カオナビHRテクノロジー総研調査レポートREPORT
リモートワーク実施率は17.0%で定着か ~2024年3月 リモートワーク実態調査~
サーベイの背景
新型コロナウイルスの流行を受けて、テレワーク、在宅勤務、リモートワーク等の「出社をしない」働き方(以降、すべての働き方を含めて「リモートワーク」とします)を始めた方も多いのではないでしょうか。カオナビHRテクノロジー総研では、コロナ禍で初めての緊急事態宣言下でのリモートワーク実施率を2020年5月に計測してから、継続的に調査を実施しており、この度2024年3月にも調査を実施しました。
2024年3月は新型コロナウイルスの患者数は減少局面にありました。首都圏でまん延防止等重点措置等の発令が最後にあったのは、2022年3月までであり、調査を行った2024年3月はコロナの影響が限りなくゼロに近い状態と言えます。
過去のコロナの影響が色濃くあった時点でのリモートワーク実態調査の結果とも比較しながら、リモートワークの今を考察していきます。
サーベイの概要
今回は以下の要領にてインターネットを用いたサーベイを実施致しました
- サーベイ対象:20歳以上60歳未満の自由業を除く有業者14,842名
- サーベイ期間:2024年3月18日(月)~2024年3月25日(月)
- サーベイ内容:Web上でリモートワークについての質問項目に、選択・記述式で回答
- 結果の集計・分析:回答結果を集計し、差異や傾向を抽出(回答の構成比は小数第2位を四捨五入しているため、合計は必ずしも100%にはなりません。そのため、グラフ上に表示される構成比での計算結果は、実際の計算結果とずれが生じる場合があります)
比較対象となる前回までの調査
- 2021年1月調査:緊急事態宣言発令の影響は? ~2021年1月 リモートワーク実態調査<前編>および<後編>~
- 2022年2月調査:まん延防止等重点措置の影響は? ~2022年2月 リモートワーク実態調査<前編>および<後編>~
- 2022年12月:実施率2割を切り、リモートワーク離れが加速中。そんな中、実施率が増加したのは…?~2022年12月 リモートワーク実態調査~
調査結果① 2024年3月のリモートワーク実施率は全体で17.0%
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Q.直近1ヵ月の就業場所への出社状況について教えてください(以降の図も同様)
本レポート内では「毎日リモートワーク(=勤務時間の90%以上がリモートワーク)」もしくは「出社とリモートワークを併用している」に該当する人、つまり一部でもリモートワークをしている人はすべて含めて「リモートワークを実施している」とみなし、「リモートワーク実施率」に含めます。全体では「毎日リモートワーク」が5.4%、「出社とリモートワークを併用」が11.6%となり、合わせて17.0%のリモートワーク実施率となりました。
調査結果② 前回2022年12月の調査からほぼ変動ないが、過去最低のリモートワーク実施率と過去最多の「毎日出社」率
2020年5月以降のリモートワーク実施率の推移のグラフが図2です。リモートワーク実施率の計測時期について、以下の通り補足します。
- 2020年5月:コロナ禍で初めての緊急事態宣言が全国的に発令
- 2020年8月および12月:特に発令等はなし
- 2021年1月:11の都府県で緊急事態宣言が発令
- 2022年2月:18の都道府県でまん延防止等重点措置が発令
- 2022年12月(前回調査時)および2024年3月(今回調査時):特に発令等はなし
今回2024年3月のリモートワーク実施率は17.0%となり、過去最低となりました。リモートワーク実施率は「毎日リモートワーク」と「出社とリモートワークの併用」の割合の合計ですが、「毎日リモートワーク」は5.4%、「出社とリモートワークの併用」は11.6%と、どちらも過去最低です。一方で「毎日出社」は79.8%と過去最多となりました。前回2022年12月の調査から変動が非常に小幅で、今回のリモートワーク実施率は、「リモートワーク定着率」と言っても差し支えないかもしれません。
調査結果③ 勤務地域別は引き続き「首都圏(=一都三県)」のリモートワーク実施率が27.1%と高いが、首都圏含めほとんどの地域で微減
勤務地域別の傾向を見てみます。首都圏(=一都三県)のリモートワーク実施率が突出しており、27.1%となっています。全体のリモートワーク実施率の17.0%を超えているのは、首都圏のみとなっており、次点の近畿エリアでは14.7%となっています。首都圏がリモートワーク実施率1位なのと、近畿エリアが2位なのは、これまでの調査でも毎回同様の傾向です。
首都圏のリモートワーク実施率は他地域に比べ高いのですが、前回調査から3.2pt下がっています。同様に中部地域も3.0pt下がっており、東北・北海道を除いたすべての地域でリモートワーク実施率は微減の傾向を示しました。東北・北海道は、1.2pt上昇しています。
調査結果④ 会社規模別では「5,000人以上」の会社のリモートワーク実施率が26.8%と最多
会社規模別では、リモートワーク実施率の最多が「5,000人以上」の26.8%となり、次点が「3,000~4,999人」の24.3%となりました。前回2022年12月の調査では、会社規模別の最多は「3,000~4,999人」の31.6%、次点が「5,000人以上」の28.6%であり、どちらの区分もリモートワーク実施率は今回減少しているのですが、「5,000人以上」でマイナス1.8ptである一方、「3,000~4,999人」ではマイナス7.2ptと減少幅が大きくなっています。
調査結果⑤ 職種別ではリモートワーク実施率の上位は変わらずオフィスワーカー3職種。ただし低下傾向
過去の調査でもリモートワーク実施率の上位職種3つは「事務系管理職」「事務職・技術系事務職」「営業職」のオフィスワーカー3職種でしたが、今回も同様の結果となりました。ただし前回2022年12月の調査から比較すると、3職種ともにリモートワーク実施率は低下しており、「事務系管理職」で30.2%(前回からマイナス4.5pt)、「事務職・技術系事務職」で24.2%(前回からマイナス3.3pt)、「営業職」で21.1%(前回からマイナス2.5pt)となっています。
調査結果⑥ 業種別では、トップは変わらず「IT・インターネット」で55.8%と顕著に高いが、こちらも低下傾向
過去の調査から一貫して「IT・インターネット」のリモートワーク実施率は高く、55.8%となりました。次点の「マスコミ・広告」の28.2%や「通信・インフラ」の28.1%とも、かなり差が開いています。リモートワーク実施率が高いこれらの業種も、前回2022年12月の調査から低下しており、「IT・インターネット」はマイナス3.5pt、「マスコミ・広告」はマイナス4.6pt、「通信・インフラ」はマイナス4.9ptとなっています。また全業種中、前回調査からの減少幅が大きかったのはメーカーで、マイナス5.1ptで19.5%となりました。
今回の調査結果のまとめ
今回調査で明らかになった調査結果は、以下の通りです。
- 調査結果① 2024年3月のリモートワーク実施率は全体で17.0%
- 調査結果② 前回2022年12月の調査からほぼ変動ないが、過去最低のリモートワーク実施率と過去最多の「毎日出社」率
- 調査結果③ 勤務地域別は引き続き「首都圏(=一都三県)」のリモートワーク実施率が27.1%と高いが、首都圏含めほとんどの地域で微減
- 調査結果④ 会社規模別では「5,000人以上」の会社のリモートワーク実施率が26.8%と最多
- 調査結果⑤ 職種別ではリモートワーク実施率の上位は変わらずオフィスワーカー3職種。ただし低下傾向
- 調査結果⑥ 業種別では、トップは変わらず「IT・インターネット」で55.8%と顕著に高いが、こちらも低下傾向
日本全体でのリモートワーク実施率は17.0%となり、前回2022年12月の調査時の18.7%から1.7pt低下しました。基本的には過去の調査と同様の傾向が続いており、例えば地域でいえば「首都圏(=一都三県)」、業種でいえば「IT・インターネット」のリモートワーク実施率が顕著に高いことや、基本的には従業員数が多い企業ほどリモートワーク実施率が高いことは、日本の一般的な傾向であると言ってしまってよさそうです。
リモートワーク実施率はほとんどのカテゴリで減少傾向を示しており、前回2022年12月の調査と比較して、例えば会社規模別なら「3,000~4,999人」ではマイナス7.2pt、業種別なら「メーカー」でマイナス5.1ptなど、減少幅が比較的大きいカテゴリも存在しました。また、このリモートワーク実態調査の初回は2020年5月で、その時の「毎日出社」の割合は58.5%でしたが、今回の調査では79.8%です。初回から今回までの期間、緊急事態宣言が発令された2021年1月を除き、「毎日出社」率は一貫して上昇傾向にあり、やはり根底には「出社回帰」の潮流があると言えます。
しかしながら、早ければ2025年4月に施行される改正「育児・介護休業法及び次世代育成支援対策推進法」では、事業主に以下のテレワークに関連した事項を求めます。
- 3歳に満たない子を養育する労働者がテレワークを選択できるように措置を講ずることの努力義務化
- 3歳以上かつ小学校就学前の子を養育する労働者に、柔軟な働き方を実現するため2つ以上の制度を選択して措置する義務化
⇒その選択肢となる制度のうちの1つがテレワーク(週所定労働日数が5日の労働者のケースでは月10日の付与が必要)
これらの施行により、リモートワーク実施率は上昇する可能性があります。ただし対象は「小学校就学前の子を養育する労働者」に限定されており、法律に従う目的だけならば、その対象者のみがリモートワークを選択できるように制度を整えることになるでしょう。同じ職場内でリモートワークが出来る人・出来ない人が分断されるということです。コロナ禍では、同一の職場であれば感染リスクを避けるために一律にリモートワークが出来る、あるいは職場の性質によって一律に出来ない、というのが一般的だったと思われます。この法改正はリモートワークに新たな問題を投げかけることになるかもしれません。
分断への対処に正解はないですが、例えば全員がリモートワークをある程度出来るようにする、これは同時ではなく、時期をずらしながら同程度の日数を全員がリモートワーク出来るようにすると考えてもよいと思います。もしくは、リモートワークが出来る人・出来ない人は存在してしまうことを前提に、出来ない人に対して別の柔軟な働き方の選択肢を設けたり、あるいは「育休取得者がいる職場の全員に手当を出す」というような制度に習い、金銭的に報いる制度を設けたりすることも、有効かもしれません。
リモートワークがすべての人、すべての会社にとってベストな選択肢な訳ではないですが、実施率がもう少し高い社会の方が生きやすいのではないかなと、筆者は個人的には思っています。様々に試行錯誤をしながら、リモートワークがコロナ禍の一過性の現象ではなく、柔軟な働き方の選択肢として根付くことを望んでいます。
【インターネットサーベイ調査概要】
<実施詳細>
- 配信:2024/3/18
- サンプル回収数:14,842サンプル
- 配信・回収条件
年齢:20歳以上60歳未満
性別:男女
配信地域:全国
対象条件:有業者(自由業を除く)
<設問と回答選択肢(今回調査)>
問:直近1ヵ月の就業場所への出社状況について教えてください。
選択肢:基本的に毎日、就業場所に出社して働いている(勤務時間の90%以上が出社で、その他がリモートワーク)/勤務時間の半分以上は就業場所に出社し、それ以外は出社せずにリモートワークで働いている(勤務時間の50~89%程度が出社で、その他がリモートワーク)/勤務時間の半分以上は出社せずにリモートワークで働き、それ以外は就業場所に出社している(勤務時間の10~49%程度が出社で、その他がリモートワーク)/基本的に毎日、リモートワークで働いている(勤務時間の10%未満が出社で、その他がリモートワーク)/部分的に休業もしくは休暇を取りながら、勤務の際は就業場所に出社している/部分的に休業もしくは休暇を取りながら、それ以外はリモートワークで働いている/部分的に休業もしくは休暇を取りながら、就業場所への出社とリモートワークを併用している/完全に休業している/その他(自由記述)
<結果の集計における備考>
本レポート内の「出社とリモートワークを併用(している)」いう表現は、上記の選択肢のうち
勤務時間の半分以上は就業場所に出社し、それ以外は出社せずにリモートワークで働いている(勤務時間の50~89%程度が出社で、その他がリモートワーク)/勤務時間の半分以上は出社せずにリモートワークで働き、それ以外は就業場所に出社している(勤務時間の10~49%程度が出社で、その他がリモートワーク)/部分的に休業もしくは休暇を取りながら、それ以外はリモートワークで働いている/部分的に休業もしくは休暇を取りながら、就業場所への出社とリモートワークを併用している が含まれる。
また「毎日出社(している)」には、基本的に毎日、就業場所に出社して働いている(勤務時間の90%以上が出社で、その他がリモートワーク)/部分的に休業もしくは休暇を取りながら、それ以外はリモートワークで働いている が含まれ、「毎日リモートワーク」には、基本的に毎日、リモートワークで働いている(勤務時間の10%未満が出社で、その他がリモートワーク)/部分的に休業もしくは休暇を取りながら、それ以外はリモートワークで働いている が含まれている。
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