カオナビHRテクノロジー総研調査レポートREPORT
リモートワーカーは何を感じている?
~リモートワーク実態調査レポート2~
サーベイの背景
新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、テレワーク、在宅勤務、リモートワーク等の「出社をしない」働き方(以降、すべての働き方を含めて「リモートワーク」とします)を始めた方も多いのではないでしょうか。HRテクノロジー総研では、リモートワーク実態調査を実施しました。現在リモートワークを実際にしている人の声から、リモートワークの「今」と「未来」を見ていきたいと思います。今回は「リモートワーカーは何を感じているのか」に焦点を当てます。
サーベイの内容
今回は以下の要領にてインターネットを用いたサーベイを実施致しました
- サーベイ対象:20代~60代の自由業を除く、かつ従業員数10名以上の会社に勤めている「毎日リモートワーク」もしくは「週に2~3日出社し、その他はリモートワーク」をしている人 300名
- サーベイ期間:2020年5月1日(金)~2020年5月7日(木)
- サーベイ内容:Web上でリモートワークについての質問項目に、選択・記述式で回答
- 結果の集計・分析:回答結果を集計し、差異や傾向を抽出(レポート中にとりあげている2群の差異[図5および図6]はt検定で有意を検出したものです)
調査結果① 約半数がリモートワークは「働きやすい」と回答
リモートワーカーはどんなことを感じているのでしょうか?まずは「働きやすさ」を聞いてみました。
-
Q.現在の在宅勤務、テレワーク、リモートワーク等の「出社しない」働き方は、働きやすいですか。働きづらいですか。
「非常に働きやすい(13.7%)」「働きやすい(31.3%)」で合わせて「働きやすい派」は45.0%となっており、約半数の人たちはリモートワークの働きやすさを評価しています。翻って「働きづらい(19.7%)」「非常に働きづらい(6.0%)」で合わせて「働きづらい派」は25.7%、約4人に一人はリモートワークでは働きづらいと感じているようです。逆に言うと、3/4程度の人たちは働きづらいとは感じていない、ということです。新型コロナ感染症防止対策として急ごしらえでリモートワークが始まった会社も多いことを鑑みると、リモートワークという働き方は多くの人にとっては「働きやすい」と感じられるものだと言えそうです。
調査結果② 「生産性」の評価は、「働きやすさ」に比べてネガティブに
次に「生産性」の観点からは、どのように感じているでしょうか?
-
Q.現在の在宅勤務、テレワーク、リモートワーク等の「出社しない」働き方におけるご自身の生産性(業務のスピードや質)は、通常の勤務の時と比べてどうですか。
リモートワークでの自身の生産性については、通常の勤務の時と比べて「非常に上がった(3.0%)」「上がった(15.3%)」となっており、合わせて「生産性向上派」は18.3%です。反対に「下がった(22.7%)」「非常に下がった(10.3%)」で、合わせて「生産性低下派」は38.0%となっています。「働きやすさ」と比較すると、生産性に関してはネガティブに評価する人が多く、またポジティブな評価をする人も少ないようです。
調査結果③ リモートワークのメリットは、「時間のゆとり」「疲労感の軽減」「コミュニケーションストレスからの解放」
働きやすさ、生産性の他にも、リモートワークで感じるメリットや不満も聞いてみました。
※「特になし」「その他」の回答を除く
多くの人が「通勤・移動時間がなくなった」ことに起因した「時間のゆとり」「疲労感の軽減」を実感しているようです。一方で、「会議等の無駄なコミュニケーションが減った、もしくは減りそう」「人間関係のストレスから解放された」というコミュニケーション関連のメリットを感じる人も多数見られました。
調査結果④ リモートワークの不満の上位は「社内コミュニケーション不足」と「セルフマネジメントの難しさ」
※「特になし」「その他」の回答を除く
不満として上位に挙がったのは「社内の人とのコミュニケーションの取りづらさ」です。社内のコミュニケーションについては、会議等のフォーマルなコミュニケーション以上に「ちょっとした雑談・相談」といったカジュアルなコミュニケーションのしづらさを感じているようです。この点は「孤独感やさみしさを感じる」が上位に来ていないことから、情緒的な側面からくる不満ではなく、業務遂行上に支障をきたしていることが推測されます。また、メリットの方で「無駄なコミュニケーションの減少」「人間関係のストレスからの解放」を挙げている人が比較的多かったことから、「社内コミュニケーションの減少」を「有意義なコミュニケーションが減少した」と捉えるか、「不要なコミュニケーションが減少した」と捉えるかで、評価が二分されている様子も伺えます。
「仕事とプライベートの境が曖昧になる」「体調管理の難しさ」といった「セルフマネジメントがしづらい」ということも不満として挙がっています。通勤や移動時間が減ってゆとりは出来たが、そのゆとりの時間の使い方をセルフマネジメントする必要性がリモートワーク下では生まれるようです。今回の調査では「リモートワークをする上での個人的な工夫」を聞く設問もありましたが、「定期的な休憩をする」「体を動かす」「立って仕事をする」といった身体的な健康を保つ工夫や、「出勤時と同様の恰好で仕事をする」といった仕事とプライベートを区切る工夫をしている様子も見受けられ、そこからもセルフマネジメントの必要性が生まれていることが分かります。
調査結果⑤ リモートワークについての評価は、上司と部下でギャップあり
年代、性別、子供の有無、所属する会社規模等の回答者の属性によって、リモートワークに対しての実感に差があるのかも今回調べてみました。回答者の属性のうち、大きなギャップがあったのは「部下がいるか、いないか」でした。
働きやすさについては、部下あり群の方が「働きやすい派」が少なく、「働きづらい派」が多くなっています。つまりマネージャーはメンバーよりも、相対的に「働きづらい」と感じているようです。生産性については「生産性向上派」はわずかに部下あり群の方が多くなっていますが、同時に「生産性低下派」も部下なし群よりも部下あり群が高くなっています。生産性については、リモートワークによる変化がよくも悪くも大きいのがマネージャーである、ということができそうです。
また、リモートワークで感じる不満点も、上司と部下では差があるようです。
不満点の上位5つを図7は部下なし群、図8は部下あり群で抜粋しています。「社内の人とのちょっとした相談・雑談がしづらい」「仕事とプライベートの境が曖昧になる」「業務や仕事の進捗が分かりづらい」という3点は、どちらも上位にあがってきます。しかしながらその他の上位は、部下なし群の場合は「運動不足やストレスにより、自身の対象管理が難しい」「事務用品、印刷機、PC、Wi-Fi等の機器が使いづらい」となり、部下あり群の場合は「社内の人と会議やディスカッションがしづらい」「顧客や業者など社外の人とコミュニケーションが取りづらい」という点が挙がっています。全体として、部下なし群は「自分の業務がいかに効率的にできるか」に焦点があたり、部下あり群は「社内外でコミュニケーションをいかに円滑にとるか」に焦点があたっているように見受けられます。これらの傾向は、リモートワークにおける「マネジメントの難しさ」を物語っているようにも思えます。
リモートワークの「今」を考察する
今回の調査から見えてきたことを、因果関係は仮説にとどまりますが、考察します。
リモートワークは、ゆとりができて、特にメンバーにとっては「働きやすい」
- リモートワークは通勤や移動がなくなることで「時間、体力、心のゆとり」が生まれ、コミュニケーション関連のストレスが軽減されるため、おおむね「働きやすい」と感じる人が多い
- ただし、実は通勤や移動という行為によって、私たちは「仕事とプライベートに区別をつける」「体調管理」といったセルフマネジメントを促されていた側面もあった
リモートワークは、社内コミュニケーションが減少し、全体として「生産性が落ちる」
- リモートワークによる「社内コミュニケーションの減少」については、多くの人が業務遂行上の不満点として挙げている。特に「社内の人とのちょっとした相談・雑談がしづらい」ことは、約半数の人が不満に思っている
- ただし「無駄が減った」「人間関係のストレスから解放された」と捉えている人も少なくないため、良い点もある
- 「社内コミュニケーションの減少」は恐らく、業務遂行上の支障となり「生産性の低下」につながっている
リモートワークは、マネージャーにとっては「難しい」
- マネージャーには、リモートワークを「働きづらい」「生産性が落ちた」と評価する人が相対的に多い
- マネージャーにとって「個人の生産性」は自身の職務・業績の成否に直結するため、生産性低下の要因になっていそうな「コミュニケーションを円滑にとれない」ことが特有の不満としてあがってくる
リモートワークにおける「仕事とプライベートに区別をつける」「体調管理」といったセルフマネジメントの難しさについては、個人の工夫が求められるところではありますが、会社としても「少設問・高頻度」なパルスサーベイを用いて、社員の心身の状態を把握し、場合によっては「健康相談」「産業医」「メンタルヘルスサービス」等につなげていくということも、助けになるかもしれません。それらのサービスは新型コロナ感染症の影響で、一層オンライン化が進むことも想定できます。
さて、大きな懸念となるのはリモートワークにおける「個人の生産性の低下」、そして生産性も含めた「リモートワーク下でのマネジメントの困難さ」です。緊急事態宣言も解除され、通常の勤務に戻れるのだから問題ない、という見方もできるかと思いますが、多くの人がリモートワークの「働きやすさ」を実感した今、リモートワークを望む声は高まることが予想されます。また、その他の災害にも備える意味でも、BCP(事業継続計画)の一環として、少なくともリモートワークができる職種については、事前に想定をしておくことが重要でしょう。
多くの人が不満に上げた「社内の人とのちょっとした相談・雑談がしづらい」という点が、生産性低下の要因の一つになっていることは、恐らく間違いありません。こういった「非公式のコミュニケーション」をどうリモートワーク下で再現するか、これは重要な論点の一つです。ただし、これまでのオフィスにいるときのコミュニケーションには、多くの人が「無駄だ」と感じていたものもあったことは、考慮する必要があります。よって、リモートワーク下での「非公式のコミュニケーション」についての方策は、以下のように整理ができるでしょう。
- 非公式のコミュニケーションをオンラインで再現する:チャットツールに雑談を促す質問botを導入する、オンライン飲み会、など
- 非公式のコミュニケーションで済んでいたものを公式化する:業務進捗共有を高頻度な定例会議にする、OJTで教えていたことを研修やナレッジマネジメントツールで代替する、など
- コミュニケーションを取らなくともできる業務範囲を拡張する:ワークフローの整理とシステムの導入、役割や職務の整理とシステムの導入、など
次回の調査レポートでは、今後の課題やそのためのソリューションなど「リモートワークの未来」を考察します。
【インターネットサーベイ調査概要】
<実施詳細>
- 配信:2020/5/1
- サンプル回収数:300サンプル
- 配信・回収条件
年齢:20歳~69歳
性別:男女
配信地域:全国
対象条件:有業者(自由業を除く)のうち、従業員数10名以上の会社に勤める人のうち、現在「基本的に毎日、オフィスに出社して働いている」「週に2~3回程度オフィスに出社し、それ以外は出社せずに在宅勤務、テレワーク、リモートワーク等で働いている」のどちらかを選択した人
<設問と回答選択肢>
問:現在の在宅勤務、テレワーク、リモートワーク等の「出社しない」働き方は、働きやすいですか。働きづらいですか。
選択肢:非常に働きやすい/働きやすい/どちらでもない/働きづらい/非常に働きづらい
問:現在の在宅勤務、テレワーク、リモートワーク等の「出社しない」働き方におけるご自身の生産性(業務のスピードや質)は、通常の勤務の時と比べてどうですか。
選択肢:非常に上がった/上がった/特に変わらない/下がった/非常に下がった
問:在宅勤務、テレワーク、リモートワーク等の「出社しない」働き方で感じているメリットはありますか。(いくつでも)
選択肢:人間関係のストレスから解放された/会議等の無駄なコミュニケーションが減った、もしくは減りそう/オンラインでの情報共有や可視化が進んだ、もしくは進みそう/通勤時間がなくなり、時間のゆとりが持てるようになった/通勤や移動が減り、疲労が減った/集中できる作業環境となった/自分で決められることが増え、働き方の自由度が高まった/その他(自由記述)/特になし
問:現在の在宅勤務、テレワーク、リモートワーク等の「出社しない」働き方において、不満点はありますか。(いくつでも)
選択肢:社内の人とのちょっとした相談・雑談がしづらい/社内の人への仕事・タスクの依頼がしづらい/社内の人と会議やディスカッションがしづらい/顧客や業者など社外の人とコミュニケーションが取りづらい/業務や仕事の進捗がわかりづらい/互いの心身の状態がわかりづらい/事務用品、印刷機、PC、Wi-Fi等の機器が使いづらい/仕事とプライベートの境が曖昧になる/運動不足やストレスにより、自身の体調管理が難しい/業務に集中できない(音がうるさい、同居者との関係等)/孤独感やさみしさを感じる/その他(自由記述)/特になし
問:在宅勤務、テレワーク、リモートワーク等の「出社しない」働き方をする上で、個人的に工夫をしている点はありますか。工夫している点がある場合には具体的な内容をお答えください。
選択肢:個人的に工夫をしている(自由記述、任意回答)/特にない
<結果の集計における備考>
上記のうち5スケールで回答する設問については、「どちらでもない」を除いた4つの選択肢を肯定的と否定的な回答に2項目ずつまとめたうえで図表化、もしくは差異を比較している。
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