未満:中規模
  • 従業員数100~500名未満:小規模

※カッコ内の数値は回答者数(以降の図も同様)
 

図1_1:入社前データの配属先への共有・引き継ぎ状況(従業員規模別)

入社前データの配属先への共有・引き継ぎ状況

Q. 採用過程で得た入社前データ(経歴・面接評価・適性検査・志向等)は、入社後に配属先マネージャーやオンボーディング担当へ共有・引き継ぎされていますか。

回答者数:全体(n=500)

従業員規模別にみると、「十分に共有・引き継ぎされている」の割合は、大規模企業で41.7%、中規模企業で31.9%、小規模企業で27.1%と、規模が小さくなるにつれて段階的に低下する傾向がみられます。
反対に、「共有・引き継ぎされていない」の割合は大規模企業(14.5%)から小規模企業(19.9%)にかけて徐々に高くなっており、小規模企業が最も高い値を示しました。
 
この従業員規模による差の背景には、どのような要因があるのでしょうか。
第1回【記録・保存編】では「大規模企業ほど入社前データを体系的に記録・保存している」という傾向が明らかになっています。そこで、記録・保存の体系化度合いが共有・引き継ぎ状況にも影響しているのか確認したところ、入社前データが体系的に記録・保存されているほど、配属先への共有・引き継ぎがされている傾向がわかりました。

 

図1_2:入社前データの記録・保存状況 × 共有・引き継ぎ状況

入社前データの記録・保存状況 × 共有・引き継ぎ状況

Q. 採用過程で得た入社前データ(経歴・面接評価・適性検査・志向等)は、全社として体系的に記録・保存されていますか。
Q. 採用過程で得た入社前データ(経歴・面接評価・適性検査・志向等)は、入社後に配属先マネージャーやオンボーディング担当へ共有・引き継ぎされていますか。

回答者数:全体(n=500)

  • 体系的に記録・保存されている層:「十分に共有されている」割合が最も高い傾向にあります。しかし、それでも「十分」な共有は61.4%で、3割強(34.0%)は「部分的」な共有となっています。記録・保存が体系的であっても、共有・引き継ぎまで十分に行うにはハードルがあることがわかります。
  • ある程度体系的に記録・保存されている層:「部分的な共有」が70.1%と大部分を占めており、「十分な共有(22.9%)」との間には大きな壁が存在します。記録・保存の体系化が「ある程度」の段階に留まっている分、共有も「部分的」なところで留まってしまうのかもしれません。
  • 記録・保存されていない層:82.6%が「共有・引き継ぎされていない」という結果になりました。

 
記録・保存の体系化度合いが高いほど「十分な共有」に近づく傾向は確かにあるものの、体系的に記録・保存されている層でも「十分な共有」は61.4%に留まり、約4割は部分的・未共有の状態であることから、記録・保存の体系化だけでは十分な共有・引き継ぎまでは直結しないことも浮かび上がりました。

入社前データのうち、「経歴・基本情報」が最も共有・引き継ぎされている

次に、前章で入社前データを配属先に「十分に共有・引き継ぎされている」「部分的に共有・引き継ぎされている」と回答した417名に、5つの情報について、配属先へどの程度共有・引き継ぎされているかを尋ねました。
 

図2:入社前データの配属先への共有・引き継ぎ状況(情報別)

入社前データの配属先への共有・引き継ぎ状況

Q. 採用過程で得た各情報は、入社後に配属先マネージャーやオンボーディング担当へどの程度、共有・引き継ぎされていますか。

回答者数:入社前データが配属先に「十分に共有・引き継ぎされている」「部分的に共有・引き継ぎされている」と回答した人のみ(n=417)

 
「十分に共有・引き継ぎされている」と回答した割合が最も高かったのは「経歴・基本情報」で59.2%でした。次いで「スキル・専門性・実務実績(50.8%)」「適性検査・アセスメント結果(46.3%)」「価値観・キャリア志向・志望動機(43.4%)」「面接・面談での評価・所見(41.0%)」と続いています。
 
このうち、「面接・面談での評価・所見」と「価値観・キャリア志向・志望動機」の2項目は、「十分に共有」よりも「部分的に共有」の割合が高くなっています。特に「面接・面談での評価・所見」は、「部分的に共有」が49.9%と約半数を占めており、他の項目と比べて”十分な”共有・引き継ぎまでには至っていないケースが多いことがうかがえます。
 
また、「共有・引き継ぎされていない」の割合をみると、「適性検査・アセスメント結果」が10.1%と5項目の中で最も高く、共有・引き継ぎが行われていないケースが相対的に多いことがわかりました。
記録・保存状況と同様に、入社前データは情報の種類によって共有・引き継ぎの程度が異なり、一様に引き継がれているわけではないことがわかります。

入社前データの共有・引き継ぎが進まない理由は、「個人情報保護への配慮」が最多

入社前データの配属先への共有・引き継ぎが部分共有・未共有の背景には、どのような理由があるのでしょうか。複数回答と、その中で最もあてはまるものを1つ選ぶ単一回答の二通りの形式で聴取を行いました。

 

図3:入社前データが配属先へ共有・引き継ぎされていない(または部分的)理由

入社前データが配属先へ共有・引き継ぎされていない(または部分的)理由

Q. 入社前データ(経歴・面接評価・適性検査・志向等)が、配属先マネージャーやオンボーディング担当へ共有・引き継ぎされていない(または部分的な)理由を教えてください。また、その中で最もあてはまるものを教えてください。

回答者数:入社前データが「部分的に共有・引き継ぎされている」「共有・引き継ぎされていない」と回答した人のみ(n=327)

 
複数回答で最も多かったのは「個人情報保護の観点による、現場への開示制限」52.3%でした。次いで、「開示範囲(誰にどこまで見せるか)の基準が未整備(49.2%)」「入社前データの引き継ぎ先・共有場所が不明瞭(44.3%)」と続きます。
 
最もあてはまる理由では、「個人情報保護による開示制限」が27.8%で最も高い結果となりました。ただし、「開示範囲の基準が未整備(22.6%)」「共有場所が不明瞭(21.1%)」も僅差で続いており、突出した項目とまでは言えない結果となっています。上位3項目の差は数ポイントに留まっており、単一の要因に絞り込めるものではないことがわかります。

人事担当者の8割超が、入社前データは「共有・引き継ぎされるべき」と回答

個人情報の保護や運用上の理由から共有に制限がかかる現状に対し、人事担当者自身は「配属先への情報共有」をどう捉えているのかを確認しました。

 

図4:入社前データの配属先への共有・引き継ぎへの認識

入社前データの配属先への共有・引き継ぎへの認識

Q. 入社前データ(経歴・面接評価・適性検査・志向等)において、配属先マネージャーやオンボーディング担当へ、共有・引継がなくても良い情報を教えてください。

回答者数:全体(n=500)

各情報について、「共有・引き継ぎされるべき」「できれば共有・引き継ぎされるべき」といった認識を尋ねたところ、5つの情報全てで肯定的な回答が8割を超えました。
 
一方、「共有・引き継ぎされるべき」と明確に回答した割合をみると、「経歴・基本情報」「スキル・専門性・実務実績」は59.4%と半数を超えているものの、「適性検査・アセスメント結果(46.8%)」「面接・面談での評価・所見(46.6%)」「価値観・キャリア志向・志望動機(48.4%)」の3項目は半数未満に留まっています。入社前データの共有・引き継ぎには全体として肯定的である一方、情報の種類によって「積極的に共有すべき」と考える度合いには差があることがうかがえます。
 
なお、「共有・引き継ぎされるべき」という認識が相対的に低い3項目(適性検査・面接評価・価値観)は、前章で紹介した実際の共有・引き継ぎ状況でも低水準だった項目と一致しており、必要性の認識と実態の双方に同様の傾向が見られました。

入社前データを配属先へ共有・引き継ぎされなくてよいと考える理由は、「先入観・偏見につながるリスク」が最多

前章で、5つの情報のうち一つでも共有・引き継ぎされてなくても良いと回答した132名に、理由を尋ねました。

 

図5:入社前データを配属先へ共有・引き継がなくても良いと考える理由

入社前データを配属先へ共有・引き継がなくても良いと考える理由

Q. 配属先マネージャーやオンボーディング担当へ、共有・引き継がなくてもよいと考える理由はどのような点にありますか。当てはまる背景や目的を全て選んでください。

回答者数:入社前データが配属先へ「共有・引き継ぎされなくてもよい」と回答した人のみ(n=132)

「先入観・偏見につながるリスク(53.8%)」「個人情報保護への配慮(49.2%)」が上位2項目となり、3位の「現場でのデータの取り扱い・管理の困難さ(28.0%)」に20pt以上の差をつけました。
 
上位2項目の内容を見ると、「先入観・偏見につながるリスク」と「個人情報保護への配慮」という、性質の異なる2つの慎重姿勢が並んでいることがわかります。前者は、不用意な情報開示が現場の評価や育成にバイアスを生みかねないという運用上のリスク懸念、後者はコンプライアンス・情報管理上の配慮という見方ができます。
 
前章では、5つの情報のうち「適性検査・アセスメント結果」「面接・面談での評価・所見」「価値観・キャリア志向・志望動機」の3項目が、相対的に十分な共有・引き継ぎが進んでいないことがわかりました。そして本章では、共有・引き継ぎしなくてもよいと考える理由として「先入観・偏見」や「個人情報保護」への懸念が上位に挙がりました。これらの懸念がどの情報を念頭に置いたものかは調査上特定できないため、両者を直接結びつけることはできませんが、入社前データの配属先への”共有・引き継ぎの実態”と、”共有・引き継ぎへの慎重な意識”の双方に、共通の課題が存在する可能性があるかもしれません。
 
とはいえ、「現場への情報開示の必要性を感じていない」という声自体は22%と少数派であり、3項目についても「共有・引き継ぎされるべき」との肯定的な回答が前章で半数近くに達していました。
 
慎重な扱いを求める声がある一方で、共有・引き継ぎ自体を否定する意見が多数派というわけではなく、多くの人事担当者は共有そのものには前向きだといえます。それでも部分的な共有に留まっている背景に、先入観・偏見や個人情報保護へのリスクが影響しているのであれば、①誰がどこまで閲覧できるかという開示範囲・権限を事前に明文化すること、②評価目的ではなく育成・オンボーディング支援を目的とした活用に限定すること、③そうした方針を配属先等へ周知・教育すること、といった工夫により、これらの懸念を軽減しながら十分な共有・引き継ぎへの移行を後押しできると考えられます。

まとめ

入社前データの配属先への「共有・引き継ぎ」状況から、以下が明らかになりました。
 

共有・引き継ぎ状況

  • 十分な共有・引き継ぎは34.6%に留まる(部分的な共有を含めると8割超)
  • 企業規模が小さいほど「十分な共有」は減少(大規模企業41.7% → 小規模企業27.1%)
  • 記録・保存が体系化されているほど、共有・引き継ぎも進みやすい傾向
  • 情報の種類でも差があり、「適性検査」「面接評価」「価値観」の3項目は相対的に低水準

共有・引き継ぎが進まない理由

  • 最多は「個人情報保護への配慮(52.3%)」。ただし「開示基準の未整備(49.2%)」「共有場所の不明瞭さ(44.3%)」も僅差で、単一要因とは言えない

人事担当者の認識

  • 「共有・引き継ぎされるべき」との肯定的な回答は5項目全てで8割超
  • 一方、「共有しなくてもよい」と考える理由は「先入観・偏見のリスク(53.8%)」が最多。次いで「個人情報保護(49.2%)」
  • 共有・引き継ぎ自体を否定する意見が多数派というわけではないことから、開示範囲の明文化や活用目的の限定といった運用面の工夫により、慎重な意見を持つ人事担当者の懸念を軽減しながら、十分な共有・引き継ぎへの移行の後押しができる可能性がある

 
第3回【活用編】では、入社前データが実際に活用されているのかの実態に迫ります。

 
 


 

 

【インターネットサーベイ調査概要】

<実施詳細>

  • 配信:2026/7/10
  • サンプル回収数:500サンプル
  • 配信・回収条件
    年齢:23歳以上70歳未満
    性別:男女
    配信地域:全国
    対象条件:従業員100名以上の企業に勤務する人事担当者

 

<設問と回答選択肢>
問:採用過程で得た入社前データ(経歴・面接評価・適性検査・志向等)は、入社後に配属先マネージャーやオンボーディング担当へ共有・引継ぎされていますか。(SA)
選択肢:十分に共有・引継ぎされている(ほぼ全ての情報)/部分的に共有・引継ぎされている(一部の情報のみ)/共有・引継ぎされていない

 
問:採用過程で得た入社前データ(経歴・面接評価・適性検査・志向等)は、全社として体系的に記録・保存されていますか。(SA)
選択肢:体系的に記録・保存されている/ある程度体系的に記録・保存されている/担当レベルで記録・保存されている(体系化はされていない)/記録・保存はされていない

 
問:採用過程で得た以下の各情報は、入社後に配属先マネージャーやオンボーディング担当へどの程度、共有・引継ぎされていますか。(SA)
項目(表側):経歴・基本情報/スキル・専門性・実務実績/適性検査・アセスメント結果/面接・面談での評価・所見/価値観・キャリア志向・志望動機
選択肢(表頭):十分に共有・引継ぎされている(ほぼ全ての情報)/部分的に共有・引継ぎされている(一部の情報のみ)/共有・引継ぎされていない

 
問:入社前データ(経歴・面接評価・適性検査・志向等)が、配属先マネージャーやオンボーディング担当へ共有・引継ぎされていない(または部分的な)理由を教えてください。また、その中で最もあてはまるものを教えてください。(MASA)
項目(表頭):あてはまるもの/最もあてはまるもの
選択肢(表側):個人情報保護の観点による、現場への開示制限/開示範囲(誰にどこまで見せるか)の基準が未整備/入社前データの引継ぎ先・共有場所が不明瞭(例:採用部門と現場でデータ管理が分断)/採用部門・現場側における引き継ぎの優先度の低さ/現場へ先入観を持たせたくない/その他

 
問:入社前データ(経歴・面接評価・適性検査・志向等)において、配属先マネージャーやオンボーディング担当へ、共有・引継がなくても良い情報を教えてください。(SA)
項目(表側):経歴・基本情報/スキル・専門性・実務実績/適性検査・アセスメント結果/面接・面談での評価・所見/価値観・キャリア志向・志望動機
選択肢(表頭):共有・引継ぎされるべき/できれば共有・引継ぎされるべき/共有・引継ぎされなくてもよい

 
問:前問で回答した項目について、配属先マネージャーやオンボーディング担当へ、共有・引き継がなくてもよいと考える理由はどのような点にありますか。当てはまる背景や目的を全て選んでください。(MA)
選択肢:個人情報保護への配慮/現場でのデータの取り扱い・管理の困難さ/先入観・偏見につながるリスク/現場への情報開示の必要性を感じていない/その他


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