カオナビHRテクノロジー総研調査レポートREPORT

2026.03.24
調査

異動は会社主導のなか、従業員が最も考慮されていると感じるものとはー異動・配置制度の実態調査②


サーベイの背景

前回は異動・配置制度の実施状況についてご紹介し、以下の結果が得られました。
 
● 異動配置制度は、「希望聴取」「定期異動」「社内公募」の順に実施率が高く、企業規模が大きいほど各制度の実施率も上昇
● 定期異動がある企業では、6割超が転居を伴う異動ありと回答(規模が大きいほど増加)
● 転居を伴う異動がある層は、ない層と比べて意向確認・拒否権があると回答した人が多い傾向
 
今回は、異動の主導権がどこにあるのかを確認しつつ、実施率トップの「異動希望の聴取制度(自己申告)」が実際にどの程度反映されているかに迫ります。
異動は会社主導というのが一般的な認識ですが、そのなかで従業員はどのような要素が考慮されていると感じているのか、その実態をデータからひも解きます。

サーベイの概要

今回は以下の要領にてインターネットを用いたサーベイを実施致しました

  • サーベイ対象:20歳以上66歳未満の自由業を除く有業者1,000名
  • サーベイ期間:2025年3月24日(月)~2025年3月26日(水)
  • サーベイ内容:Web上で異動についての質問項目に、選択・記述式で回答
  • 結果の集計・分析:回答結果を集計し、差異や傾向を抽出(回答の構成比は小数第2位を四捨五入しているため、合計は必ずしも100%にはなりません。そのため、グラフ上に表示される構成比での計算結果は、実際の計算結果とずれが生じる場合があります)

異動の主導権は会社か従業員か

企業内の異動は制度の性質上、「会社が決めるもの」と考えられることが一般的です。
一方で、前回の記事で取り上げた社内公募制度のように従業員が立候補する制度や、異動の希望を聴取する仕組みも存在しています。
では、従業員は異動の決定をどう認識しているのでしょうか。
まずは、異動の主導権が誰にあると感じているかを確認します。

 

Q. 現在所属する会社・組織で発生する異動について、会社主導で決まるか、従業員の希望で決まるかを教えてください。(SA)
<回答者>
有業者1,000人のうち「わからない・異動がない」と回答した人を除く657人

「すべて、もしくは、ほとんど会社主導」が46.9%、「やや会社主導の方が多い」が28.0%です。74.9%の方が“異動の主導権は会社にある”と認識していることがわかります。
従業員希望よりの回答(やや+すべて・ほとんど従業員の希望)は合計で10.5%と、1割程度となりました。これらのことから、異動の主導権は会社が優勢であることがわかります。
さらに企業規模別も示します(図2)

 

企業規模が大きくなるほど会社主導(すべて・ほとんど会社主導+やや会社主導)の割合がやや高くなる傾向で、大規模は79.3%、中規模は76.0%、小規模は67.0%です。
従業員希望(すべて・ほとんど従業員希望+やや従業員希望)の割合は、大規模7.6%、中規模11.3%、小規模13.9%と、企業規模が小さくなるほど高くなっています。
企業規模に関わらず、従業員の7割近く~7割超が、異動の主導権は会社にあると認識していることがわかりました。
 
では、異動の希望を聴取する制度がある場合、従業員の希望はどの程度反映されているのでしょうか。
次にその実態を見ていきます。

異動希望の反映状況

Q.「異動の希望を聴取する制度(自己申告など)」では、どの程度希望が反映されていると感じていますか。(SA)
<回答者>
異動の希望を聴取する制度があると回答した299人

異動希望の聴取制度における異動反映状況は、「反映されないことも、反映されることもある」という回答が51.5%で過半数を占めました。次点で「かなりの程度反映されている」は16.1%、「ほとんど反映されない」は14.0%、「全く反映されない」は7.7%です。一見、評価しづらい結果ですが、「全く反映されない(7.7%)」という回答がごく少数にとどまっている点は見逃せません。反映されないと感じている層(「ほとんど」+「全く」)も全体の21.7%に抑えられており、異動は会社主導でありつつも、制度が一定の機能を果たしていることが伺えます。
また、「反映されないことも、反映されることもある」というどちらとも言い切れない回答が最多であったことは、希望の扱いが企業や状況によって左右されるだけでなく、会社が異動の判断において考慮する要素にも違いがある可能性を示唆しているのではないでしょうか。
 
では会社側はどのような要素を考慮して異動を決定しているのでしょうか。
従業員が「何に」「どの程度考慮されていると感じているか」を見ていきます。

スキル・能力に関する項目は考慮される傾向だが、一方で

所属企業で発生する異動の主導権は誰にあるかの結果(図1)で、以下の選択肢を選んだ623人が回答対象です。
※1
・すべて、もしくは、ほとんど会社主導で決まる
・やや会社主導の方が多い
・会社主導と従業員の希望が半々くらい
・やや従業員の希望が多い
 
その623人に対し、以下12項目の考慮度合いを尋ねました。
個人の力:「スキル・能力」
組織内キャリア:「勤続年数」「異動歴」「滞留年数」
本人のキャリア:「志向や希望」
ライフ事情:「育児」「介護」「婚姻」「住居」
属性:「年齢」「性別」

 

Q. 会社主導の異動がある際に、以下の項目が考慮されている実感はありますか。(SA)
<回答者>
図1で※1の選択肢を選んだ623人

最も考慮されている(かなり+やや)実感が多いのは「スキル・能力(56.0%)」でした。半数以上が実感しています。そのあと「勤続年数(46.6%)」「異動歴(45.4%)」と続きます。
一方で、最も考慮されている(かなり+やや)実感が少ないのは「住居(33.2%)」で、次点で「婚姻(36.2%)」です。
全体として、従業員の組織における立場や能力は考慮されていると感じている人が多いですが、従業員の生活属性は相対的に少ない結果となりました。

 
企業規模別での傾向を図5_1、図5_2、図5_3に示しました。
 

各企業規模共通して、最も考慮されていると感じている項目は「スキル・能力」でした。
また、上位がスキル・能力、勤続年数、異動歴等、下位が住居や婚姻状況となっており、各企業規模において基本的な構造は共通していることが伺えます。
より詳細にみていくと、以下のような傾向もみえます。
 

● 小規模企業では、育児・住居がやや上

-とくに住居に関しては、中・大規模企業と比較して、上位に位置している

● 大規模企業では、本人のキャリア志向・希望や異動歴といったキャリア関連の項目がやや上

 
異動が会社主導と認識している点も踏まえると、こんな見方もできます。
最も考慮の実感が高かったのが「スキル・能力」であることは、前向きに捉えられる一方で、その背景には二つの構造的な理由があるのかもしれません。
 
一つ目は「説明力の差」です。
スキル・能力は、異動の判断理由として非常に説明がつきやすく、社内の納得も得やすい客観的な根拠として機能します。「この専門スキルがあるから適任だ」という理由は、業務上の論理として周囲にも理解されやすいでしょう。一方、「本人のライフ事情」や「将来のキャリア希望」は、組織運営を優先する場面ではスキルや能力ほど決定的な判断理由になりにくい性質があります。従業員側からすると、スキルへの考慮から異動が発生していると感じつつも、その説明が十分になされなければ、「なぜこの異動なのか」という納得感は得にくく、結果として「会社主導だ」という認識につながってしまうのかもしれません。
 
二つ目は「情報把握の差」です。
スキル・能力は会社が把握できている確実なデータである一方、ライフ事情はそうとは言い切れません。
従業員がキャリアへの影響を懸念してあえて詳しく伝えていないケースや、会社側がプライバシーに配慮して深く踏み込めないケースがあると、結果として会社は手元にある確実なデータをもとに判断を下さざるを得ない状況にあるとも言えます。
つまり「会社主導だ」と感じる背景には、会社がライフ事情を軽視しているのではなく、「説明できる根拠と把握できる情報」の両方において、スキル・能力以外の要素が機能しにくい構造があるのかもしれません。

本記事のまとめ

今回の調査結果より、企業規模を問わず7割以上の従業員が「異動の主導権は“会社”にある」と実感していることが明らかになりました。しかしながら、希望聴取制度がある場合、希望が「全く反映されていない」とする回答は1割に満たず、会社主導の中でも制度は一定の機能を果たしていると言えます。
従業員が異動において考慮されていると感じる要素は、「スキル・能力」が56.0%と最多であり、次いで勤続年数などの「組織内キャリア」が続きました。一方「住居」や「婚姻」といったライフ事情への配慮実感は低い傾向にあります。
このように、会社主導の異動でありながら、スキルや能力が重視される背景には、それらが「異動の理由を説明しやすい、共通の物差し」になっている実態があるのかもしれません。
従業員への配慮がないわけではないものの、組織運営の視点では、限られた人材を最適配置する際、周囲の納得感を得るための最も客観的な根拠として「スキル・能力」という指標が重宝されているのではないでしょうか。
 
次回は、異動の経験有無による、異動の考え方の違いについてご紹介予定です。

 

【インターネットサーベイ調査概要】

<実施詳細>

  • 配信:2025/3/24
  • サンプル回収数:1,000サンプル
  • 配信・回収条件
    年齢:20歳以上66歳未満
    性別:男女
    配信地域:全国
    対象条件:有業者(自由業を除く)

 

<設問と回答選択肢(今回調査)>
:現在所属する会社・組織で発生する異動について、会社主導で決まるか、従業員の希望で決まるかを教えてください。(SA)
選択肢:すべて、もしくは、ほとんど会社主導で決まる/やや会社主導の方が多い/会社主導と従業員の希望が半々くらい/やや従業員の希望が多い/すべて、もしくは、ほとんど従業員の希望で決まる/わからない・異動がない
 
:「異動の希望を聴取する制度(自己申告など)」では、どの程度希望が反映されていると感じていますか。(SA)
選択肢:全く反映されていない/ほとんど反映されない/反映されないこともあるが、反映されることもある/かなりの程度反映されている/制度はあるが、自分は利用したことがないのでわからない
 
:会社主導の異動がある際に、以下の項目が考慮されている実感はありますか。(MTX-SA)
表頭(選択肢):まったく考慮されていない/あまり考慮されていない/やや考慮されている/かなり考慮されている/わからない
表側:同じ役職や等級に留まっている年数/年齢/性別/勤続年数/自身がもつスキルや能力/この会社・組織での過去の異動歴/前職までの職歴/自身のキャリア志向やキャリア上の希望/婚姻状況/育児の状況(子供の人数・有無や子供の年齢など)/介護の状況(親の介護の有無など)/住居の状況(持ち家かなど)
 

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