カオナビHRテクノロジー総研調査レポートREPORT

2019.10.15
調査

知っておきたい、人事評価の3つの現実
~人事評価に関する調査結果より~

サーベイの背景

社員にとって人事評価は、昇給や昇格に繋がる一大イベントです。同様に企業にとっても、給与、ポジションといった経営資源の配分に関わる重要な意思決定です。人事評価をキチンと行うことは、生産性や幸福感とも関連する社会的テーマと言えるでしょう。
そこで今回は、人事評価の満足度や不満の原因について、アンケートによる調査を行いました。

サーベイの内容

今回は以下の要領にてインターネットを用いたサーベイを実施致しました

  • サーベイ対象:20代から60代の社会人、600名から回収 (部下がいるサンプル数は300)
  • サーベイ内容:Web上で職場についての質問項目に、選択・記述式で回答
  • 結果の集計・分析:回答結果を集計し、差異や傾向を抽出
    (レポート中にとりあげている2群の差異はt検定で有意を検出したものです)

調査結果①: 人事評価に満足している人は20%以下

※会社の人事評価結果について満足していますか。

※会社の人事評価結果について満足していますか。

人事評価に「満足している」人は20%もおらず、「満足していない」人の半数以下と非常に少数と言えます。人事評価の納得感向上は、改善余地の大きいテーマと言えそうです。

調査結果②: 人事評価に満足している人は、職場満足度が高い傾向

※会社の人事評価結果について満足していますか。
※現在の職場への満足度はどの程度ですか。
※会社の人事評価結果について満足していますか。
※現在の職場への満足度はどの程度ですか。

「人事評価に満足している」人の85%以上が「職場に満足している」と回答していました。一方で「人事評価に不満」な人は、17%程度しか「職場に満足している」と回答していません。人事評価と職場満足度には大きな関係性がありそうです。ただし、「人事評価の満足度を高める⇒職場満足度が高まる」という因果関係が明確な訳ではない点には注意が必要です。「職場満足度が高い⇒生産性向上⇒人事評価が高くなる⇒人事評価の満足度が高まる」という逆の因果関係も考えられますし、「優秀な(もしくは、困った)上司」という要素が人事評価満足、職場満足の双方に大きな影響を与えている可能性もあります。
ただし、本データと多くの人が感じる経験則を組み合わせると、人事評価の満足度が職場満足度に強く影響を与えることは確かそうです。

調査結果③: 不満点は多岐にわたっている

※会社の人事評価について「あまり満足していない、全く満足していない」と答えた方にお伺いします。人事評価結果のどの点が不満ですか。あてはまるものにチェックしてください。(3つまで)

※会社の人事評価について「あまり満足していない、全く満足していない」と答えた方にお伺いします。人事評価結果のどの点が不満ですか。あてはまるものにチェックしてください。(3つまで)

 
人事評価の不満点としては、「結果に納得感が無い」が55.9%と最も多く挙げられており、「評価者が信用できない」「理由に納得感が無い」「項目・目標設定が不適切」が全て40%弱に固まっています。何か突出したポイントが無いことから、上司の力量など別の要因が各設問に影響を与えているのかもしれません。
一方で「期中での状況変化が考慮されていない」は16%程度に留まっています。「ビジネスの変化が激しいため、目標設定がズレてしまう」という話は、多くのケースでは問題になっていないようです。

人事評価の満足度を高めるポイント

  • 人事評価に取り組む価値を認識する
    調査結果②に示したように、人事評価結果の満足度は職場満足と強い関係性が有りました。因果関係が証明出来ているわけではありませんが、人事評価の改善が、ある程度職場満足の向上に寄与することは間違いなさそうです。また、調査結果①に示したように人事評価に満足している人は少数に留まります。重要かつ伸びしろが大きいことから、人事評価は、取り組みがいのあるテーマと言えるでしょう。 
  •  

  • 人事評価の満足度を高めるためのヒント
    今回の調査結果から、人事評価の満足度を向上させるための答えを導出することは困難です。ここでは、データに基づいた推測と、近年の潮流から2つのヒントを挙げさせて頂きます。

    1. ミドル層の強化
      調査結果③の通り、人事評価への不満点は多岐に渡っており、対症療法的に個別の不満点に対処してもキリが無さそうです。全ての不満に共通するポイントとして「上司」が考えられ、ミドルのマネジメント能力向上が有効な対策となりそうです。従来から研修や、経営層による指導などが行われてきたテーマですが、近年は「1on1ミーティングをルール化し、部下の状況を把握する」「タレントマネジメントシステムを用いて部下の情報を把握する」などのように、制度やシステムを使ってマネジメント能力を補完する取り組みも行われています。
    2.  

    3. 給与と評価の分離
      「B評価なら3%昇給」のように、評価結果と給与の関係性が明確な企業も多いでしょう。その場合、日々の努力と給与の関係性が明確な反面で、給与原資のことを考えた結果、評価が歪んでしまうことも多々あります。そこで、給与と評価を分離させる取り組みが始まりつつあります(その場合は、市場価値や委員会での総合評価などで給与を決めることが多いようです)。給与と評価を分離することで、給与原資を気にせず、納得感に焦点を当てて、評価を行うことができますし、従来より多少インフレ気味(誉め言葉多め)に評価することもできます。
      「評価と給与の関係性が分からないとモチベーションに悪影響では?」との議論がもちろんあると思います。しかし、社会が豊かになり、金銭的な欲求よりも承認欲求の重要性が高まりつつあるのだとすれば、給与と評価を分離し、より承認欲求に焦点を当てる制度は、社会変化に沿っており、今後増えていくのかもしれません。

 
 

【インターネットサーベイ調査概要】

<実施詳細>

  • 配信:2018/12/17
  • サンプル回収数:600サンプル
  • 配信・回収条件
    年齢:20歳~69歳
    性別:男女
    配信地域:全国
    対象条件:取締役クラス~ 一般社員(正社員)の方

 
<設問と回答選択肢>

:現在の職場への満足度はどの程度ですか。
選択肢:非常に満足している/満足している/どちらでもない/あまり満足していない/全く満足していない
 
:会社の人事評価結果について満足していますか。

選択肢:非常に満足している/満足している/どちらでもない/あまり満足していない/全く満足していない
 
:前問で「あまり満足していない、全く満足していない」と答えた方にお伺いします。人事評価結果のどの点が不満ですか。あてはまるものにチェックしてください。(3つまで)
選択肢:評価項目・目標設定が不適切/期中で状況が変わったことが考慮されていない/評価者が信用できない/評価結果に納得感が無い/評価理由に納得感が無い/その他
 
<結果の集計における備考>
上記のうち5スケールで回答する設問については、「どちらでもない」を除いた4つの選択肢を肯定的と否定的な回答に2項目ずつまとめたうえで差異を比較している。
 

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