カオナビHRテクノロジー総研調査レポートREPORT

2023.03.08
調査

実施率2割を切り、リモートワーク離れが加速中。そんな中、実施率が増加したのは…?
~2022年12月 リモートワーク実態調査~

サーベイの背景

新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、テレワーク、在宅勤務、リモートワーク等の「出社をしない」働き方(以降、すべての働き方を含めて「リモートワーク」とします)を始めた方も多いのではないでしょうか。カオナビHRテクノロジー総研では、コロナ禍で初めての緊急事態宣言下でのリモートワーク実施率を2020年5月に計測してから、継続的に調査を実施しており、この度2022年12月にも調査を実施しました。

2023年5月から、新型コロナウイルス感染症の感染症法上の分類を2類相当から5類(季節性インフルエンザ等が含まれる類型)へ移行するということも決まり、未だ脅威ではあるものの、急速に日常が戻りつつあることを感じている方も多いのではないでしょうか。そんな流れの中、本調査の実施期間は2022年12月22日から12月26日で、まん延防止等重点措置や緊急事態宣言の発令は特にない期間でもあるため、これまでの調査結果よりも限りなく「常態」に近いリモートワーク実施状況ではないかと思います。

過去に実施したリモートワーク実態調査の結果とも比較しながら、リモートワークの今を考察していきます。

サーベイの概要

今回は以下の要領にてインターネットを用いたサーベイを実施致しました

  • サーベイ対象:20歳以上60歳未満の自由業を除く有業者15,292名
  • サーベイ期間:2022年12月22日(木)~2022年12月26日(月)
  • サーベイ内容:Web上でリモートワークについての質問項目に、選択・記述式で回答
  • 結果の集計・分析:回答結果を集計し、差異や傾向を抽出(回答の構成比は小数第2位を四捨五入しているため、合計は必ずしも100%にはなりません。そのため、グラフ上に表示される構成比での計算結果は、実際の計算結果とずれが生じる場合があります)

比較対象となる前回までの調査

  • 2021年1月調査:緊急事態宣言発令の影響は? ~2021年1月 リモートワーク実態調査<前編>および<後編>
  • 2022年2月調査:まん延防止等重点措置の影響は? ~2022年2月 リモートワーク実態調査<前編>および<後編>

 

調査結果① 2022年12月のリモートワーク実施率は全体で18.7%

  • Q.直近1ヵ月の就業場所への出社状況について教えてください(以降の図も同様)


本レポート内では「毎日リモートワーク(=勤務時間の90%以上がリモートワーク)」もしくは「出社とリモートワークを併用している」に該当する人、つまり一部でもリモートワークをしている人はすべて含めて「リモートワークを実施している」とみなし、「リモートワーク実施率」に含めます。全体では「毎日リモートワーク」が6.1%、「出社とリモートワークを併用」が12.5%となり、合わせて18.7%のリモートワーク実施率となりました。

調査結果② 「毎日出社」の割合は調査開始以降、最多の78.0%に


※2020年5月は選択肢が異なったため、「週に2~3出社し、その他はリモートワーク」を「出社とリモートワークを併用」、「休業している」を「完全休業」とみなして作成(以降の図も同様)


2020年5月以降のリモートワーク実施率の推移のグラフが図2です。リモートワーク実施率の計測時期について、以下の通り補足します。

  • 2020年5月:コロナ禍で初めての緊急事態宣言が全国的に発令
  • 2020年8月および12月:特に発令等はなし
  • 2021年1月:11の都府県で緊急事態宣言が発令
  • 2022年2月:18の都道府県でまん延防止等重点措置が発令
  • 2022年12月(今回調査):特に発令等はなし

 
今回2022年12月のリモートワーク実施率は18.7%となり、過去最低かつ初めて2割を切りました。リモートワーク実施率は「毎日リモートワーク」と「出社とリモートワークの併用」の割合の合計ですが、「毎日リモートワーク」は6.1%、「出社とリモートワークの併用」は12.5%と、どちらも過去最低です。翻って「毎日出社」は78.0%と過去最多となり、2020年5月の初めての緊急事態宣言発令時には6割を切っていた「毎日出社」の割合も、8割程度に戻ってきたようです。

調査結果③ 勤務地域別は引き続き、「首都圏(=一都三県)」のリモートワーク実施率が30.3%と高い



勤務地域のカッコ内の数値は回答数(以降の図も同様)

勤務地域別の傾向を見てみます。首都圏(=一都三県)のリモートワーク実施率が突出して高く、30.3%となっています。全体のリモートワーク実施率の18.7%を超えているのは、首都圏のみとなっており、次点の近畿エリアでは15.9%となっています。首都圏がリモートワーク実施率1位なのと、近畿エリアが2位なのは、毎回の調査で同様の傾向です。

調査結果④ 会社規模別では、「3,000~4,999人」の会社のリモートワーク実施率が31.6%と最多




会社規模別では、リモートワーク実施率の最多が「3,000~4,999人」の31.6%となり、次点が「5,000人以上」の28.6%となりました。過去のリモートワーク実態調査では「会社規模は大きいほど、リモートワーク実施率が高い」というのが、一貫して継続していた傾向でもありました(「10~49人」と「10人未満」のカテゴリが逆転することはあったのですが)。しかしながら今回、「3,000~4,999人」と「5,000人以上」が初めて逆転しました。ちなみに2022年2月の前回調査では、「5,000人以上」が最多で34.6%、次点が「3,000~4,999人」の30.3%でした。

調査結果⑤ 従業員数「5,000人以上」の大企業のリモートワーク実施率が初めて3割を切る

調査結果⑥ 「3,000~4,999人」の企業のリモートワーク実施率が前回調査から唯一上昇

「5,000人以上」と「3,000~4,999人」のカテゴリが逆転したのは、「5,000人以上」のリモートワーク実施率が下がり、「3,000~4,999人」の実施率が上がったという背景があります。



「5,000人以上」のカテゴリでは、前回2022年2月調査から6.0ポイント下げており、下げ幅の次点は「100~499人」の2.4ポイントであることを考えると、比較的大きくリモートワーク実施率が低下したといえるでしょう。ただし前回は、18都道府県でまん延防止等重点措置が発令されていたため、下げ幅はさておき、低下すること自体は自然なことです。
逆に「3,000~4,999人」のカテゴリは、前回2022年2月調査から1.3ポイント、上昇しました。上げ幅は大きくはないですが、発令等の強制力が働くような環境ではない中で上昇したということは、経営・人事戦略的な観点からリモートワークを実施している企業がこのカテゴリには多いということなのかもしれません。

調査結果⑦ 職種別ではリモートワーク実施率の上位は変わらずオフィスワーカー3職種。ただし低下傾向




過去の調査でもリモートワーク実施率の上位職種3つは「事務系管理職」「事務職・技術系事務職」「営業職」のオフィスワーカー3職種でしたが、今回も同様の結果となりました。ただし前回2022年2月調査から比較すると、3職種ともにリモートワーク実施率は低下しており、「事務系管理職」で34.6%(前回からマイナス2.0ポイント)、「事務職・技術系事務職」で27.5%(前回からマイナス2.1ポイント)、「営業職」で23.6%(前回からマイナス5.0ポイント)となっています。

調査結果⑧ 「営業職」のリモートワーク実施率は当初から大きく低下




「営業職」は、前回2022年2月調査からリモートワーク実施率を5.0ポイント下げていますが、オフィスワーカー3職種で最も実施率が大きく変動している職種です。比較のため「事務職・技術系事務職」のリモートワーク実施率の推移を、「営業職」の推移とともにグラフ化したのが図7です。この図から「営業職」は、“緊急事態宣言発令時”に実施率が大きく高まることが、まず分かります。さらに11都府県で緊急事態宣言が出ていた2021年1月(45.5%)から今回2022年12月(23.6%)では、21.9ポイントもリモートワーク実施率が低下しており、これにより「事務職・技術系事務職」の方が「営業職」よりもリモートワーク実施率が高くなりました。

調査結果⑨ 業種別では、トップは変わらず「IT・インターネット」で59.3%と顕著に高い




過去の調査から一貫して「IT・インターネット」のリモートワーク実施率は高く、59.3%となりました。次点の「通信・インフラ」の32.9%や「マスコミ・広告」の32.7%とかなり差が開いています。ただし「IT・インターネット」を含むほぼすべての業種で、リモートワーク実施率は前回2022年2月調査 から下がっているのですが、「通信・インフラ」は前回調査から上昇の傾向を示しています。

調査結果⑩ 「通信・インフラ」はリモートワーク実施率が4.3ポイント上昇し、32.9%




「通信・インフラ」は、2022年2月には28.7%のリモートワーク実施率となっていましたが、今回は4.3ポイント上昇して32.9%となりました。微増ではありますが、緊急事態宣言やまん延防止等重点措置の発令がない中での上昇なので、「通信・インフラ」の会社やそこで働く人で自発的なリモートワーク利用が比較的多いということは言えそうです。

今回の調査結果のまとめ

今回調査で明らかになった調査結果は、以下の通りです。

  • 調査結果① 2022年12月のリモートワーク実施率は全体で18.7%
  • 調査結果② 「毎日出社」の割合は調査開始以降、最多の78.0%に
  • 調査結果③ 勤務地域別は引き続き、「首都圏(=一都三県)」のリモートワーク実施率が30.3%と高い
  • 調査結果④ 会社規模別では、「3,000~4,999人」の会社のリモートワーク実施率が31.6%と最多
  • 調査結果⑤ 従業員数「5,000人以上」の大企業のリモートワーク実施率が初めて3割を切る
  • 調査結果⑥ 「3,000~4,999人」の企業のリモートワーク実施率が前回調査から唯一上昇
  • 調査結果⑦ 職種別ではリモートワーク実施率の上位は変わらずオフィスワーカー3職種。ただし低下傾向
  • 調査結果⑧ 「営業職」のリモートワーク実施率は当初から大きく低下
  • 調査結果⑨ 業種別では、トップは変わらず「IT・インターネット」で59.3%と顕著に高い
  • 調査結果⑩ 「通信・インフラ」はリモートワーク実施率が4.3ポイント上昇し、32.9%

 

日本全体でのリモートワーク実施率は18.7%となり、前回2022年2月調査時の20.6%から1.9ポイント低下しました。基本的には過去の調査と同様の傾向が続いており、ほとんどのカテゴリで前回調査から低下しましたが、会社規模では「3,000~4,999人」で、業種では「通信・インフラ」で、微増ではあるものの上昇していることも分かりました。新型コロナウイルス感染症の対応としてリモートワークを実施している状況から、徐々に働く人の働きやすさへの配慮やその点を求職者にアピールするため、あるいは成果を出すために、リモートワークを採用している会社も、限られてはいるもののあるということかもしれません。

 
 

【インターネットサーベイ調査概要】

<実施詳細>

  • 配信:2022/12/22
  • サンプル回収数:15,292サンプル
  • 配信・回収条件
    年齢:20歳以上60歳未満
    性別:男女
    配信地域:全国
    対象条件:有業者(自由業を除く)

 
<設問と回答選択肢(今回調査)>
:直近1ヵ月の就業場所への出社状況について教えてください。
選択肢:基本的に毎日、就業場所に出社して働いている(勤務時間の90%以上が出社で、その他がリモートワーク)/勤務時間の半分以上は就業場所に出社し、それ以外は出社せずにリモートワークで働いている(勤務時間の50~89%程度が出社で、その他がリモートワーク)/勤務時間の半分以上は出社せずにリモートワークで働き、それ以外は就業場所に出社している(勤務時間の10~49%程度が出社で、その他がリモートワーク)/基本的に毎日、リモートワークで働いている(勤務時間の10%未満が出社で、その他がリモートワーク)/部分的に休業もしくは休暇を取りながら、勤務の際は就業場所に出社している/部分的に休業もしくは休暇を取りながら、それ以外はリモートワークで働いている/部分的に休業もしくは休暇を取りながら、就業場所への出社とリモートワークを併用している/完全に休業している/その他(自由記述)

 

<結果の集計における備考>
本レポート内の「出社とリモートワークを併用(している)」いう表現は、上記の選択肢のうち
勤務時間の半分以上は就業場所に出社し、それ以外は出社せずにリモートワークで働いている(勤務時間の50~89%程度が出社で、その他がリモートワーク)/勤務時間の半分以上は出社せずにリモートワークで働き、それ以外は就業場所に出社している(勤務時間の10~49%程度が出社で、その他がリモートワーク)/部分的に休業もしくは休暇を取りながら、それ以外はリモートワークで働いている/部分的に休業もしくは休暇を取りながら、就業場所への出社とリモートワークを併用している が含まれる。
また「毎日出社(している)」には、基本的に毎日、就業場所に出社して働いている(勤務時間の90%以上が出社で、その他がリモートワーク)/部分的に休業もしくは休暇を取りながら、それ以外はリモートワークで働いている が含まれ、「毎日リモートワーク」には、基本的に毎日、リモートワークで働いている(勤務時間の10%未満が出社で、その他がリモートワーク)/部分的に休業もしくは休暇を取りながら、それ以外はリモートワークで働いている が含まれている。

 

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