カオナビHRテクノロジー総研調査レポートREPORT
定期異動や社内公募制度はどこまで普及している?異動・配置制度の実態調査①

サーベイの背景
「異動」は従業員のキャリアにとって大きな転換点となりえます。さらに転居を伴う異動になると、自身の生活面にも影響がでることも想像できます。
2023年9月に公開した「定期異動・異動希望の聴取制度の実際は?~異動とキャリア選択の実態調査~」では制度の実施状況や異動経験の有無といった実態をご紹介しましたが、今回はそれらに加えて異動がどのように捉えられているかも見ていきます。
第一回である本記事では、まずは異動・配置制度の実施状況をご紹介いたします。
サーベイの概要
今回は以下の要領にてインターネットを用いたサーベイを実施致しました
- サーベイ対象:20歳以上66歳未満の自由業を除く有業者1,000名
- サーベイ期間:2025年3月24日(月)~2025年3月26日(水)
- サーベイ内容:Web上で異動についての質問項目に、選択・記述式で回答
- 結果の集計・分析:回答結果を集計し、差異や傾向を抽出(回答の構成比は小数第2位を四捨五入しているため、合計は必ずしも100%にはなりません。そのため、グラフ上に表示される構成比での計算結果は、実際の計算結果とずれが生じる場合があります)
異動・配置に関する制度の実施状況(全体)
回答者:1,000人
有業者1,000人に異動・配置制度の実施状況をたずねました。
最も多いのは「異動の希望を聴取する制度(29.9%)」で、次いで「定期異動・ゼネラルローテーション(23.8%)」「社内公募制度(18.6%)」と続きます。一方で「フリーエージェント制度(9.5%)」や「越境学習に関する制度(8.5%)」は1割に満たず少ない結果となりました。最も多い制度でも3割未満となっており、異動・配置に関する制度の普及は限定的であると言えます。
また、各制度に共通して、「知らない・わからない」の回答が最も多く、全体の約3~4割を占めている状況です。制度自体を認知していないという層が一定存在することから、従業員への周知が不十分であることが示唆されます。
異動・配置に関する制度の実施状況(企業規模別)
企業規模別の結果を図2_1、図2_2、図2_3に示しました。
すべての制度において「大規模(1,000名以上)>中規模(100~999名)>小規模(99名以下)」の順で実施率が高くなっています。特に「異動の希望を聴取する制度」では大規模(50.6%)と小規模(10.8%)で約5倍の開きがあります。
企業規模別による違いには、複数の要因が影響していると考えられます。
企業規模が大きくなるほど拠点数やポストが多様化し、従業員の異動ニーズも複雑化すると想定されます。
こうした多様なニーズを公平かつ効率的に管理するためには、制度として明文化し運用する必要性が高まると考えられます。また、企業規模が大きいほど制度設計・運用に充てられる人事リソースが確保されやすい点も、実施率の差に影響している可能性があります。さらに、定期異動を通じた人材配置は、取引先との癒着や不正を防止するリスク管理の観点からも重視されていると考えられます。
以上が、異動・配置に関する各種制度の実施状況です。
次は、実施率で第2位の「定期異動・ゼネラルローテーション」について、掘り下げます。
※第1位の「異動の希望を聴取する制度」は次回ご紹介します。
定期異動・ゼネラルローテーションが実施されていると回答した人のうち、6割超が「転居に伴う異動がある」と回答
回答者:定期異動・ゼネラルローテーションを実施していると回答した238人
「定期異動・ゼネラルローテーション」において、全体の6割超が「転居を伴う異動」があると回答しました。
大規模>中規模>小規模の順で、転居を伴う異動の割合が高くなっていることがわかり、特に大規模企業では7割を超えています。企業規模が大きくなるほど拠点数が多くなることが考えられ、それに比例して転居を伴う異動の割合が高くなっていると考えます。
ここまでで転居を伴う異動がどのくらいあるかがわかりました。
しかし、転居を伴う異動は住居や家族の生活環境など、従業員の私生活に大きな影響を及ぼします。
では、異動発令前の意向確認や拒否権について、企業ではどのような対応がなされているのでしょうか。
転居を伴う異動の有無による、意向確認および拒否権の存在
図4に、転居を伴う異動有無別で(グラフ内では“転勤”と省略)、異動発令前の意向確認および拒否権があるかどうかを示しました。
・異動発令前の意向確認
・異動を拒否できる権利(正当な理由あり)
・異動を拒否できる権利(理由問わず)
<回答者>
転勤なし層:転居を伴う異動がないと回答した59人
転勤あり層:転居を伴う異動があると回答した152人
転居を伴う異動の有無により、異動に関する意向確認・拒否権の認められる程度に違いが見られました。
まず、転居を伴う異動がない層では「発令前に意向確認がある」は4割にとどまり、一方、転居を伴う異動がある層では約7割が「意向確認がある」と回答しています。「異動を拒否できる権利」についても同様の傾向が見られ、転居を伴う異動がある層のほうが、拒否権がある割合が高いです。
また「正当な理由がある場合」と「理由を問わない場合」の差を見ると、転居を伴う異動がない層では差は3.4ptにとどまりましたが、転居を伴う異動がある層では18.4ptと、大きな差が見られました。
生活の変化が避けられない転居を伴う異動については、企業側も慎重に対応していることがうかがえます。
現に約7割弱が発令前の意向確認や正当な理由による拒否が可能と感じています。しかし裏を返せば、2割程度はそうした配慮が無いと感じており、理由を問わず拒否できると感じている人は4割程度に留まっています。企業は生活への影響を踏まえ一定の配慮を行っているものの、最終的な決定権は組織側に留保されている構造が読み取れます。
転居を伴わない異動では、この傾向はより顕著であり、異動の決定プロセスは比較的、組織主導で運用されている可能性が示唆されます。
本記事のまとめ
今回の調査では、異動・配置に関する制度の実態が明らかになりました。
なじみのある「異動希望の聴取制度」や「定期異動」であっても、その実施率は3割弱にとどまっています。企業規模による実施率の差も顕著であり、「異動希望の聴取制度」では、大規模企業(50.6%)と小規模企業(10.8%)の間で約5倍もの開きが見られました 。また、定期異動においては、全体の6割超が「転居を伴う異動」があると回答しています。大規模企業ほどその割合は高く、7割を超えています。
こうした「生活拠点が変わる」という大きな変化に対し、転居を伴う異動がある層では、約7割弱が「発令前の意向確認がある」と認識しているものの、どのような理由があっても異動を拒否できる権利は4割ほどとなりました。
転居の可能性をあらかじめ認識していたとしても、それが「前触れもなく」下されることは、従業員にとって大きな不安要素となりえます。従業員のキャリア形成や納得感の面でも、転居の有無に関わらず、コミュニケーションのあり方も含めて検討していくことも重要だと考えます。
次回は「異動希望の聴取制度」の希望反映具合や異動の主導権が誰にあるか、について紹介予定です。
【インターネットサーベイ調査概要】
<実施詳細>
- 配信:2025/3/24
- サンプル回収数:1,000サンプル
- 配信・回収条件
年齢:20歳以上66歳未満
性別:男女
配信地域:全国
対象条件:有業者(自由業を除く)
<設問と回答選択肢(今回調査)>
問:あなたの所属する会社・組織の異動・配置に関連する制度の実施状況について伺います。(MTX-SA)
表頭(選択肢):実施している(一部実施を含む)/実施していない/知らない・わからない
表側:定期異動・ゼネラルローテーション/異動の希望を聴取する制度(自己申告など)/社内公募制度(空きポジションに対し社内で募集をかけ、社員が応募する制度)/フリーエージェント制度(社員が希望するポジションに売込をする、異動希望先を指定する、社内スカウト制度などを含む)/専門職人材も管理職と同等の処遇が受けられるコースの設置/地域限定正社員制度/社内副業・兼業/事業部や部署横断のテーマ別プロジェクト/越境学習に関する制度(グループ会社ではなく、完全な他社・他組織で一定期間働く制度
問:「定期異動・ゼネラルローテーション」について、以下の有無を教えてください。(MTX-SA)
表頭(選択肢):ある(一部あるを含む)/ない/知らない・わからない
表側:異動対象者に発令前に意向を確認する機会/異動対象者本人が、どんな理由であっても異動を拒否できる権利/異動対象者本人が、正当な理由があれば異動を拒否できる権利/転居を伴う異動
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